生駒のアラ還の独り言

医療業界のあることないことを独断と偏見で綴る

「公立病院改革ガイドライン」の読み方は

2010-03-20 17:24:22 | 日記

 平成19年12月に、総務省は「公立病院改革ガイドライン」なるものを出しました。
その冒頭で次のように述べています。
「公立病院の役割は、地域に必要な医療のうち、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供すること(例えば、①過疎地②救急等不採算部門③高度・先進医療④医師派遣機能)」。
 医療提供は原則採算性を重視する民間中心とするが、その足らないところを補完するのが公立病院の役割とするとも説明をしています。
 私はこれはおかしいと思います。特に②の救急等不採算部門について疑問点を以下に掲げてみます。
1.厚労省と立場が違うとはいえ、救急を何故不採算部門だと断じるのか不可解。
2.病床稼動アップ等病院経営全体の観点で考えれば、救急部門単独を抜き出して赤字と決め付けるのはおかしい。「損して得とれ」という表現は誤解されがちだが、そういうこと。
 例えば、東京のある病院は、救急搬送をお願いするため地元消防署に営業を掛けていると聞き及んでいる。
3.救急部門は急性期病院の大看板のようなもので、救急を嫌がるような病院は自ら「急性期」から撤退すべき筋の話なのに、このガイドラインが、救急を避けたい救急病院をいびつな形で温存することに繋がる懸念がある。
 生駒市医師会の主張(以前の記事をご参照ください)がまさにこのガイドラインの悪乗りになってしまっている。民間救急病院の甘えを助長するようなことは止めてほしい。
4.救急部門が赤字で、そのために民間医療機関が救急医療を提供できないのなら、総務省として厚労省に救急の診療報酬のアップを迫るべき筋の話。
 *迫った結果かどうかは不明だが、この4月の診療報酬改定では救急の点数が  大幅にアップされることになりました。
 *ただ、これでたらい回しや救急車立ち往生の事態が解消されるかどうかは疑問が残ります。
5.公立病院の改革という限定された視点ではやむを得ないが、一方の民間医療機関の経営努力を促す視点が抜けてしまっている。地域医療崩壊の原因は、公・民共にあるのだから。
 *少なくとも公立病院の役割を「補完的役割」とするのは困ります。民間医療機関では不可能な地域医療再生の中心的役割を果たして貰わなくては困ります。
 
 高級官僚や識者の方が纏めた格調の高いガイドラインですので、私のような人間が批判するのは間違っているのかもしれません。 …反省…
 
 別件です。いつもお叱りを受けていますが、医療機関における経営者(もしくは経営)と勤務医(もしくは過酷な現状)の問題は分けて考える必要があると思います。またの機会に記事にします。