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こんなことも>アビガンはなぜ「特効薬」の座から滑り落ちたのか

2022年02月27日 00時00分07秒 | 医学と生物学の研究のこと
アビガンはなぜ「特効薬」の座から滑り落ちたの

>アビガンが「劇的に効いた」という症例が一向に集まらない一方で、副作用の催奇形性を念頭に、戦後、最も深刻な薬害をもたらし、映画『典子は、今』でも知られるサリドマイド禍の再来を強く懸念したためだ

正しい価値」は科学に徹頭徹尾、正対する道しかない
安倍政権に翻弄された感のある「アビガン」

 「うたかた」という美しい言葉が日本語にある。『広辞苑』によると、「はかなく消えやすいことのたとえにつかう」とある。

多くは、不老不死が叶わぬ人間の短い命に重ねて使われるが、近代科学の結晶とも言えるクスリにも、実は当てはまる。

夢の特効薬と期待されて登場しながら、予期せぬ副作用などで市場からの退場をたちまち迫られた薬剤は枚挙に暇がない。

今年の春、俄かに人口に膾炙した「アビガン」も、以降の形跡を辿る限り、うたかたのクスリで終わりそうな気配が強まっている。


 「風邪薬ががんに効くかもしれない」既存薬転用への方程式  新型コロナウイルスが引き起こす同ウイルス感染症の拡大が、国内外で一向に止まらない。

特に国内の状況は、社会や経済への影響を最小限にしながら、感染拡大防止の効果を結果として最大化した「日本モデル」の勝利と胸を張ったのも束の間。わずかに都内に残っていた“燃えさし”から、再び全国へ伝播していく展開となっている。 

<突如、蘇った>  

幸いにして、足元の重症化率・死亡率が外国と比べて低く、人々のコロナ禍慣れも加わって、今年2月下旬から5月上旬くらいにかけて、世の中に張りつめていた緊迫感、切迫感のようなものはない。

有効なワクチンや特効薬が依然として存在しないという不安も、本格的な「第2波」に襲われるまでは高まってこないのではないかと思われる。

だが、春先は違った。新型コロナ感染症に効くクスリが闇雲に求められ、その狂乱の中でアビガンが突如、蘇った。 


 蘇ったと綴ったのは他でもない。アビガンはドラッグビジネス的には一度、「終わった」クスリだったからだ。

開発したのは、感染症領域の創薬に伝統的に強かった旧富山化学工業(現、富士フイルム富山化学)と白木公康・富山大学名誉教授。

「T705」の開発コードで、新しいインフルエンザ治療薬を目指して治験が進められた。

時、鳥インフルエンザウイルスH7N9型が猛威を振るい、さらに、代表的なインフルエンザ治療薬であったスイス・ロシュ社製の「タミフル」は耐性ウイルスを出現させやすいという点が医療現場から憂慮されていた。


7・24・2020

  そうしたなか、T705は純国産で、しかも薬理メカニズム的に耐性ウイルスの発生がまず考えられないことから、富山化学並びに同社と資本提携していた富士フイルムホールディングス(HD)の関係者は画期的な新薬になると、大いに期待を寄せていた。しかし、こうした想定の歯車は大きく狂い始める。  

T705の動物実験で確認された「初期胚の致死並びに催奇形性の確認」という副作用への懸念が、治験の最終段階になっても払拭できなかったのだ。

それでも富山化学は2011年に「A型またはB型インフルエンザウイルス感染症」の効能効果で医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認を申請する。

  PMDAでは3年間という異例の審査期間を経た後、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」という効能効果でもってアビガンを承認した。  


同時に留意事項として、国が必要と判断した場合にのみ患者への投与が検討されること、厚生労働大臣の要請がない限り製造販売を行わないこと、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されないよう厳格な流通管理が実施されること、などが富山化学に課せられた。

要は、既存のインフルエンザ治療薬が全て効かなくなった時、国の保管・監視のもと、“最終防衛兵器”という形でのみ使ってよいという位置付けであった。  

インフルエンザが流行する毎冬ごとに国民に多用される“ポスト・タミフル”になれば、という関係者の夢ははかなく破れた。

同時に、アビガンの開発に投じた費用を回収するすべもなくなった富山化学は、富士フイルムHDのTOB(株式公開買い付け)を受け、非上場子会社として生き延びる道しか残されていなかった。  

これらの経緯から、承認後、アビガンはアフリカで流行したエボラ出血熱の治療用に一瞬脚光を浴びた以外は、治療の現場では忘れ去られたクスリになった。

19年には物質特許が切れたが、後発医薬品の製造販売に乗り出すジェネリックメーカーが皆無だったということが、このクスリの製薬業界内部での評価と立ち位置を証明していると言える。 


<首相周辺の前のめり>  

こうした過去を持つアビガンを、いきなり表舞台へと引きずり出したのは、安倍晋三首相と彼を輔弼(ほひつ)する“官邸官僚”だった。

中国で緊急避難的に実施された新型コロナ患者へのアビガンの投与結果が「良好」らしいとの情報が伝わるや否や、2月29日に安倍首相自らが会見で、

「アビガン」「カレトラ」「ベクルリー」の3つのクスリが新型コロナ感染症に対する有力な治療薬の候補だと挙げ、アビガンについては国の備蓄分を使って患者への投与をスタートしたと表明した。 



 そしてこの後、「溺れる者は藁をも掴む」の例えではないが、安倍首相周辺のアビガンに対する前のめり感は増していく。

3月28日の会見で安倍首相は、「すでに症状の改善に効果が出ているとの報告もある」と強調したうえで、「正式承認に向けた治験プロセスを開始する」と踏み込んだ。

4月7日の緊急事態宣言の発令後に開いた会見では、「アビガンの備蓄量を現在の3倍の200万人分まで拡大する」と宣言。

20年度補正予算の中にアビガンの増備として139億円を付けた。さらに、緊急事態宣言の延長を決めた5月4日には、「今月中の承認をめざしたい」とまで言い切った。  



有事とはいえ、クスリの科学的開発プロセスを無視する言動を国のトップが行った背景には、まずは純国産の特効薬を作りたいという保守政治家らしい願望があったようにみえる。

加えて、テレビメディアを中心とする世論の押しがあった。タレントの石田純一さんや脚本家の宮藤官九郎さん、フリーアナウンサーの住吉美紀さんが相次いで、アビガンが効いたという趣旨の体験談を公表。

これをテレビがお茶の間に垂れ流したことから「早くアビガンを承認しろ」「国民全員に配れ」といった“アビガン救世論”が一気に高まり、その風を政権浮揚につなげようとした。



明らかになっていない力が?

 ところが今度は、官邸が描いた想定の歯車が狂い始める。政府部内では、富士フイルム富山化学が3月末から開始した新型コロナ患者を対象とした企業治験と、藤田医科大学が3月上旬からスタートさせた特定臨床研究を文字通り、両にらみでウォッチし、特に藤田医科大の中間解析で「極めて高い有効性が示されれば」(加藤勝信厚生労働相)薬事承認に踏み切ろうとしていた。  


しかし現実は、官邸にはつれなかった。富士フイルム富山化学の企業治験は、偽薬(プラセボ)が投与される可能性がある試験プログラムへの参加を拒む患者が少なくなく、当初から難航。藤田医科大学の特定臨床研究も中間解析の段階で官邸が期待した「極めて高い有効性」は示されなかった。  


政府部内も、一枚岩ではなかった。アビガンの推進に比較的前向きな経済産業省に対し、薬事行政の責任を担う厚生労働省は終始、消極的であった。

アビガンが「劇的に効いた」という症例が一向に集まらない一方で、副作用の催奇形性を念頭に、戦後、最も深刻な薬害をもたらし、映画『典子は、今』でも知られるサリドマイド禍の再来を強く懸念したためだ。  

さらにこの間、自民党の有力支持団体である日本医師会からも異論が出される。

日医の有識者会議が「有事だからエビデンスが不十分でもいいということには断じてならない」と、官邸の動きに釘を刺したうえで、薬事承認にはあくまで「ランダム化比較試験」が必要であり、「『科学』を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれる」と強い言葉で警鐘を鳴らした。  


いずれにせよ、このような想定外の流れを受けた官邸は、アビガンに託そうとした政治的な夢を断念した。6月以降、安倍首相の口からは、血税を投入したにもかかわらず、アビガンという言葉が発せられなくなった。無論、経緯の説明すらされていない。何とも無責任な姿勢だ。  


因みに、新型コロナに対する特効薬づくりという科学的な夢という面でも、藤田医科大が7月10日、特定臨床研究の最終報告において「ウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しませんでした」と結論付けたことで、とりあえず、ピリオドが打たれた。  


現在、富士フイルム富山化学では、新型コロナ患者を対象とした企業治験を海外で別途実施し、アビガンの適応拡大の道をなお探ろうとしている。抗血栓薬「フサン」とアビガンを重症患者に併用投与する国内研究で、9割の患者で症状が軽快したとの報告も出ている。アビガンにもしかしたら、まだ明らかになっていない力が発見されるかも知れない。  


実際、“悪魔のクスリ”とさえ呼ばれたサリドマイドもその後の研究の結果、血管新生阻害作用があることが分かり、08年から国内でも多発性骨髄腫の治療薬として厳格な流通管理のもと販売されている。このように、クスリの世界は奥深い。だからこそ、クスリという知の結晶を毒へとおとしめず、その正しい価値を決めるのは、科学に徹頭徹尾、正対する道しかないということを、関係者は今回、改めて胸に刻むべきだろう。




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健康とはほど遠い」陰性になっても続く倦怠感と嗅覚障害。新型コロナ「後遺症」

2022年02月26日 20時03分36秒 | 医療のこと
健康とはほど遠い」陰性になっても続く倦怠感と嗅覚障害。新型コロナ「後遺症」


7/7/2020


当初よりも性質や症状などの情報が出てきたとはいえ、まだまだ分からないことが多い新型コロナウイルス。大きな疑問の一つが、感染者は陰性となった後、順調に回復しているかだ。

4月上旬に感染し、5月上旬に陰性となった男性(21)は、今も倦怠(けんたい)感や頭痛、手足の湿疹、嗅覚障害などの症状に悩まされているという。
新型コロナの「後遺症」はまだ明確になっていないが、警鐘を鳴らす学会や医師も出てきている。男性と識者に聞いた。


「退院してもずっとだるくて大学も休学している。陰性になっても症状が続く人がいることを知ってほしい」。男性は千葉県の大学に通うため、同県内で1人暮らししていたが、現在は生活に介助が必要と医師に言われ、実家で生活している。

男性は4月1日に発症。38度近く発熱し、2日には38.5度まで上がり、3日には40度を超えた。4日、約8時間保健所に電話をかけ続けやっとつながったが、この日が土曜日だったため月曜に連絡してほしいと言われたという。

下痢や嘔吐(おうと)、血痰(けったん)症状も加わったため、6日に近くの内科を受診。PCR検査を受けることになり、翌日に陽性との連絡を受けた。
 
保健所からは「3~4日以内に入院できる」と言われたが、結局入院できたのは、連絡から22日後の29日だったという。男性は体調が悪く食事ができず、主にゼリーや水分だけを取って過ごしたという。
12日ごろには少し食事ができるようになり、ギョーザを食べたところ、「まるで粘土を食べているかのよう」な感覚で、味覚、嗅覚障害に気づいた。
 
治るのか分からない不安もあり、29日、いつになったら入院できるのかと保健所に電話したところ、その日の夜に入院することが決まった。
CT(コンピューター断層撮影)による検査を受け、医師には肺炎と診断された。熱は38度ほどあった。入院中には手足に湿疹も出たという。
5月7、8日のPCR検査で2回陰性判定となったため、同9日には退院した。しかし、退院してからも苦痛が続いた。
 
退院日にも37.5度の熱があったが、退院後も同じぐらいの発熱がずっと続いたという。倦怠感や頭痛、嗅覚障害も続き、買い物に出かけられず、3日連続食事できない時もあったという。

38度台に発熱する日もあり、14日には病院を再受診。血液検査で脱水症状を指摘され、再入院することになった。医師には「ウイルス性なので長引くことがある」と言われたという。


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夕刻のお参り、2/11に

2022年02月26日 17時01分08秒 | いろいろな出来事
夕刻のお参り、建国記念日に

寒さも、緩みますね🎵
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ビデオ会議の不安を力技で解決! 段ボール製の「背負える背景」が誕生、在宅ワークの近未来感が一瞬で0に

2022年02月26日 09時00分32秒 | インターネットにまつわるはなし

ビデオ会議の不安を力技で解決! 段ボール製の「背負える背景」が誕生、

在宅ワークの近未来感が一瞬で0に


4/24/2020

在宅勤務やオンライン飲み会で大活躍中のビデオ会議ソフトですが、背景に自宅の様子が映り込んでしまうのは困りもの。

そんな問題に力技すぎるソリューションを提供する「背負える段ボール背景」が開発されました。



【画像】通話相手からの見え方

 作者は段ボール工作を得意とするケンポン(@kenpon_g)さん。ビデオ会議ソフトに映像処理機能が搭載されていることはもちろん知った上で、あくまでネタとして「段ボール背景」を制作しました。

 とはいえ実用性は十分。段ボールですから軽さと耐久性に優れ、さらに不使用時はコンパクトに畳んで保管可能です。肩回りは「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」みたいになってしまいますが……。

 カオスな使用風景がTwitterに投稿されると、「明るい気分になれない昨今だけど、見た瞬間笑ってしまいました」「ぜひデコりたいですね」と話題に。あまりの反響を受け、実際に販売を開始しました。

  価格は送料・税込みで1480円。「本来の使い方をするも良し、本来の使い方をして笑われるも良し。

椅子の背もたれに固定できるよう改良するのもあなた次第です」とのこと。なおケンポンさんのショップページでは、他にもペット用ハウスやテーブルなど、段ボールを使用したさまざまな実用品が販売されています。     
ねとらぼ


4/24tue/2020



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東京五輪、世論の8割が開催中止を求めるなか「無観客」開催を視野に。日本と中国だけの“運動会”になる可能性も

2022年02月26日 03時30分25秒 | 社会のことなど
>コロナ禍は、“平和の祭典”の皮をかぶって金儲けをたくらむ五輪というものの本質をまざまざと露呈させました。東京五輪中止にとどまらず、五輪の廃止を含めて見直す時期に来ていると思います


 世論の8割が開催中止を求めるなか、すでに組織委員会は「無観客」での開催を視野に入れ始めた。しかし、206の国と地域の選手が全員、来日するという保証はどこにもない。むしろ、選手が来られない可能性のほうが高いのだ! 各国の動向を追った


4~5割の出場枠が未定。海外から選手団が来ない可能性も

2/19/2022

 コロナ禍での東京五輪開催に国民の8割が「反対」の声を上げるなか、組織委員会・森喜朗前会長による女性蔑視発言で一気に堤防が決壊した。 

 ロンブー淳や福島県の原発事故被災男性など聖火ランナーの辞退が相次ぎ、大会ボランティアも500人を超える大量辞退者を出した。森発言が呼び水となり、世論はより強く開催中止へ傾いた。 

 一方で、延期された東京五輪はすでに「無観客」が既定路線になりつつある。IOCバッハ会長が1月に「無観客という選択肢もある」と言及し、組織委員会も無観客のシミュレーションに入った。

  しかし、ここにきてもっと重大な問題が表面化しつつある。海外から選手団が来ない可能性があるのだ。日本国内においてさえ、内定選手は20%にとどまっており400人以上の選手が未選出の状態なのだ(1月時点/NHK調べ)。スポーツ紙の五輪担当記者は言う。 

「代表選手を選出する国際大会が軒並み中止になっています。宮崎県で行われるワールドトライアスロンの中止が決まったばかりですが、大きいところでは韓国での世界卓球選手権、中国でのアジア陸上選手権も中止になりました。ロンドンでのボクシング欧州予選の中止など、大陸別の予選も軒並み中止となっている状況です」 

 東京五輪には約1万1000人のアスリートが参加する予定だが、4~5割の出場枠がまだ決まっていない。元ラグビー日本代表で神戸親和女子大学教授の平尾剛氏は、相次ぐ世界大会の中止についてこう述べる。

 「これから、新たに選考のための大会を行うことはほぼ不可能です。そうなると、これまでの成績をもとに各競技の協会が選手を選考することになります。しかし、これでは五輪の理念である『フェアネス』が担保できません」



ワクチン格差」が五輪にも

 さらにワクチン問題もある。東京五輪への選手派遣を目指し、ハンガリーやセルビア、イスラエルなど優先的にワクチン接種を行っている国もある。 

 しかし、参加国の7割が途上国・新興国という状況を考えれば、国際社会で問題になっている「ワクチン格差」が五輪にも当てはまる。 

「選手へのワクチン接種に関しては、先進国で奇妙な現象が起きています。独仏伊などでは高齢者や医療従事者を差し置いて選手に優先的に打つことが国民の反発を呼ぶとして、選手自身が辞退しています。先進国の選手はワクチンがあるのに接種せず、途上国の選手はワクチン不足で打てないという状態なのです」(前出の記者) 

 世界大会の相次ぐ中止やワクチン問題など、各国の状況を文末にまとめたが、無観客に加えて「無選手」となれば開催は不可能だろう。

来日の予定が決まらずホストタウンも大困惑

 一方、海外から選手が来るのか否かはっきりしないなか、気をもんでいるのがホストタウンだ。

 「来るという前提で調整しているが、いつ来るか未定です」(リトアニアの選手を受け入れる神奈川県平塚市・オリンピック・パラリンピック推進課) 「具体的な話は何もありません」(アメリカ、ボツワナ、ペルーの選手を受け入れる千葉県佐倉市・地域創生課) 

 ルワンダの選手を受け入れる岩手県八幡市役所の担当者は言う。 

「7月上旬からの直前合宿受け入れが決まっていますが、ルワンダは感染拡大でロックダウンになってしまった。出発前にワクチン接種をしてもらえれば多少、リスクが回避できると思いますがなかなか難しい。岩手も都会ではないので、選手がPCR検査をできる万全の体制をつくるのは難しい」 

 各地のホストタウンは、受け入れ準備・調整に加え、地元住民からは感染リスクを警戒する声もあり、対応に苦慮しているようだ。

  果たして選手は日本に来るのか。東京五輪組織委員会に各国選手の来日予定について訪ねたが、期日までに回答はなかった。



バイデン大統領はIOCの開催強行姿勢に懐疑的

 今後、選手や参加国の減少にますます拍車がかかるかもしれない。北京五輪(’08年)の取材経験のあるスポーツライターは言う。

 「五輪開催の7月、南半球ではちょうど冬です。昨年も7~9月に南半球のブラジルやオーストラリアで感染が拡大したので、今年も同じ状況になるでしょう。そうなると、南半球の選手は一層、来日しにくくなる。 

 また最大規模の選手団を派遣するアメリカの動向も注視しないといけません。先日、バイデン大統領も『開催は科学に基づくべき』とIOCの開催強行姿勢に釘を刺しました」 

 果たしてアメリカの選手団派遣中止はあり得るのか。アメリカ政治に詳しい明治大学教授・海野素央氏は言う。

 「バイデン氏は、『オリンピックを政治主導で開催してはいけない』という考えの持ち主で、政治家の都合でやるべきではなく、科学的に安全な基準をクリアすることが大切と考えています。だから、安全基準がクリアされなければ、選手団派遣は難しいかもしれません。 

 ビジネス優先のトランプ氏だったら、放映権を持つ米NBCのことを考えて五輪開催を積極的に後押しした可能性がありますが、バイデン氏はビジネスよりも国民の安全を第一に考えている共感・協調の大統領です。一方で、先日の発言では含みをもたせており、同盟国である日本の立場も気遣っているようにも見えます」


失敗してもいいから開催してほしい中国

 アメリカが態度を決めかねるなか、反対にやる気満々なのはもう一方の大国・中国だ。中国人ジャーナリストの周来友氏は言う。

 「先日、バッハ会長と習近平国家主席が電話会談をし、’22年の北京冬季五輪の開催について条件が整ったと世界にアピールしました。北京五輪を開催するためには、東京五輪は絶対、中止にしたくない。東京五輪が成功したら、北京へとスムーズに繋がりますし、参加国減少や無観客で禍根を残しても、北京で成功させて『社会主義の勝利』を宣言できます。  

結果はどうなってもいいので開催してほしいというのが本音でしょう。選手団も一人欠けることなく派遣してくると思います。各国の選手がいないなか、東京五輪は日本と中国の選手だけの“運動会”になる可能性もありますよ」 

 前出の平尾氏は最後にこう締めくくる。 「」 

 開会式は5か月後に迫っている。



世界各国で選考会中止&ワクチン問題が!

アメリカ……水泳競技の選考会で参加者が半数以下に アメリカ水泳連盟は、感染拡大により選考会の規模を大幅に縮小すると発表。750人の選手のうち半数以下での選考会になると発表した(『ワシントン・ポスト』1月27日付) 


ドイツ……ドイツの五輪候補の72%がワクチン優先接種に反対 ドイツオリンピックスポーツ連盟の調査で、東京五輪への参加予定676人の選手のうち72%がワクチンの優先接種に反対していることが判明(『inside the games』2月6日付) 

イタリア……アスリートへの優先接種は要求しないとの方針を発表 イタリアオリンピック委員会は、選手に優先接種することを要求しないと表明。「高齢者には20歳のアスリートより先に接種する権利がある」とも(ロイター通信1月31日付) 

フランス……ワクチンを打たない選手の五輪出場は難しいと発言 仏オリンピック委員会の会長は「ワクチン接種を受けていない選手は日本入国後2週間隔離となり、朝晩PCR検査が必要」との見解を示した(AFP通信1月26日付) 

ウガンダ……唯一の競技場が病院になり、選考会が行えない状態 アフリカのウガンダでは国内唯一のナンブールスタジアムがコロナ患者専用の病棟になったため、陸上などの競技の選考ができない状態となっている(『Dairy Monitor』2月2日付) 

イギリス……ボクシングの五輪欧州予選を中止すると発表 IOCのボクシングタスクフォースは、EU各国と英国の往来が規制されていることに鑑み、ロンドンでの東京五輪欧州予選を中止すると発表した(ロイター通信1月30日付)


 ドイツ……フェンシング代表が出場辞退を示唆 五輪に2度出場しているフェンシング・ドイツ代表のM・ハルトゥング選手は、「パンデミックを助長すると感じれば家にとどまる」と辞退を示唆した(時事通信1月12日付)

 ニュージーランド……オリンピック委員会が選手の辞退を容認 ニュージーランドオリンピック委員会は「出場を辞退する選手が出てもやむを得ない」と辞退を容認する考えを示した。同国からは200人の選手が出場予定(共同通信1月27日付) 

<取材・文/慎 虎俊 奥窪優木 児玉ジン>



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