生駒のアラ還の独り言

医療業界のあることないことを独断と偏見で綴る

中小病院の経営力

2010-03-09 21:19:37 | 日記

 今日は、概ね200床未満の中小病院の経営力についての話です。
 以前から、中小病院の生き残りは難しいと言われてきました。要はベッド数が「中途半端」で、何をやろうとしてもベッド数の限界という理由で全てが中途半端になり、これからの厳しい医療行政からは脱落してしまうしかない という悲観論でした。現に全国各地で、こうした中小病院が廃院もしくはベッド返上という事態になっています。病院数も、ピーク時比1000ほど減っていますが、その多くはこうした中小病院でしょう。
 私が思うに中小病院の廃院の原因は、厳しい医療行政のためというよりは、その貧困な経営力にあったのではないかということです。理事長、院長、事務長等の経営幹部の能力の問題だと思います。能力のない経営者が運営するビジネスは結局破綻します。しかし医療ビジネスは他のビジネスと異なり、本来は極めて破綻リスクの低いビジネスです。公定価格に守られダンピング競争が無いこと、保険診療であるが故に貸し倒れのリスクが無いこと、地域医療計画のベッド規制により競争相手となる新規参入が阻止できていること 等々他業界では考えられないほどのメリットがあるにも拘わらず撤退をしているのです。
 勿論一方で生き残りのための厳しい現実があることも事実です。医師や看護師が採用できない とか、患者が集まらずベッド稼動が上がらない とか、救急部門が大赤字だとかあります。しかし厳しい言い方ですが結局は経営力の問題です。
 私は、
自院の強みを作らずまた特化もせず、総合病院的な厚化粧を漫然と続けてきた結果 だと結論付けます。「選択と集中」と言い方がされますが、まさにそうです。
 昔と違って、今は地域医療も役割分担の時代です。開業医・二次医療急性期病院・三次医療高度医療病院・亜急性期病院・慢性期病院 等々それぞれの機能を果たす役割を担っています。自院が二次急性期対応が無理なら、亜急性期や慢性期にその使命を変更すればよいのです。昔の名前で出ているような格好付けは必要ないのです。自院で不可能なことは、可能な他医療機関に任せるべきです。
 地域における自院の能力と役割を冷静に分析し、その将来像を描きいち早く行動に移す。それが中小病院の幹部に今求められていると考えます。それができなければ経営者失格ですし、国民経済的にみても大きな損失です。
 生駒市においても自院の立ち位置の判断ができていない中小病院が存在します。新市立病院が開設される頃までには、各医療機関がそれぞれの機能を十二分に発揮できるような地域医療連携体制が構築されていることを期待しています。
 以前に「合成の誤謬」の話をしました。本日の話も同じことではないかとの疑念も出てきますが、各医療機関が地域医療再生を市民が希求しているのだ という根っこさえ押さえてさえいれば決してそんなことにはならないと思っています。