荒川区立峡田小学校 研究発表会に参加して 【マインドマップ講義録】

一昨日の東京都教育課題研究発表会の「自尊感情・自己肯定感を高める研究」に引き続き、今日は荒川区立峡田小学校の研究発表会に参加させていただきました。峡田小学校は東京都教育委員会の研究指定校として、特別活動の研究を通して「自尊感情を高める工夫」をしてきた学校なのです。東京都の研究指定校ということは、現状として「自尊感情・自己肯定感」を高める指導として最先端を行っている学校と判断して良いわけです。ここ数年間の私の個人研究が、はたしてどこまでのものなのか判断する材料となると思い、何としても参加しなくてはならないという思いから足を運びました。

「他校の研究発表会に行って、いったい何が役に立つのか」という批判をする教員も世の中にはいますが、確かに何の目的もなく行くのでは役に立ちません。しかし今回は「自尊感情(セルフエスティーム)を高めるためにはどうしたら良いか」という自分自身の研究テーマへの強い執着心がありましたから、授業を変更しても参加する意味はありました。



今回の研究発表会では、3年生クラスの授業を参観しました。理由は授業内容が、同僚のモジャ先生が研究を進めている「言葉プロジェクト」とまったく同じだったからでした。授業名は「やさしい言葉があふれる3年2組」というもので、学級活動(2)-ウ「望ましい人間関係の育成」をねらいとしているものでした。

私、他校の授業であっても、遠慮なくポジション取りをします。
今日も、黒板の左横に陣取って、前から担任目線で子どもたちの表情を見ながら授業を参観しました。

自分が授業をしたらどう子どもたちに発問するかな?
今の発言に対してどう返してあげるかな?
子どもたちが自分の考えをまとめる時間はあるのかな?
授業にみんなが集中できているかな?
担任の先生は、子どもたちの意見をうまくコーディネートできているかな?
もっと良い授業をするためにはどうしたら良いのかな?

こんなことを自問自答しながら、さも自分が授業をしているかのように参観するのが私のスタイルです。
それが研究授業というものだと認識しているから、まったく遠慮せず歩きまわって子どもたちの学習状況を見ていきます。
研究授業に慣れていない先生だったら大迷惑かもしれませんね(笑)
しかし今日の先生は大丈夫でした!


この峡田小学校の発表会に参加して分かったことですが、モジャ先生が研究を進めている「言葉プロジェクト」は実は目新しいことではなくて、特別活動を研究している先生方には一般的な指導なのでした。モジャ先生は「チクチク言葉」「アッタカ言葉」というキーワードで、美しい言葉を使う5年生を育てようとしていまして、それをどの学校にも通用するプロジェクト教育に創って発表しようと、他校の管理職の先生が支援をして下さっています。ところが、その内容はすでに取り組まれていることを知りました。「チクチク言葉」も使われていますし、「アッタカ言葉」と同様の「フワフワ言葉」という取り組みをしている先生も、すでにいることが分かりました。
モジャ先生の挑戦は、今よりももっともっと高いレベルのものにしていかなければ通用しないようです。



さて、峡田小学校の研究発表内容に戻ります。

まず、今回の発表で私の脳裏に強く残ったキーワードを紹介します。

「自己決定」
「チーム峡田」
「達成感」
「実践サイクル」
「指導の均一性・共通スタイル」
「ふりかえり」
「掲示物」
「安心感」


「自己決定」
教師にやらされる活動ではなく、子どもが自分たちで決めた活動をしていくこと。これこそが特別活動のねらいである「自主的,実践的な態度」の育成につながる。

「チーム峡田」
児童・教職員・保護者・地域の方々など、学校に関わるすべての人々が一体となって、ひとつの目標に向かって進んでいく姿が生まれれば、当然その学校は発展していく。それが「チーム意識」である。確かに私も昨年の6年生担任緊急登板の時、最初の保護者会で1時間かけて主張したのがこのことでした。「三位一体の改革」「WIN-WIN-WINの関係を築く」という意識に立つことで、「史上最高の卒業式をする」という目標達成に向かって“チーム”を前進させていく。
これからの学校は、こうした「チーム意識」を持ち、自分の学校に対しての愛校心を育んでいくことによって、関係者すべてが成長していける=幸せになることを意識していかなくてはならないのだろうと感じました。

「達成感」
これは安直な達成感ではありません。苦労を乗り越え、壁を破り、前進できた時の大きな達成感が、子どもたちの自己肯定感を育むことにつながります。楽なことばかりをやらせる学校には、子どもたちに大きな達成感をつかむチャンスがなく、友だちへの関心も高まることがありません。教師が子どもたちにしっかり寄り添って、大きな達成感をつかませてあげられるような指導こそ、過去から変わらぬ教育の王道なのだと思います。

「実践サイクル」
今回の発表会では、次のような実践サイクルが確立されていました。
①児童の願い ②話し合い ③実践 ④振り返り
1年生から6年生まで同じように教育実践がなされていくことによって、「同一パターンのグレードアップ」が生まれ、子どもたちは系統的に育てられていくことになります。担任が変わっても指導内容は変わらない。この事実は学校の総合力として大きな成果を上げていきます。

「指導の均一性・共通スタイル」
学級会のやり方が1年生から6年生まで統一されていました。研究指定校のなせる技とも言えましょう。本当は日本全国すべての学校で、こうした統一性のある指導をしていくことができれば、日本の教育はさらに良くなるかもしれません。それを実現するのは管理職の先生の仕事です。一教員が本気になればできないこともありませんが、それも一校に限ります。
私はこれからの時代、「管理職の横の連携」による学校を超えた何らかの地域の統一性ができることに、教育を開く突破口があると思えてなりません。

「ふりかえり」
特別活動に限らず、すべての学習で自分が取り組んできたことを「ふりかえる」ことによって、行動の意義づけになり、さらに高い学習をしよう、より良い人間関係を築こうとする、次へのきっかけになる。ふりかえりを言語化することによって、自己をメタ認知することにもつながり、高みに進んでいくモチベーションの高まりにもつながる。

「掲示物」
今回の研究発表のひとつの目玉であると感じた。委員会活動やクラブ活動のお知らせを、学校内の最も目立つ場所にコーナーを作り、掲示してある。これによって特別活動への児童の意識が必然的に高まる。自分たちの活動を「認められる」という承認欲求を満たす効果がある。特別活動以外にも、学校内の様々な場所に学習の成果を掲示していくコーナーがあった。掲示物の効果は私が辰巳小学校にいた時の個人研究テーマでもあったのだが、間違いなく効果がある。子どもたちは大人が考える以上に掲示物を見ているのだ。だから掲示物で手抜きをすれば、すぐに子どもたちに伝わり、学校が乱れる。優れた教育実践をしている学校は、掲示物だけを見れば分かってしまう。

「安心感」
「自分はこの学級にいていいんだ」という安心感を持てるような学校にしたい。誰ひとり必要のない子はいない。全員が大切にされているし、大切にし合っている。それは特別活動に力を入れるとそのような空気になっていく。道徳で心を育み、特別活動で道徳的実践力を鍛えていく。そういう「実践の場」が特別活動である。
すべての子どもが活躍できる学校にすることができると、それが卒業式に顕れる。学校に関わる人すべてが幸福感を感じられるような学校作りをしていきたい。



最後に峡田小学校の定義する自己肯定感を紹介してまとめとします。

(低学年)
友達と一緒に仲良く活動することで自分のがんばりを認めることができる。
活動を振り返ることで自分のがんばりを認めることができる。

(中学年)
友達と協力して活動し、互いに認め合うことができる。
自分の考えをもって活動し、振り返ることで自分のよさを実感できる。

(高学年)
相手を尊重し、自分の思いや考えを伝えることができる。
友達を信頼して、意見を交わし合いながら自信を持って活動に取り組むことができる。
自他の長所や短所を含めて、その人らしさを認め合うことがでいる。

(特別支援学級)
自分が大切な存在であると分かる。
自分が周りの人の役に立っていると気付くことができる。



読んでいただきありがとうございます。
できましたら応援の1クリックをお願い致します。


にほんブログ村 教育ブログ 小学校教育へにほんブログ村
コメント ( 0 ) | Trackback (  )