室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

グランド・ヴァカンス 其の10 カターニア2

2008-05-13 16:25:33 | Weblog
温かいカモミール・ティを飲み、雨が小降りになって、やっと元気が出てきた。
ベッリーニ劇場前広場から歩き出し、ゆるやかな長い坂を登る。まん中は一方通行の車道で、その両脇に低めの街路樹が植えられ、更にその両脇が階段のゆるい上り坂になっている。歩道は両サイドともアパートメントに面している。その通りは皮製品、糸や布製品、家具などの工房をとく見かけた。2車線の車道の右側は殆ど車が停めてあり、駐車禁止マークはあるが、パーキング化している。車にも、歩行者にも、住民にも観光客にも良い通りだな~、と感心した。

途中の聖母マリア教会を見たりしながら坂を登り切り、大学の中をのぞいて、修道院と教会の方まで行き、ローマ時代の円形競技場跡あたりに来た頃には、傘がいらなくなっていた。アッシジの聖フランチェスコ教会があり、入ってみた。”アッシジの聖フランチェスコ”といえば、リストの名曲だ。私のレパートリーではないが、こういう名前の教会に出会うと、曲に対するイメージも新鮮なものになるかもしれない。

ぐるっと回って散策して、再びドゥオーモ前広場に戻ってきた頃には、晴れ間さえ見えていた。流石、自称”晴れ男”のオジ様と”晴れ女”の私のコンビだ。ドゥオーモを背中に右手を見やると、ブティック街の建物の切れ間に、山が・・。「あれ、エトナ山?」

シチリアの旅の目標は、パレルモ=テアトロ・マッシモとシルヴューとの再会、マルサーラ=カルタゴ遺跡、アグリジェント=ギリシャ遺跡、カターニア=エトナ山・・だったのだ。これで、目標を全部クリアした事にできる・・かな? 標高3326m、形も高さも富士山に近いエトナ山(写真、中上)は、アルプス以南では、イタリアで最も高く、しかも常に噴火している。前回2002年に大噴火があった時にニュースで見て、地理を全く分かっていなかった私はシルヴューにお見舞いのメールを送って、「全然遠いから大丈夫」という返事が来たのだった。この日、ドゥオーモ前から見えた時は、噴煙というより、頂上付近に雲がかかっていたが、雪が残っているのはハッキリと見えた。

夕方になってドゥオーモの扉が開いたので、中に入った。作曲家ベッリーニがここに眠っている、とガイドに書いてあるので探した。大きな柱の一つの根本にあった。天使に導かれて天国に上るベッリーニさんのレリーフと、何のメロディか一寸分からなかったが、大理石の五線譜にメロディがかかれている。Belliniと床の大理石に書かれた下に(写真、左)おいでになるのでしょう。マリア・カラスもお得意だった”清らかな女神よ”は、私も大好きだ。

オジ様は、エトナ山がもっと良く見えるかもしれないベッリーニ公園を目指そうとして下さったが、バスが思った方向へ行かず、公園に着いたと思ったらそこはごく一部分でしかなく、本体はかなり広大だという事が分かり、一応肉眼で見えたので満足する事にして、無線タクシーを呼んでホテルに帰った。

少し休憩して、夕食は「おいしい魚料理の店があるんですよ」と、オジ様が以前にいらした時は入れなかったというお店へ行った。さっき土砂降りの中、バスが着く直前に見た、鉄道の下のアーチ方の高架橋の近くの、Sicilia di Bocca というリストランテだ。入ると、客席より手前に前室があり、細かく砕いた氷の上に、色んな魚が無造作に重なるように置かれている。注文客が「これ!」と指を指して選び、重さを量って値段が決まるらしい。私たちが見慣れた真鯛が何匹かあった。あとは、良く分からない。

奧へ入ると天井がアーチ型になっていて、一番奧の壁はカターニアにまつわるらしき絵で飾られていた。本格的なリストランテだ。タコのマリネ、イカ・エビ・名前のわからない大きめの魚の切り身などの海の幸(写真、中下)、イカスミリゾット、またウニ・スパゲッティ。それに、表にあった魚の中の”マダイ”を注文した。塩竃焼きになって出てきた。(写真、右)その1皿だけで60ユーロ?

お腹いっぱい。大変もったいなかったが、”マダイ”少し、残しました・・。

大雨の時に着いたカターニア。ホテルはやや淋しいし、街は濡れてるせいか汚く見えるし・・だったが、雨が上がって、街が少しわかってくると、それなりに面白くなった。エトナ山が見えたし。
でも部屋は寒く、バスルームのカーテンしかないシャワーは、心許なく、一辺ひねってみたが使わなかった。その水が滴る音は一晩中、続いた。

グランド・ヴァカンス 其の9 カターニアへ

2008-05-13 13:23:38 | Weblog
4/17(木)
朝から、夕方のような曇り空。
8時半に朝食を取る。前日の夕食を取ったピカソ風の絵に囲まれた食堂で、豪華ではないけれど、そこそこ感じの良い朝食。中にアプリコット・ジャムの入った大きなクロワッサン、ソフトサラミ・ソーセージ、チーズ、カップ・ヨーグルト、カフェ・ラテ・・。それに前日気に入った小さい黄色リンゴ。

タクシーが来る時間まで、海岸の方へ散歩に行く。リゾートで訪れる人や優雅な住民向けのレストランやゲーム場、ディスコらしき遊技場などが集中している一帯のようで、道もそこがロータリーになっており、車がどんどん来る。(写真、左)海はライトグリーン。パレルモでも、マルサーラでもアグリジェントでも、この後のカターニアでもそうだが、スプレーによる落書きが多い。この海辺でも、人が少ない時間帯のせいか、フェンスの落書きが目立つ。イタリアは、けっこう放置しているようだ。ローマでも、遺跡や観光スポットには流石に落書きは見られなかったけれど、何気ない通りのウインドウの下壁などに落書きが見られたのは残念なことだ。

この海岸からホテルまでのあたりは、工事中のがらんどうの建物などのせいで、ややスラム街のような印象を受けてしまうが、一軒一軒見ると、オシャレなエクステリアの家がけっこうあった。そんな家や珍しい木の写真など撮ってそろそろチェックアウトの時間。

親切で、英語が得意でサービスの良いサルバトーレさん。(写真、中)「これを持って行けば次のホテルでパスポートを渡さないで済みますよ」と言って、パスポートのコピーを取って渡してくれた。前日の話のワインをプレゼントされ、まさかそんな事があるとは思っていなかったので、ビックリ。スーツケースはすでにしっかりパッキングしてあるので、リュックにワインの瓶を入れた。「アグリジェントにおいでの際は、ぜひまた当、Costazzurra ホテルにどうぞ・・」という感じだった。

10時20分にタクシーが来た。偶然、前日、バス乗り場からドゥオーモまで乗ったタクシーの運転手さんだった。海の男を思わせるような秘めたる逞しさを感じる顔つきの、感じの良い運転手さんだった。また、あのバス乗り場の広場に着いた。11時発のカターニア行きバス。こういう長距離運行のバスは時間どおりに来る。Sais社の2階建てバス。スーツケースを自分でバスのお尻の荷物置き場に入れる。2階席に上がって「荷物を取られたりしないか、見ていないといけません」とオジ様。インドみたいだな~、と思いながら、そういえば昔、フィレンツェに行った時も、行く前に「片時も所持品を手放してはいけない」とさんざん言われて出掛けたんだったな~、と思い出した。

バスは時々、もっと田舎の、アラブ風の雰囲気が漂う街で停車したりしながら、快適に進む。が、次第に雨が降り出した。この旅行で初めての雨だ。とうとう雨が一番激しい時に、カターニアのターミナルに着いてしまった。大粒の雨が降る中を荷物を下ろして、とりあえずすぐ側にあったBar に入り、まずは腹ごしらえ。サンドイッチと中身が何も入っていないパンとレモンティの昼食。ますます激しい雨の中、オジ様は「駅へ行ってタクシーを見つけて来ます」と出ていらした。私は荷物番。昼間っからBar でTVを見ているヒマそうな若者や、「恵んでください」と手を差し出してくるお婆さんが出入りしているBar で、私もTVを見ている振りをしながら、荷物を引き寄せ、オジ様を待つ。

でもじきにタクシーが来て、街なかのホテルに着く。ホテルModerno
今までと同じ三つ星なのだが、ゴミ箱、TVのリモコンの電池、ドライヤー、バスタオル、オシャレさも、余分なコンセントも無いホテル。ただ立地条件は良い。

部屋にいて楽しいホテルではない。雨は降り続いているけど、荷物を置いて、”象”がシンボルのドゥオーモ広場へ。(写真、右)
ドゥオーモは閉まっていて入れない。隣のサンタガタ教会も工事中で足場の下を歩いたり・・。
カターニア生まれのオペラ作曲家ベリーニの、ベリーニ劇場があり、その前が広場になっている。劇場は19世紀建造のクラシカルな建物で、ゲートを立派な彫刻が飾っているのだが、広場はモダンアートの彫刻がぐるっと取り囲んでいる。”考える人”がモザイク柄で覆われているようなスタイルで、なんだか広場にマッチしない・・。その広場に面したカフェに入って雨宿り。{今日は何だかな~}と思いながらハーブティを飲み、クッキーをかじった。しかし、そのカモミール・ティ(ティーバッグだったが)が意外にも美味しく、おまけのクッキーも美味しかった。「意外に美味しいですね」と話していたら、雨は小降りになってきた。