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■DVD:「サイドウェイ」
映画というものは一人でも多くの観客に観られることで
利益を得るわけで、となれば、作り手はあの手この手で
観客を喜ばせようとするのが当たり前の話である。
しかしこの映画、何もしない。
何のサービスもしないのだ。
びっくりするほどに。
映画は、作家になる夢を捨てきれないまま
教師生活を続けてきた男と、
結婚を来週に控えた、下半身に節操のない売れない役者の二人が
1週間かけてワインを飲み歩き、ゴルフを楽しみ、
女を口説こうとするだけの話である。
だらだらしたジジィがだらだらと酒を飲み、
グダグダと愚痴をこぼしているだけだ。
邦画でも「きょうのできごと」という、
ある若者達の一夜を切り取ったような映画があったが、
主人公がジジィ二人という若々しさの欠片もないこの映画の方が
何故か私の心には異常なほど沁みてしまった。
主人公の抱えている不安や、
その解消方法などがいちいち共感出来るからだ。
若い頃は無限にも思えた選択肢が徐々に狭まってくると、
現状がそれなりであればOKとして納得させようとする。
しかし、それでも心のどこかでは新たな芽を探していたりするものなのだ。
表向きは平静を装いつつも、
裏ではジタバタと悪足掻きをする中年親父の姿を
これほどリアルに映像化した作品を私は知らない。
この映画の監督であるアレクサンダー・ペインは、
ジャック・ニコルソンを主演に据え、定年退職した男の悲哀を描いた
「アバウト・シュミット」という映画も手掛けている。
「サイドウェイ」のマイルスとジャックは、
20年後にシュミットのような親父になるかならないかの境目にいるのだ。
シュミットより20歳ほど若い分だけ、ジタバタ加減も派手になっている。
マイルスを演じたポール・ジアマッティは
「アメリカン・スプレンダー」という、
これまた普通の中年男を描いた作品でも主演しているのだが、
(良い意味で)スター性というものをまるで感じない。
「サイドウェイ」のどこにも造り物っぽさが無いのは、
ポールを含む主要キャスト4人の
「演技であることを忘れさせる高い演技力」があってこそなのだ。
こういった映画がノミネートされるとは、
オスカー審査員もなかなかやるな。
残念ながら受賞こそ脚色賞のみに終わってしまったが、
大作や話題作ばかり追うのも疲れたな、と思っている
30代以上の男性ならかなりお勧めだ。
観賞後やたらと飲みたくなるので、映画と別に飲み代も持って行くべし。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:サイドウェイ
配給:20世紀FOX
公開日:2005年3月5日
監督:アレクサンダー・ペイン(「アバウトシュミット」)
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ
公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/sideways/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
一番強烈だったのはやはり「トレイラー・タウンの魔女狩り」だったんですが、ジアマッティの「アメリカン・スプレンダー」も取り上げられていました。
『サイドウェイ』、ね・・・『より道』とかいう邦題にした方が個人的に好き。
僕自身もバリバリのブルー・カラーなので、さらにブルーになるのを覚悟で見ようと思います。
その数少ない最近見た映画が
「アメリカンスプレンダー」と「ビューティフルデイズ」なので、
できれば、取り上げていただけたら、と思う次第であります。
よしなに。
悲哀を引き立てるためとはいえ、ちょっとくどかった。
いろんなものを諦めていく、いかざるを得ない現実に比べて、シュミットには救いがあんまりなかったけど、今作ではどうなってるのか?ちょっと気になりますね。
昔は邦題もずいぶんと洒落た物が多かったのだが、
最近は邦題が全く本編の内容にそぐわない物が増えてしまった。
ちなみに、さほどブルーになる映画ではないのでご安心を。
>tao2yao1殿
最近観たのが「アメリカンスプレンダー」とは、
かなり通な方であるな。
当BLOGでは基本的に劇場で上映中か、
上映開始少し前ぐらいの映画を扱う予定なのだ。
申し訳ない。
出張所の方で旧作も取り上げてみようかとも思っているのだが、
最近少し忙しくなってきたのでなかなか時間が取れないのだ。
>namo殿
仰る意味はよく分かる。
私はそういった部分も含めて「シュミット」が好きなのだが、
今作は「シュミット」よりずっと救いがあると思う。
特に終わり方が素晴らしいのだ。
時間があれば是非。
だとしたら自分にとっては必ず見ないとダメですな。
でも、映画館遠い・・・・。orz
ワイナリーツアーが好調とかいう報道を見ると、
どの国の人も変わらないんだなぁとしみじみ思います。
ワイナリーツアーって、なんか憧れます。
ほのぼの、のんびりした旅に出たい。
クリントイーストウッドも好きなんですよね「許されざるもの」は私のベスト5には入ります。
む、その大槻の話は知らないのだが、
のほほんとしているのは確かだ。
劇場で観ることをお勧めするが、
テレビサイズでも充分楽しめるタイプなので
DVD化を待っても良いかも知れぬ。
>Mの字殿
私はワインは白派なのだ。
赤はあまり飲まないのだが、この映画をきっかけに
色々と飲んでみようかと思った。
ワイナリーツアーもやってみたい。
日本ならさしずめ酒蔵めぐりであろうか。
灘にでも酒蔵めぐりに行きたいが・・・遠いな。
>豆しば殿
なんと、私も「アダプテーション」はかなり好みなのだ。
ニコラス・ケイジとメリル・ストリープの
怪演も見逃せないが、何と言っても脚本が良い。
「エターナル」も素晴らしい出来だ。
個人的には「アダプテーション」よりも良い。
思うに、カウフマンは外の世界よりも
人の内にある宇宙に興味があるのだろう。
豆しば殿にも向いているのではないかと思う。
丁寧な文面に安心できます。
気になる香りの映画ですね。
家の地域でも上映してくれるのかなぁ。
女性は退屈するのかな?
会話が無くなったりして。
ようこそ、場末のBLOGへ。
女性でも楽しめると思うが、
「男」という生き物に対して
馬鹿も含めて可愛いと思える方でなければ
「なんだこのオッサンらは」で終わってしまう可能性もある。
広いお心で鑑賞されることをお勧めする。