出会い系サイトを利用するお客さんは、本当に色々な人がいますよ。私、15社も渡り歩いていますからね、情報量はすごいですよ」
麻友さん(左)。隣はサクラの同僚だという
20歳から現在まで出会い系サイトのサクラとして14年間働く麻友さん(仮名・34歳)。中には、かなり癖のある利用客もいるという。
出会い系サイトのサクラとは、利用客とメールのやり取りをする人のことを指す。このメールの送受信には1通500円程度の料金がかかる。しかし、いくらいい雰囲気になっても一生出会うことができない。サクラたちは客を泳がせるだけ泳がせて、金を使わせる。それでも、利用する人間は多いのだ。
返信が10分以内の看護師
「あの女性はいつ寝ているのか。社内スタッフ、皆心配していましたよ」 その女性とは、メールのやりとりだけで月50万円以上使うヘビーユーザーA子さん(30代)だ。利用歴は5年だという。
A子さんは現役の看護師とのことなのだが、サクラがいつメールを送っても、すぐに返信が返ってくるそうで、そのスピードは平均10分以内というから驚く。 「メールのネタ切れ対策のために、A子さんにはサクラを5人投入しています」
投入したサクラ5人のキャラの内訳は、俳優の卵、御曹司、カリスマ美容師、青年実業家、医師。年齢設定は20~30代で、写真はそれっぽい雰囲気のものを、SNSから拾って使う。 メールの内容は恋人のようなイチャイチャトークがメインで、昼夜問わず、過激で性的な言葉が飛び交うものだという。ハイスペックな5人の男性から言い寄られていると思い込んでいるAさんはお気に入りのサクラに対して、“早く私に会わないと取られちゃうよ?他の男からもアタックされているんだから”と、恋の駆け引きを仕掛けてくることも多いそうだ。
「他の男っていうのは、もちろんサクラのことなんですけどね。どのサクラも優しくてイケメン設定なので、勘違いしてしまう理由も分かりますが…」
暴言を吐いてくる非モテ40男
「チヤホヤされて調子に乗るのか、常に暴言を吐いてくるお客さんもいます」
写真はイメージです(以下同じ)
どんな態度のお客さんにも優しく接する出会い系サイトのサクラたち。長年利用していることで感覚がおかしくなってくる人も多いようだ。その中でも印象的だったと話してくれたのは、B男さん(40代)だ。 「“お前みたいなブスは、俺とやりとりできてることを感謝すべきだ”と送られてきました…」
ちなみにサクラとして用意したのは、モデルの卵と思われる女性の写真。当然、全くブスではなく、むしろ美女の部類に入るはずだ。
「“俺、イケてるだろ?”と、送られてきた写真はチェックシャツに細身のパンツ、ひと昔前のギャル男みたいな写真。これに対して300文字くらいで丁寧に褒めないとブチ切れるんです。毎日のことなのでネタ切れですよ」
現在でもそのやり取りは続いており、出勤した時に返信しなくてはいけないと思うと若干胃が痛むそうだ。 「もしかしたら、私たちのほうが遊ばれているのかもしれません。実際、体調崩しかけている仲間も数名いますし…」
謙虚なユーザーには退会を促すことも
「私、謙虚なユーザーには退会を促しちゃうんです」最後に、麻友さんなりの悩みも話してくれた。
「“こんな私なんですがよろしくお願いします”とか、“ブスでごめんなさい”みたいなことを言う人を見かけると、この出会い系サイトでお金使わないでほしいと思ってしまいます。なんか可哀そうで…」
とはいえ、出会い系サイトのサクラ側からお客さんを切ることはご法度。麻友さんはどのように対処しているのだろうか。
「“お金が厳しくて”のSOSコールが来たとき、“あなたなら出会い系サイトを利用しなくても出会えるから大丈夫だよ”って伝えているんです。この意味に気づいてくれるといいなと思っています」。しかし、メールの履歴は会社の本部で全て管理されているため、あまり目立った内容は送れない。そこで考えたのが、上記の内容だそうだ。 「でもそうゆう人に限って、課金してお礼のメールを送ってくるんです。やめてくれ~って思いますよ」
まっとうな仕事に就こうか検討中
サクラを長年続けている麻友さんだが、最近は周囲に言えるような仕事をしたいと考えが変わってきていると打ち明けてくれた。 「最近、20代では感じてこなかった罪悪感がすごくあるんです。褒められた仕事内容ではないことは分かっているので。この業界をスパっと辞めて、まっとうな職業に就くことを考えています」
現在は、休憩時間に求人情報サイトをチェックするのが日課になっている。 なかなかオープンになることがない出会い系サイトの裏側。“メールを送信するだけで簡単そう”と思いがちだが、実際はかなり気を遣うデリケートな部分があることも話の中から伝わってきた。 とはいえ、サクラは違法な仕事であることには変わりない。麻友さんには、新しいフィールドで頑張ってもらいたいと感じた。