試運転 ~TRIAL RUN~

初心者の拘りと見切りが激しい自己責任による鉄道模型軽加工記録

モハ103-540[ラシ325F] 動力ユニット整備 (モーター軸受部注油施工:駆動騒音低減,段付加速改善)

2018-02-04 21:22:00 | 国鉄/JR103系
薄水。

2社混結のJR103系ラシ325FはKATO製モハ103-540(8号車)に動力ユニットを搭載させている。
5,6号車のグリーンマックス製モハ103-212+モハ102-367は非動力車を種車に竣工しており動力車に指定出来なかった。
そのため所有編成では少数派の動力車位置偏位編成である。


JR103系モハ103-540(ラシ325F:動力車)。

モハ103-540はモハ103-332(総武線仕様非動力車:ツヌ315F)に手持ちの動力ユニットを組込み竣工させた。
当時予備品の現行LOT動力ユニットは手元に無かった。
止むを得ず保管品で唯一残っていたコンデンサー廃止後の旧LOT品を用いている。
そのためカプラー化ポケット式DT33動力台車を履く過渡期の動力ユニットが再用された。


入工中のモハ103-540。

モハ103-540は竣工当初からモーター駆動音が大きかった。
DT33動力台車のロアフレームから覗くギア類には埃の付着が無く過負荷とは思えない。
結果高経年とLOT都合が主因に思え気を払って来なかった。
ところが2017年12月頃から段付加速が生じ始めている。
ラシ325Fは入場名目のベンチレーター統一からサハ103-347の台枠更新にまで手を伸ばした。
これを機にモハ103-540の動力ユニット整備を施す。


無事に撤去出来た中野寄DT33動力台車。

モハ103-540の中野寄DT33動力台車はKATOカプラー化時の横着が災いし台枠との嵌合爪を折損させた。
瞬間接着剤で今日まで誤魔化してきたが剛性に劣る。
そのため動力ユニットの分解はDT33動力台車の取り外しから慎重さが求められた。
嵌合爪折損部は1-3位側でモーターカバーには取扱い注意を示す赤マッキーが挿してある。
先ず1-3位側を台枠に寄せ2-4位側の嵌合を解いた。
次に押し付けた位置を保持したまま台枠の嵌合爪受を避けるように斜め下方向へずらす。
これで無事に中野寄DT33動力台車が取り外せた。


最初に取り外すモーター端子押え部品。

103系用動力ユニットは多くを爪嵌合に頼る旧来の構造を持つ。
久し振りにKATO製103系用動力ユニットの本格整備に着手したが手順は忘れていなかった。
かつてはコンデンサー押えを兼ねていた黒色成形品のモーター端子押えを最初に撤去する。
そしてユニットカバー側面の台枠嵌合爪を外し各々の間に爪楊枝を挿入した。


厄介な箇所にある主嵌合爪。

モーターカバーを強力に固定する嵌合爪はユニバーサルジョイント受が見える台枠裏側のスリット部にある。
焼付塗装を痛める恐れがあるスチールドライバーは使い難い。
強度の低いプラスチックドライバーを遣り繰りし押し出した。
モーターカバーと台枠間への爪楊枝差し込みは押し出しても直ぐに嵌まり込む主嵌合爪対策である。


分解された動力ユニット。

主嵌合爪さえ浮かせられればモーターカバーが撤去できる。
構造は至ってシンプルであり導電板はモーターカバーにしか組み込まれていない。
厚いダイキャストの台枠であるがモーター端子は露出しており駆動試験は容易である。
段付加速の原因を切り分けるため電極をモーター端子に接続した。
ところが電流を上げてもモーターはなかなか回転を始めなかった。
徐々に出力を高めると盛大な騒音を奏でながら突然回り出した。
どうやら段付加速の主因はモーターにあるらしい。


軸受部に注油したモーター。

これまでKATO製モーターへの注油は控えてきた。
しかしこの状態を脱するには手段が限られ注油施工かモーター交換の二択しかなかった。
保管品の103系用動力ユニットはコンデンサー付の旧LOT品しか残っていない。
そこでモハ103-540では思い切ってモーター軸受部への注油に踏み切っている。
ユニクリーンオイルを馴染ませる程度に投入し暫く手動でモーターを回転させ油脂が内部へ行き届くのを待つ。
その後駆動試験を行い症状を確認した。
注油の効果は高かった模様で低電流からスムーズに回転するよう改まった。
加えて騒音も小さくなり無負荷の環境下では症状改善の兆しを感じ取れている。


清掃を終えた導電板。

モーターの復調に手応えを得て整備を先へ進めた。
導電板は余り経年を感じさせない。
ただせっかくの分解機会に至ったため清掃を行った。
酸化の激しい箇所は見られず全てクリーナーを浸した綿棒を当てた後にクロスで拭き上げている。


分解されたDT33動力台車(千葉寄)。

DT33動力台車の清掃は瑕疵の無い千葉寄から開始した。
分解するとギアボックス内部への埃侵入は防げていた。
念のためプラスチック製ギア類は歯ブラシで払ったがクリーナーは使用していない。
一方金属製のスパイラルギアと集電板は経年相当の劣化が進行し輝きを失っていた。
特に集電板のピボット軸受部は埃の様なものが癒着し黒色に見える。


汚れの目立った集電板軸受部。

試しにクリーナーを垂らした後に極細綿棒を用いピボット軸受部を吹き上げた。
すると大半の汚れは除去され真鍮色に戻ってくれた。
残る重要な通電箇所は導電板との接触部である。
ここだけは磨き出しが必要と思われラプロス#6000で集電板断面を研磨した。
この際平面部にもラプロスが当たってしまい輝き度合いが顕著になってしまった。
そのままラプロス#6000で全体を仕上げている。


クリーナーと歯ブラシで清掃したスパイラルギア。

スパイラルギアはクリーナーと歯ブラシを併用した。
清掃後にユニクリーンオイルを1滴だけ添加しDT33動力台車を組み立てた。
その後スパイラルギアの油脂がロアフレームのギア類に行き渡る様スパイラルギア受を回転させた。
千葉寄のDT33動力台車は首尾良く整備を終えた。
問題は中野寄DT33動力台車である。
ロアフレームの取り外しは台枠との嵌合爪直近を押し込まなければならない。
少しずつロアフレームの嵌合爪を緩め慎重に引き抜いた。


修正個所が露骨に残る1-3位側嵌合爪(中野寄)。

嵌合爪の修正はまだ自力修復が慣れていない時期に行っている。
中野寄DT33動力台車の1-3位側嵌合爪は段差がはっきりと判る雑な修繕だった。
しかも瞬間接着剤で固定したため再修正は難しい。
代替台車も存在せず継続使用するしかなかった。
内部の状況は千葉寄DT33動力台車と同程度で留まっていた。
整備清掃はほぼ同等の内容で終えている。
導電も全てラプロス#6000で研磨し千葉寄に揃えた。


真鍮色に戻った集電板。

残る課題は三度の負荷に嵌合爪が耐えられるかだった。
清掃を終えた2枚の集電板で動力車輪を挟み井桁状に組む。
この形状を保ったまま動力台車枠へ組み込まなければならない。
ピボット軸受は深さがある上に台枠との嵌合爪付近のスリット直近台枠を導電板接触部が通る。
角度を誤ると導電板接触部が嵌合爪部を押し出しかねなかった。


DT33動力台車枠に組み込む直前の集電板。

DT33動力台車枠は比較的プラスチック硬度が高く意外に組みこむ力が求められる。
ウレタンシートを台座に用い集電板一式を均等に押し込み嵌合爪部への入力を垂直に保った。
ひとまず最初の関門は通過できた。
第二関門はロアフレームとの一体化である。
ロアフレーム撤去時と同じく少しずつ挿入を図り先に1-3位側を嵌合させた。
2-4位側のロアフレーム嵌合爪は台車中心寄に寄せDT33動力台車枠全体への衝撃を軽減している。


組み立てまで辿り着いた中野寄DT33動力台車。

最後の関門は動力ユニットへの取付となる。
ここで嵌合爪を破損させると全てが台無しになってしまう。
余り採用したくない方式ではあったが1-3位側の嵌合爪受を台枠外側へ大きく湾曲させDT33動力台車を装着した。
綱渡りの作業が連続し神経を使ったもののどうにか動力ユニットの組立を完了させている。


整備を終えた動力ユニット。

なおユニットカバーの装着は台枠の各嵌合爪受に嵌め込むのみで至極容易である。
早速整備を終えた動力ユニットの試験走行を行った。
車体と組合せた後でも共鳴等は生じず静音化が達成された。
段付加速も消え去り快調さを取り戻している。

中野寄DT33動力台車の破損が手を焼かせる全ての原因だった。
モハ103-540に起用している過渡期の動力ユニットは中古製品やジャンク車両でも入手が難しい。
今回は竣工まで持ち込めたがトラクションタイヤ交換時等には耐えられないかもしれない。
一応コンデンサー付旧LOT動力ユニットへの交換で応急対処は可能である。
しかしLOTを更に遡らせるのは気が進まない。
今後ジャンク車両の確保にはモハ103-540と同一LOTの動力ユニット搭載車も含めた方が無難だろう。

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