そでに隠したスマホで問題文を撮影し…「共通テスト不正」19歳の女子学生がそこまでして行きたかった大学とは
大学入学共通テスト1日目の1月15日、大阪府寝屋川市の試験会場。約600人の受験生は、誰もが自分の力を信じ、本番に臨んだはずだった。1人の“女子大生”を除いては――。
2/15/2022
【画像】 A子が国立大生に送ったメッセージ
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上着の袖に隠したスマホで問題文を撮影し…
〈今日は11時から世界史のテスト、よろしくお願いします。(中略)可能なかぎり早く正しく解答を導きだすという形で願いします!〉
当日朝、現役東大生の1人は、高校2年の「中野天音」を名乗る人物から、通話アプリ「Skype」のチャット機能でこんなメッセージを受け取った。その正体が“仮面浪人中”の女子大生A子(19)であるとは、まだ知る由もなかった。
A子から問題文の画像が送信されてきたのは午前11時過ぎのこと。共通テスト最初の科目「地理歴史・公民」試験の真っ最中だ。
「A子は上着の袖に隠したスマホで撮影した『世界史B』の問題文の画像約30枚を、複数の大学生に送信。うち2人が時間内に解答を返していた」(捜査関係者)
再受験を誓うも成績が伸びず、焦った末に…
不正行為は昨年12月から計画されていた。A子は17歳の高2女子を装って「家庭教師紹介サイト」に登録。東大生らに次のような設定でアプローチした。 〈家庭教師を探しています。指導をお願いする前に、テストで問題を解いていただき、実力を試したい〉
その日時として指定したのが、共通テストの最中だったというわけだ。
A子は高知県出身。高3で迎えた前年の大学受験では志望校に合格できず、滑り止めだった大阪府内の中堅私大に進学した。
だが、やはり納得がいかない。密かに再受験を誓うも成績が伸びず、焦った末に思い至ったのが紹介サイトを利用した手口だった。
悪だくみはなぜ発覚したのか
「そのサイトには、東大や京大などの現役大学生ら約200人が家庭教師として登録。A子は『最初から不正目的で登録した』と話している」(同前) A子は少なくとも4人の大学生と接触していた。社会部記者が補足する。 「世界史のほかにも、国語、英語、数学、化学と、ほとんどの科目で解答を依頼した形跡がありました」
しかし、悪だくみは呆気なく発覚。きっかけは初日の世界史で加担させられた東大生が感づき、大学入試センターに通報したことだ。 「本人もバレそうになったと感じ、世界史以降の科目はこの手口を断念。画像データも削除した」(同前)
不正行為が大々的に報道されたのは1月26日。青ざめたA子は、泣きながら母親に電話をかけ、全てを打ち明ける。そして翌日昼前、母とともに香川県警丸亀署に出頭したのだ。
そこまでしてA子が行きたかった大学とは――
「地元で噂が広まるのを怖れ、縁のない丸亀市まで出向いている。本人は『とんでもないことをしてしまった』と泣きじゃくり、自殺が心配されるほど憔悴していた」(別の捜査関係者)
そこまでしてA子が行きたかった大学とは――。
「A子は誰でも知っている都内の一流私大の名前を挙げているようです。ただ最難関の早稲田や慶応ではない。立教や青山学院など、いわゆる『MARCH』あたりを、共通テスト利用入試で目指していたものと思われます」(社会部デスク)
大学入試センターは被害届を提出済。A子にはどんな処分が下されるのか。
「警視庁は偽計業務妨害を見据え、A子の証言通り、単独で一連のスマホ操作が可能かどうか再現実験を行うと。ただ、今回の事件はズルをしていい点を取ろうとしたが、大学入試センターの業務を妨げる故意性はなかったといえる。本人も反省しているため、逮捕はせず、起訴を求めない意見をつけて書類送検される見込みです」(同前)
とはいえ、“受験料”はあまりにも高かった。