忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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ジジィ必見「サイドウェイ」

2005年03月19日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


■DVD:「サイドウェイ」


映画というものは一人でも多くの観客に観られることで
利益を得るわけで、となれば、作り手はあの手この手で
観客を喜ばせようとするのが当たり前の話である。
しかしこの映画、何もしない。
何のサービスもしないのだ。
びっくりするほどに。

映画は、作家になる夢を捨てきれないまま
教師生活を続けてきた男と、
結婚を来週に控えた、下半身に節操のない売れない役者の二人が
1週間かけてワインを飲み歩き、ゴルフを楽しみ、
女を口説こうとするだけの話である。
だらだらしたジジィがだらだらと酒を飲み、
グダグダと愚痴をこぼしているだけだ。
邦画でも「きょうのできごと」という、
ある若者達の一夜を切り取ったような映画があったが、
主人公がジジィ二人という若々しさの欠片もないこの映画の方が
何故か私の心には異常なほど沁みてしまった。
主人公の抱えている不安や、
その解消方法などがいちいち共感出来るからだ。
若い頃は無限にも思えた選択肢が徐々に狭まってくると、
現状がそれなりであればOKとして納得させようとする。
しかし、それでも心のどこかでは新たな芽を探していたりするものなのだ。
表向きは平静を装いつつも、
裏ではジタバタと悪足掻きをする中年親父の姿を
これほどリアルに映像化した作品を私は知らない。

この映画の監督であるアレクサンダー・ペインは、
ジャック・ニコルソンを主演に据え、定年退職した男の悲哀を描いた
「アバウト・シュミット」という映画も手掛けている。
「サイドウェイ」のマイルスとジャックは、
20年後にシュミットのような親父になるかならないかの境目にいるのだ。
シュミットより20歳ほど若い分だけ、ジタバタ加減も派手になっている。

マイルスを演じたポール・ジアマッティは
「アメリカン・スプレンダー」という、
これまた普通の中年男を描いた作品でも主演しているのだが、
(良い意味で)スター性というものをまるで感じない。
「サイドウェイ」のどこにも造り物っぽさが無いのは、
ポールを含む主要キャスト4人の
「演技であることを忘れさせる高い演技力」があってこそなのだ。

こういった映画がノミネートされるとは、
オスカー審査員もなかなかやるな。
残念ながら受賞こそ脚色賞のみに終わってしまったが、
大作や話題作ばかり追うのも疲れたな、と思っている
30代以上の男性ならかなりお勧めだ。
観賞後やたらと飲みたくなるので、映画と別に飲み代も持って行くべし。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:サイドウェイ
    配給:20世紀FOX
   公開日:2005年3月5日
    監督:アレクサンダー・ペイン(「アバウトシュミット」)
    出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ
 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/sideways/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (14)
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