このカゴは回収しないでください。② memo

この回収所は細い坂道を登り切ったところにある。

もう少し行くと橋があり、その橋を渡って歩いていくと、有名私立女子高やキリスト教会がある。

信号機のついている角に比較的広い邸宅があり、ここは二軒あった邸宅が一軒に建て替えられた。信号機から坂を下っていくと元町商店街だ。

 

この集積所の細い坂を下って行くと、一軒だった場所に三棟、四棟と建て替えられている。この不思議な現象は一体何なのだろうか。

円安とか株高に関係あるのだろうか。不景気なのに消費税は何で上昇していくのだろうか。

 

そんなことを考えていても目の前の

「このカゴは回収しないでください」

と私が表示し、回収されずに済んだカゴの中に、私が消費したものではない缶や瓶がいっぱい入っているではないか。

驚きと悲しみが同時に、そしてその後にふつふつとした怒りが私の心の中で化学変化を起こしているのである。

 

夕方のこの時間にこの状態ということは、環境局員がやってきて私の出した缶や瓶やペッとボトルを回収した後に、わざわざ私のカゴを缶と瓶でいっぱいにした誰かが存在するのである。

しかし私はどうしても私のカゴを回収しなくてはならず、ゴミの分別はしても人として分別のない誰かが入れた缶と瓶をカゴから出さなくてはならなかった。

それをもし事情を知らないご近所さんが見たときに、一体何と思うだろうか。想像力のない分別もないその誰かに呆れがっかりしながらカゴを回収したというわけだ。

 

一見些細な物事の裏に、こんなことが隠されている。

大袈裟だと思うかもしれないが、少し大袈裟に書いているのであるからそう思う方が当然だ。

しかし何も感じない、見ているようで何も見ていない、歩きスマホはもってのほか迷惑であるが、そういう人が後を絶たない。