今の円安は「日本の信用リスク」が意識されている可能性も。拡張的な財政政策と金融緩和で、水準を超えたインフレ・円安への警戒が必要か
10・30・2021
米ドル/円は調整局面入りも、大きくは下がらず。今回の円安、多くのエコノミストが説明に苦慮している
先週(10月18日~)、114.70円前後まで上昇したあと、米ドル/円相場は調整局面に入っています。しかし、下げも今のところ113.42円前後までで、大きく下げるわけでもありません。
今回の円安、多くのエコノミストが説明に苦慮しています。そもそも昨年(2020年)末、2021年の為替予想として多くのエコノミストが円高を予想しました。それからおよそ1年、米ドル/円は当時より10円円安です。さらに円安に向かうには、根本的に違う何か理由が必要になってきます。
水準感からいうと、円は非常に割安です。
黒田日銀総裁が「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準」、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と発言したのは2015年6月、125円台のとき。現状の実質実効レートは同水準です。
円の絶対水準は安いが、さらに安くなりそう。そう見える、3つの材料とは?
しかし個々の材料を見ると、さらに円安に向かいそうに見えます。
ひとつ目の材料は、米金利の上昇です。今回の米ドル/円上昇は9月23日(木)、米FOMC(米連邦公開市場委員会)をきっかけに始まりました。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、11月テーパリング(※)開始、来年(2022年)6月終了を示唆した時です。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
米長期金利はそれまでレジスタンスだった1.4%を突破して、1.7%前後まで上昇、それにつれて、米ドル/円も上昇しました。
ふたつ目は、米国以外の国々も金融引き締めに動いていることです。ノルウェーが9月26日(日)に利上げ、ニュージーランドも10月6日(水)に利上げしました。今後も英国など、利上げに動くことが想定されています。
3つ目、エネルギー価格の上昇です。グリーンフレーションとも呼ばれ始めていますが、脱炭素を進めるため、従来の化石燃料への投資が絞られ価格が上昇、資源を輸入するしかない日本の貿易収支は、かなりの円安水準というのに、赤字化しています。
つまり、絶対水準は安いが、さらに安くなりそう……それが円の状況です。
日本の「信用リスク」がマーケットに加味されてきた可能性
しかし、それだけではない要素も感じます。
現在の米ドル/円レートは、米金利の水準に歩調を合わせていますが、今年(2021年)のはじめに米長期金利が1.77%前後まで達した3月末ごろ、米ドル/円は110円前後でした。
現在、米長期金利は1.62%前後ですが、米ドル/円は114円前後の水準にあります。
つまり、米金利上昇以外の理由もあって、円安が進んでいるともいえます。
もしかすると、日本の「信用リスク」もマーケットに加味されてきたのかもしれません。
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