室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

グランド・ヴァカンス 其の6 マルサーラ2

2008-05-01 13:11:16 | Weblog
パレルモから西南西へ約200km。マルサーラという名前は、ピアノのコンクールで聞いたことがあるけれど、あまり日本人観光客の行かないような街。そこへわざわざ行ったのは、カルタゴの遺跡が見られるというからだ。

ゾウでアルプス越えをしてローマへ遠征した事で有名なハンニバルの国、カルタゴは、現在のチュニジアにあったが、ハンニバルの時代の後、しばらくローマと友好関係にあったのに、逆らって反感を買い、ローマに徹底的に破壊され、最後は塩を撒かれて滅ぼされた・・と塩野七生さんの「ローマ人の物語」で読んだ。シチリアは、ギリシャの植民地だったのが、カルタゴに征服されたり、ローマ人に征服されたり、ノルマン人が来たり、オスマン・トルコの物になったり、またヨーロッパ人が取り返して、ドイツになったり、スペインになったり・・有史以来、ずっと戦場であり、その中で、埋もれていって遺った物が、今日遺跡として観光資源になっている。

カルタゴ時代の遺跡の発掘現場が見られるモツィアの島へ行く為に、ドミンゴさんの運転するタクシーで船着き場へ向かう。ホテル、ヴィラ・ファヴォリータから10分程で、塩田と赤い風車小屋と、小さい舟が通る水路が見えてくる。畑のように海が四角く囲われている部分が赤い。ここで塩が出来るのだ。風車を使って製品にしているらしい。船着き場に着いて、ドミンゴさんにまた帰りの予約をして、舟に乗る。

このブログは一度に一枚の写真しかアップ出来ないので、プリントした写真3枚をまとめて携帯で写してアップしてます。その中の左側がその船着き場で、風車と水路も写ってるんですけどねえ・・。

取れた塩をこんもり山にして瓦をウロコのように被せた物が、水路沿いにいくつか並び、舟に乗る人の目を楽しませる。舟はのんびりと水路を進む。水路は次第に右へカーブして海に出る。遠くの左の方に要塞のような灯台らしき物が見える。あの先はきっと外海なのだろう。こちらは水深が浅く、座礁しないように棒くいの指示どおりに、相変わらずのんびり進んでいる。爽やかな風が心地よい。あとで分かった事だが、発掘当初は、馬で島に渡っていたようだ。

正面の島に上陸する。入場券を土産物店で買い、巨大なアロエの坂道を上り検札小屋で券を見せると、遺跡からの出土品を展示する博物館のお庭が広がっている。パームトゥリー等のほかに、ソテツ、サボテン、見知らぬ珍しい木、ベゴニアや赤紫の小さいガーベラのような花。その中央に、この一帯の遺跡を発掘したハードキャスル卿の胸像がある。

いよいよ展示館に入る。まずは一番の”お宝”らしい、大理石の青年像が優美に出迎えてくれる。それが、写真右側の像。ギリシャ人の作だろう。その奧の陳列棚には、ギリシャ風、アフリカ風の彫刻、壺、食器、武器、ランプ、装飾品、お面、建造物の一部など、様々な物が展示されている。地方の研究室らしい、おっとりとした明るい雰囲気の博物館だ。写真真ん中のひょうきんなお面は、アフリカ系の味わいだ。ここのシンボルの一つにもなっている。カルタゴ人は、これで楽しんでいたのだろうな~。

続いて発掘現場を展示する小屋を見る。青森の三内丸山遺跡をちょっと思い出した。でも、あそこはヘンテコな古代人のキャラクターなんぞ作って、イヤだったな~。なんであんな事を日本のテーマパークはするのかな・・? だいたいテーマパークという考え方からして、人間の純粋な好奇心を商品化する浅ましさがあるな~。イタリアにしろ、フランスにしろ、ポルトガルにしろ、ヘンテコなキャラクターなんて見ないし、必要としていない。ストーリーのある星の王子様や、ムーミンなどは違和感がないけれど、遺跡のテーマパークで作ったキャラクターは、単に遺跡の展示の仕方の価値を下げる役にしか立たないと思うけどな~。

・・なんて事を思い出しながら、外に出て、サボテンに囲まれた道を、海を目指すつもりで歩き出したが、サボテン・エリアを抜け出しても海岸に出ない。それでは右へ行ったら海岸に出るかなと歩いて行ったが、結局かなり歩いてしまった。右手の島の中央あたりは、かなりブドウが植えられていた。ワインになるのだろう。飛行機型をした風力発電装置が何基もあった。シチリアは風力発電がずいぶん普及しているようだ。次第に舟の時間も気になり出した。海の音、風の音、鳥の声に、人の声も時々聞こえ、不安というほどではないのだけれど、道らしきものが見つからず、畑を土埃をあげながら歩いた。思いの外長いお散歩になったが、展示館のお庭が見えた時は、ホッとした顔をしそうになった。

また舟に乗って、塩田の船着き場に戻る。塩田の博物館になっている赤い風車小屋で小さいお皿と塩を買い、トイレを借りた。こういうインターナショナルなスポットではトイレはちゃんとしているようだ。ドミンゴさんのタクシーで、マルサーラの街はずれの考古学博物館へ。ここは大きな博物館らしい建物で、天井は、丸いアーチ型になっている。モツィアの島にあったような展示物がきちんと学術的に整理されてある。マルサーラの街の道路にあったモザイク画も展示されていた。エントランスを挟んで反対側の広い部屋には、出土した床や心棒を使って大きなカルタゴ船の半身だけ再現したものが展示されていた。

車が頻繁に通る海岸通りをけっこう歩いて、ガリバルディ門をくぐると、旧市街。やはり旧市街の町並みは綺麗だし、面白い。教会はもとより、ちょっとした壁の装飾が素敵だ。7時になり、だいぶ夕方らしくなってきた。翌日のアグリジェント行きの情報を得るためにインフォメーションへ行く。電車は直通がない。バスもパレルモからの方が整備されている。マルサーラからアグリジェントへ行くバスは、なんと日に3本しか無い。それも、6時半、昼、それに夕方だ。昼のバスでは、観光する時間があまり無くなってしまう。かと云って、6時半発はさすがにキツイ。

素敵な旧市街を抜けて、素敵じゃないポポロ広場に出た。空気も治安も良くなさそうで、適当なレストランも見つからない。夕食はホテルですることに決めて、またドミンゴさんを呼ぶ。都合の良い時間帯にアグリジェントに行くには、タクシーしか無い。ドミンゴさんに聞くとアグリジェントまで200ユーロだと言う。円安につき、3万円を越える。が、オジ様は太っ腹である。とうとうアグリジェントまでタクシーで行くことに決める。8時過ぎにホテルに着いたが、「夕食はありません」と言われ、ピザとサラダのデリバリーなら出来る、というので頼んだ。

レセプションの奧にテーブルをセットしてくれて、テレビも付けてくれて、地元のCorvo というワインを取り、遅めの夕食を頂いた。Corvo 美味しかった。部屋で、遺跡の島でホコリだらけになった薄手のジーンズを膝から下だけ洗って、洗面室の温かいパイプの洗濯干し場に干した。三重扉の窓を少しだけ開けておく。旧市街の方と思われる辺りの灯りがいつまでも見える。夜景も素敵なリゾート・ホテル。寝るのがもったいなかった。