室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

Bob Greene in ミントンハウス

2008-05-23 01:02:31 | Weblog
火曜日に、Bob Greene が1年半ぶりで西荻窪のミントンハウスのピアノを弾きました

Bob Greene氏とは、2004年の秋にミントンハウスの阿部寛トリオのLIVEの時に知り合いました。新宿トラッド・ジャズ・フェスのチラシに名前が書いてあったのに、その事が気に入らず、とうとう弾かなかった意固地ピアニスト・・という噂で、その方が阿部さんのLIVEに現れた時は「どういう展開になるかな?弾いてくれるかな?」と、一同がドキドキしたものです。阿部寛(Gtr)後藤雅広(Cl)小林真人(Bass)の面々の演奏を嬉しそうに聴いていて、次第に弾きたくなってきた頃に、露払いに私がショパンの”幻想即興曲”を弾くと"Lovely Chopin!" と言って、握手を求めて私に話しかけて来ました。「弾けるなら、そういうピアノが弾きたかった」その時以来、友達になりました。

今回は5/4に東京に着いてすぐは体調がイマイチで、「3日間歩けなかった」とか「どうも胃の調子が・・」などとあまり元気が無い様子でいました。ミントンハウスに阿部寛トリオが出演する日を「楽しみにしている」と言いながら「ずっとピアノに触っていないから、弾くかどうか分からない」と言っていたのですが、鳥居坂のホテルから西荻窪に向かうタクシーの中で「あなたのお気に入りの蕎麦レストランで、皆があなたのことを待っているのよ」と私が言うと、「本当か?それは素晴らしい!お腹が空いてきた」と俄に元気が出て来ました。

奧に中庭の見えるお座敷がある、玉川という西荻窪のお蕎麦屋さんですっかりご機嫌になり、ミントンハウスに向かいます。「Abe は今までに見てきた中で最高のギタリストだ」と言いながら1回目のセットを丸々聴いて、2セット目は1曲聴くと、どうもウズウズして来ている様子なので「弾いてみる?」と聞くと「ウン!」

Bob Greene氏の凄いと思う点は、1922年生まれという年齢、「3週間半もピアノに触っていない」状態でも弾けてしまう、ということ以前に、先ずその音楽性です。アメリカの音楽であるジャズの神髄が、身体に染みこんでいて、暖かく、時にワイルドに、そして無邪気なJelly Roll Morton の魅力が、より美学を持って演奏されるのです。

私もBob のCDの中から"Winin Boy Blues" をコピーして弾いてみていますが、私が真似しても、ちっともサマになりません。この日のBob の演奏を間近に見ていて、その最も魅力の部分の”本質”が、私が持っているものと、全く違うことが良くわかりました。素っ晴らしい音楽がそこに存在しているのに、私には手につかむ事ができない。簡単に真似できない”ホンモノ” これが”ジャンルの違い”という事なのだろうか・・。