中国四大奇書のひとつ金瓶梅を元に山田風太郎が連作ミステリーに仕立てた傑作。
いつかは読みたいと思っているホンモノを単に山田風太郎風に訳すだけじゃなく、まったく別の怪異な物語に仕立て上げるところがいかにも。
ミステリー仕立てなので犯行のトリック、種証しが付きまとうわけです。トリックとしては何処かで使われていたような気のする物もありますが、この作品は推理トリックを楽しむミステリーでない事は明白。
探偵役であっさり謎解きをする西門家に出入りする幇間的性格の応伯爵。この名探偵、ホシを見破ってもある理由から決して捕える事はいたしません。
稀世の大淫婦、第五夫人の潘金蓮の妖艶さにどこまでもどこまでも応伯爵とともに読者も
嵌っていくわけです。
自分より美しい者が許されず容赦なく抹殺していく大悪女も西門慶に対する愛情の濃さが淫婦でありながら、どこか憎めず、またそこが魅力。
それほど過激な性描写があるわけでもないのにこのエロチックさは凄い。
不案内な中国古来の伝統風俗の描写がエロ度を倍加させるのに役立っているのかもしれない。
前半諸作のライトミステリー感覚のものより後半の水滸伝、梁山泊の面々が登場しての活劇風展開が楽しい。
是非オムニバスピンク映画にして欲しいゾ
巻末にボーナストラックとして「邪淫の烙印」の原型作品である「人間燈籠」が納められているのも嬉しい。
やはり「金瓶梅」は原典も読まねばなぁ。徳間文庫から出ている土屋英明のものがよさそうだけれど・・・
それより、まず「水滸伝」か。こちらは昔、講談社文庫の駒田信二のもの全8巻を途中まで読んだっきりだ。
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