素晴らしい発想であり、研究です。記録しておきましょう。
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手加減上手な囲碁AIを研究 父が強すぎ挫折した准教授
朝日新聞 2019年7月21日16時00分
囲碁界でも、プロ棋士をはるかに上回る実力を持つようになったAI(人工知能)。囲碁AIに人間を楽しませ、的確な囲碁の指導を行わせたい。そんな研究を北陸先端科学技術大学院大学の池田心(こころ)准教授(44)が進めている。強くなりすぎた囲碁AIは、人間をうまく「接待」することができるのだろうか。
金沢市で今月開かれた囲碁の国際イベント「ジャパン碁コングレス」。関西棋院所属の若手棋士3人が12日、囲碁AI「Leela(リーラ) Zero(ゼロ)」に公開対局で挑んだ。
結果は、3人で知恵を出し合ったプロ棋士チームが160手で中押し負けに終わった。「すごく性格の悪い人と打っているみたい。本当に嫌なことばかりしてくる」。対局中に姜(カン)ミ侯(ヌ)三段(23)がつぶやくなど、プロが束になっても勝てないほど、AIの実力はずば抜けているようだ。
「強ければ教えるのもうまい、とは限らない。普通の人は、いつも負けてばかりだと囲碁が嫌いになってしまう」
同じ会場では、囲碁の最新研究を紹介する囲碁学会もあり、「楽しませる囲碁プログラム~強すぎるAIにどう接待させるか~」をテーマに池田さんが講演した。池田さんは子どものころ、アマチュアの強豪だった父に囲碁を習っていたが全然勝てず、嫌になってやめた経験がある。それが研究の動機となり、2010年から人間を楽しませながら囲碁を教えられるAIの研究を続けている。
自力で勝てたと思わせる手加減
「ポイントはいかに自然な手加減ができるのかどうか。相手がうまく打てば、自力で勝ったように感じさせることが大事」
このため、次の一手に複数の選択肢があった場合、囲碁AIは予測される勝率が最も高い手は、あえて選ばせないようにした。最も勝率が低い「あからさまに悪い手」も避けるようにし、人間が選ぶ可能性が低すぎる手も打たない。
だが、手加減するのはAI側の形勢が有利なときだけに限り、互角か不利なら手加減はしない。悪手を打ってしまえば、AIが勝つようにし、自然と「いい勝負」になるように目指した。
囲碁サイトでプログラムを公開し、多くの人間と対局させた結果、相手の強さがどのレベルでもAI側の勝率を3割程度にすることができた。人間が不自然だと感じた手も30手あたりで平均1・7個に抑えられた。
「人間を楽しませる」研究、終わりなく
人間が悪手を打った場合に、どのように指摘するかも研究を進めた。悪手かどうかの判断はもちろんだが、囲碁は将棋と違って手を座標で表現せず、「トビ」「キリ」「オサエ」などと形で表現することが多い。研究では、アマチュア6人に1万種類以上の形に名前を付けてもらい、多くのデータを覚えることで、人間の表現との一致率は、82%まで高まった。
「純粋に強くすることを目的とする囲碁AIの研究と違い、『人間を楽しませる』という研究には様々な方向性があり、終わりがない」と池田さん。対局中の相手の表情をカメラで読み取り、何か言葉を投げかけるほか、どう打てばよかったのかという図を付けて解説させることもできるようになりつつある。
ただ、池田さん自身が毎日使いたいと思える囲碁AIに仕上げるためには、まだ1、2年はかかるという。「この技術は他のゲームにも応用できる。まずは囲碁を楽しく教え、広く普及させることを目指したい」(渡義人)
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強すぎて可愛くないAIではなく、教え上手で敬愛できるAIを開発する。考えただけでも、凄い発想だと感服してしまいます。池田教授には、ぜひとも完成してもらい、多くの囲碁ファンを愉しませてほしいものです。
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