トミーさんの井戸掘り勉強塾

[マチャアキJAPAN、2011ネパール、2012ザンジバル、2015カンボジア][2013/Dash島]テレビ出演

井戸掘りの 「イドセン」

井戸掘り30年、個人職人の井戸屋さんです。 時代と共に井戸掘りの機械は随分変わりました。 小さな機械で井戸を掘る昔ながらの井戸屋はほとんど姿を消しました。 このブログより、井戸掘りの理屈を皆さんに提供していきたいと思います。 「自分で井戸が掘りたい」「井戸について知りたい」など、井戸についてご質問のメッセージを頂ければ詳しくお答えいたします。 個人職人の井戸屋さん「イドセン」http://www.idosen.sakura.ne.jp/idosen/

マチャアキJAPANの井戸掘りを理解して欲しい

2014年04月08日 | 日記
マチャアキJAPAN9・ケニアでの人力井戸掘りは断念しました。

井戸職人として現地の人に井戸掘りの技術を教えるため、

何の機械や資材も持たず、ただ経験と知恵だけを持って職人は行くのです。

仕事人に課せられた任務は世界の子供たちのSOSに応えるためです。

ケニアは発展しつつありますが、まだまだ田舎の水事情は行き届かないのが現状です。

私は、この番組で2度井戸掘りに行きました。

2011年に、ネパール・パンチカールスメルナガール村

2012年に、タンザニア・ザンジバル島・ドンゲ村

ネパールは、水は出たものの、細かな砂が網の目をくぐり、

きれいな水を出すことが出来ませんでした。

最終的に、地元の井戸業者によって機械掘りを試みましたが、

結局、それでも井戸は完成できませんでした。

しかし、番組では映しませんでしたが、

我々は、古い丸井戸を掘り下げ、手押しポンプの井戸を設置してきました。

その時に、私のカメラで写したのがこの写真です。



このように、井戸掘りは断念しましたが、きれいな井戸水を確保しました。

翌年のザンジバルでは、人力の井戸掘りは完成する事ができました。



今年、ケニアでは岩盤に阻まれ人力の井戸は完成できませんでした。

ナイロビから井戸業者を呼び、井戸を村人に提供しました。


ここで、私からみなさんにお伝えしたいことがあります。

マチャアキJAPANは、なぜリスクを背負ってまで井戸掘りに力を入れるのか?

私は、あるデレクターの方から聞きました。

この番組の総合演出の方がアフリカに行ったとき、

子供たちが汚いドブ水を飲む姿を見て衝撃が走り、

この時「この子供たちを何とかしてやりたい」と心に決めこの番組を立ち上げたそうです。

その中で、日本には優れた職人たちがたくさんいる。

そんな職人達が現地に出向き、現地にあるものを使って村人を助ける。

それは、ただ作るのではなく、村人たちに職人の知恵を技を教える。

これが、マチャアキJAPANの最大の趣旨なのです。

正直、番組での井戸掘りは成功率が50~60%でしょうか。

井戸掘りが上手く行かなかったときは、ネット上に多くのブーイングが書き込まれます。

私もネパールでの井戸掘り断念には、かなり叩かれました。

「いまどき人力の井戸掘りなんてアフリカ人を馬鹿にしてる」

「失敗を2時間もかけて放送するな!」

「番組にお金かけるくらいなら最初から地元の井戸業者にやらせろ!」

こう言った冷ややかな書き込みには、本当に残念で仕方ありません。

マチャアキJAPANはドラマの演技じゃなのです。

仕事人もスタッフも真剣です。

真剣に取り組んで結果が出せなかった。

これに罵声を浴びせることってどういうことなのでしょう?

ソチのオリンピックで浅田真央ちゃんがメダルが獲れなかった。

期待に応えれなかった真央ちゃんに罵声を浴びせれますか?

意味合いは違うかもしれませんが、

一生懸命やった者に対し、拍手を贈ると言うのが人間の心ではないでしょうか?

仕事人は、村人に井戸掘りの知識を教えた。

水は出せなかったが、村人たちは人力で穴を掘ることを覚えた。

井戸掘りの断念という結果に番組側は機械を持つ業者に井戸掘りを依頼し、

村人や子供たちにきれいな井戸水をプレゼントした。

こんな素晴らしい番組ってありますか?

まさに任務完了ですよ。

「救いようのない番組だ!」って言う人の考え方が理解できません。

マチャアキJAPANは、世界の子どもを救うべく素晴らしい番組です。

ただ支援するだけでなく、知恵と技を教える支援

いつまでもこの番組が続くことを願います。




マチャアキJAPAN 9弾 「ケニア」を見て

2014年04月06日 | 日記
今年はアフリカのケニアでしたね。

結果は井戸業者によって水は確保できました。

番組を見て、いろんな意見はあると思いますが、職人は本当に頑張りました。

人力の井戸掘りの場合、一般的に堀鉄管を打ち込むやり方が主流になります。

日本の伝統的掘削技術である上総掘りは、まさにこの工法なのです。

現在、日本でも上総掘りの機械化であるビームパーカッションの工法で

井戸掘りをしていることは珍しくありません。

この工法をアフリカの大地に人力で立ち向かうことは本当に至難の技なのです。

今回は地表面付近から岩盤が姿を現し、人力の井戸掘りを苦しめました。

実際のパーカッション工法での堀鉄管の重量は1t程あります。

それを動力で連続的に打ち込めば、あれくらいの岩盤は掘り進めます。

しかし、人力ではまず無理と言えます。

仕事人が岩盤を手掘りで砕き3mほど掘ったのはすごい判断です。

そして、少し柔らかくはなったとは言え、

あの堀鉄管から放す金属音は、かなりの硬さであったことは間違いありません。

長い日数の作業の末、5分5分の判断でポンプを取り付けたことには、

人力の限界の考えての決断だったのでしょう。

結果は水量が足りなかった。

あのままもう少し掘り下げれば、と言う意見もあるかと思いますが、

私はやむを得ない事だったと思います。

「業者が掘るなら最初からやれ!」とか、

「救いようのない番組だ!」とか、

必ず冷水をかけるような言葉がネット上に飛び交いますが、

仕事人の技と努力は認めていただきたいものです。

マチャアキJAPANは、ただ単に井戸を提供する番組ではありません。

井戸掘りの技術を村人に提供するために井戸を掘っています。

「井戸を掘ってもその後は放置様態だろうな」っていう書き込みを目にします。

そうですよ。

確かに井戸を完成させた後は放置状態です。

だからこそ、村人がメンテナンスもできるように井戸掘りを教えているのです。

そこがマチャアキJAPANの最大の支援なんですよ。

上手くいっても、上手くいかなくても、

井戸掘りをしたことのない村人に井戸掘りの技術を教えた。

今後、村人たちが「みんなでまた挑戦しよう」と立ち向かってくれれば

必ず自分たちの力で水を出すことが出来ると思います。

我々、井戸職人も、過去に何度も失敗を繰り返した経験があります。

職人であっても完成された人はいません。常に毎日が勉強なのです。

ハイテクな井戸掘り機は、簡単に井戸を掘ることが出来ます。

そんなハイテクな機械は確かに優れものですが、

こうした機械には、地道な井戸職人の技が組み込まれていることを分かってください。

貧困なアフリカの村人には、多額のお金をかけて井戸は掘れません。

だからこそ、ローテクな人力の井戸掘り技術を教えるのです。



今回奮闘された井戸職人、田中さんに心より拍手を贈ります。