世界の子供がSOS・THE☆仕事人バンク「マチャアキJAPAN7」が、
2012年3月18日 日曜日 テレビ朝日系で放送されました。
放送終了に伴い、放送では見られなかった真実をお話したいと思います。
私は、昨年にネパール、今年にザンジバルと2年連続で出演しました。
この「マチャアキJAPAN」は、スタッフがある程度の視察には行きますが、
職人たちは、ぶっつけ本番で立ち向かいます。
井戸掘りの場合でも、あらかじめ地質調査をするとかもありません。
ですから、昨年のネパールのように断念せざるを得ないという事も起こります。
我々井戸職人も、ある程度のデーターが無い地域ではどの深さで水が出るか分りません
もちろん、地形的に「あそこよりもココ!」といった判断は出来ますが、
他国に行って人力で井戸を掘るという事は、至難の技と言っても過言ではありません。
1、場所の設定
「この井戸掘り職人は、水脈も考えず適当に場所を決めてる」
こんな書き込みをしているブログを目にする事があります。
私は、井戸掘り職人である以上、適当に位置を決めてはいませんが、
最終的に村人が独占しないように、個人の土地ではなく、公共の場で掘る事が基本になります。
ネパールは、ジャガイモ畑が広がる所で掘りたかったのですが、村長が村の公共の場であるお寺で掘って欲しいと要望があり、あの山手で井戸掘りをしました。
最終的には、その判断が間違ったのかもしれませんが、ネパールは細かな砂や粘土質の岩盤であり、結局、あの村の地質では、何処を掘っても同じ結果が出たと思います。
つまり、水がある層「帯水層」は細かな砂であり、砂の混じった水しか出ないと言うのが現実であると思います。
今回のザンジバルは、珊瑚が隆起した島です。
高い山から土砂が流されて地層が形成された訳ではありません。
つまり、水脈とか水みちとかではなく、どの深さに水が帯水しているかです。
私が掘ったのは2月です。2月は乾季の時期ですので水位が下がります。
だから、この時期に掘れば1年中水は出る事になります。
私が井戸掘りをしたドンゲ村は、ザンジバルでも3番目に標高が高く、
海抜100mくらいあるそうです。
村長に指定された場所は小学校、やっぱり公共の場所でした。
そんな訳で、井戸を掘る場所も自分勝手に設定できない難しさがあります。
2、我々や村人の待遇
井戸掘り職人として海外でロケをする場合、我々はどんな生活をしているのか?
ホテルで泊まり、毎日村まで車で通う・・・?
とんでもありません。
我々も村で宿泊しています。
古い建物を借りて、簡単に修復した家です。
床はコンクリートでシートを敷き、そこにマットを置いて寝ます。
窓は板の扉、電気も無く、トイレは穴が開いているだけで便器もありません。
もちろん風呂も無く、大きな容器に水が入っており、最小限の水で身体を洗う。
だから、現地の人と同じような生活が30日も40日も続きます。
食事は、現地の村人を雇い作ってもらいます。
だから、日本食ではなく現地の食事です。
ほとんどがスープ類で、毎日同じような味のものを食べることが多く辛いです。
仕事を手伝う村人は、無償で手伝っています。
1日いくらというように賃金は払っていません。
時々、感謝の意味でちょっとした食事を振舞う事がありますが、
決して高級料理ではありません。
3、資材の調達
マチャキJAPANの鉄則である「現地で資材を調達」
これは、まさにきちんと守られています。
多少の、細かな金具類は少し持って行きますが、すべて現地で調達します。
ネパールでもザンジバルでも街に行けばほとんどの物が売っています。
エンジンでもモーターでも売っています。
井戸水を汲み上げる電動ポンプも売っています。
だったら、なぜ人力に拘るのか?
街と村では貧富の差が大きいのです。
街で商売している人は、1日に何万円も稼ぎます。
しかし、貧乏な村人は1日働いても100円程度です。
ほんとうに考えられない貧富の差なんですよね。
日本では考えられない海外での現実に驚きます。
そこに「マチャキJAPAN」の意味があるんですよね。
しかし、現実問題として私が思うのは、
現地で調達した資材であっても、それをすべて購入するには何万円もかかります。
堀鉄管やワイヤーロープ、滑車や道具類など、結構な金額です。
村人が1年働いても買える額ではありません。
でも、一度買って提供しておけば壊れるような物はほとんど無く、
例え丸太が折れたとしても、村人は何とか工夫して修理すると思います。
また、井戸掘りの技術をビジネス化すれば、お金儲けにもつながり
資材の購入も出来るようになると思います。
ほんとうに、そう願いたいですね。
4、期待と不安
村人に無償で手伝ってもらう。
と言うより、村人に井戸掘りの技術をに教える。
う~ん・・・ここに難しさがあります。
「みんなで井戸を掘るんだ!」・・・と、村人が団結します。
しかし、人力の井戸掘りは長い日数が掛かります。
テレビでは2~3のハプニングを映していますが、
実際には、次から次にハプニングが起こりました。
堀鉄管が何度抜けなくなったか・・・
ワイヤーが切れた。ボルトが折れた。堀鉄管を落とした。
直径16cmの太さで穴を掘るわけですから、相当な無理がかかっています。
また、深さも半端ではありません。
村人も日に日に疲れを増してきました。
放送上、30mを超えると手押しポンプでは水が上がらないと説明しています。
確かに手押しポンプには限界がありますが、
地上式ピストンのポンプは深くは吸い上げれません。
しかし、今回のポンプは水中ピストン式の手押しポンプなので
40m位下からでも水を上げて来れます。
このブログを見た人にだけ教えますが、ザンジバルの井戸は実際に38.5mまで掘りました。
人力で太さ16cm、深さ38.5mと言うのは驚きの数字なんですよ。
私自身ですら、ビックリする井戸掘りだったんです。
「いつになったら水はでるんだ?」
私も、村人も、スタッフも、イライラしたり気を落ち着かせたりの日々でした。
本当に、期待と不安が交差していました。
ここで、改めて説明しますが、
38.5m掘った井戸を、30mで完成させたと放送してますが、
嘘とか、隠し事ではなく、ポンプの性能上の問題であり、
それを説明すると、変に難しくなるので30mが限界と放送したと思います。
でも、私的には38.5mまで掘ったのに、30mで完成とは、
ちょっと腑に落ちない気持ちも正直ありました。
そして、もっと凄い話があります。
この井戸は、ドンゲの小学校の敷地に掘りました。
実は、この場所にある国の支援団体が機械式の井戸掘りをやりに来た事があるのです。
ところが、深すぎて無理だと言う事で断念したと言うのです。
機械でも断念した場所で、我々は人力で井戸を完成させました。
これには、ザンジバルの「水省」(公的役所)の人達も驚きを隠せませんでした。
ほんとに井戸を掘りあげた村人達は勲章ものですね。
5、マチャアキJAPANとは・・・
今の時代、やらせの番組は減りました。
人に感動を与える事だけを考えれば、どんなトリックを使ってでも
編集でうまいこと繋げば、人に感動を与える事ができるでしょう。
でも、それでは本物ではありませんよね。
マチャアキJAPANは、結果が出せなかったことは失敗とお詫びします。
昨年のネパールの井戸掘りも
「皆様の期待に添えなかった事を深くお詫びいたします」と最後に言いました。
通常、我々が日本で井戸掘りをして水が出なかった場合は失敗と言いません。
井戸掘りの失敗とは、掘っている堀鉄管が埋まって抜けないとか、
掘削段階で修復不能の事故を起こした時が失敗なのです。
でも、失敗と言う説明でイイのかもしれませんね。
なぜなら、世界の子供のSOSに応えられなかったのですから・・・
それゆえに、今回のザンジバルでの井戸掘りは大成功だったのでしょう。
でもね~・・・自分なりにはネパールのほうが職人技をう~んと発揮してたと思うよ。
長く書き込みましたが、
マチャアキJAPANは、本当に世界の子供のSOSに応えるべき素晴らしい番組です。
逆に言えば、仕事人泣かせの番組かな?(笑)
最後に、
お世話になったスタッフ、関係者の皆様に感謝致します。