トミーさんの井戸掘り勉強塾

[マチャアキJAPAN、2011ネパール、2012ザンジバル、2015カンボジア][2013/Dash島]テレビ出演

井戸掘りの 「イドセン」

井戸掘り30年、個人職人の井戸屋さんです。 時代と共に井戸掘りの機械は随分変わりました。 小さな機械で井戸を掘る昔ながらの井戸屋はほとんど姿を消しました。 このブログより、井戸掘りの理屈を皆さんに提供していきたいと思います。 「自分で井戸が掘りたい」「井戸について知りたい」など、井戸についてご質問のメッセージを頂ければ詳しくお答えいたします。 個人職人の井戸屋さん「イドセン」http://www.idosen.sakura.ne.jp/idosen/

マチャアキJAPAN6 ネパールの井戸掘り 放送を終えて

2011年03月31日 | 日記

マチャキJAPAN6 世界の子供がSOS 仕事人バンク
テレビ朝日系列 2011・3.27  夜7時から

今回、ネパールに仕事人として井戸掘りに行ってきました。
1月15日にテレビ局から電話が入り、人力で井戸を掘って欲しいと・・・
昭和56年春より、地質調査(ボーリング)の仕事を始めて30年が経ちます。
もちろん、井戸も掘っていたわけで、今までに試験用の井戸も含めて1000本以上の
井戸を仕上げてきたと思います。

4年ほど前に仕事の景気が悪化し、従業員や下請けなどすべて居なくなり
会社経営をやめ、個人の井戸屋として細々やっています。

日本で井戸を掘る場合は、回転式のボーリングマシーンを使用します。
今回、マチャアキJAPAN の依頼は、人力と言う決まりがありました。
30年の経験を生かし、パーカッション(打撃式)の方法を選択しました。

2月9日、何の資材も持たずにネパールへ飛び立ちました。
ただ、井戸を掘る技術だけを持って・・・

ネパール、パンチカール村に着いたのは翌日
のどかではあるが、我々の子供時代を思わすほど自給自足の村でした。
村の所々に掘りぬき井戸はあるのですが、どの井戸も白く濁っています。
これは、地盤の細かな粒子が濁り水の原因と直感しました。

番組の中で、パールバディーという女の子が濁り水を汲んでいた井戸は
井戸に溜まる水も少なく、バケツを落として汲み上げるので、特に濁りが酷くなります

さて、いよいよ井戸掘りの場所を決めることになりました。
井戸を掘るなら、広大な畑の中が一番条件が良いと思っていました。
ところが、村長さんが「畑は個人の敷地であり、後々揉め事が起こる」と・・・
個人の敷地で掘ると、後々「この井戸はオレの井戸だ」と独占する可能性がある。
ということで、公共の場所を掘る事になり、あの山手の場所に決まったのです。

ここでは水が出ても水量が足りないのではと思いました。
心の中で、「これは難しい」思いました。
機械も無ければ、資材も無い。
現地調達で集めた物は使いにくいものばかり、鉄工所には旋盤機械も無い。
ネパールの硬い地盤を掘るのは、予想もしない至難の技でした。

肥った体で人力の井戸掘りは、私にとってかなりの負担でした。
放送が始まったとき、「ハアハア」と息の音が聞えたのには我ながら恥ずかしかった
でも、ロケの終わり頃は15キロも体重が減り、息の音が聞えませんでした。
43日で15キロのダイエットは凄いなと思いました。

さて、掘削ですが、いろいろ掘り鉄管を改造しながら掘削しました。
うまく行く時、まったく進まない時、いろいろありました。
やがて、比較的柔らかい砂層に達した時、地下水が出始めました。
その水は、ある程度の水量が確保できる物でした。
ところが、砂の粒子が異様に細かく水と一緒に出てきます。
砂を止めると、水まで止まってしまいます。
この砂を止めるのに何日も挑戦しました。
赤土のネバ水を入れたり、牛のウンコまで使ったりもしました。

日本で掘るならどんな資材でも揃う。だけど、この村の現状では無理でした。
テレビの企画で行ったネパール。私の一存で何でも決められるものでもありません。
地盤は硬い岩盤にあたりなかなか掘れない。
どこまでも崩れ出てくる細かな砂。
スタッフとも言葉も交わさなくなるほど人間関係もぎくしゃくしてくる。

テレビだから見えない所でヤラセと言うこともありません。
本当に過酷な43日間でした。

放送は、断念と言う結末で終わりました。

しかし、パールバディーが汲んでいた濁り水の丸井戸・・・
写真のように、井戸を深く掘り下げ、綺麗な水の確保。
そして、手押しポンプをつけました。

その井戸にたくさんの人が水を汲みに来ています。
そして、井戸周りの排水も水路を作りブロックを積んだりして
きれいな水汲み場が完成しました。

ただ、この状況はテレビでは一切映っていません。
井戸を掘りにいくのが趣旨である事なので、この場面は映さなかったのです。

でも、テレビには映る事が無かったけど、この村の人たちは喜んでいると思う。
3つある丸井戸の中で、ゴミが浮いて使用してなかった井戸を一番綺麗にしてあげた
だから、私自身は村人から「ありがとう」バンネバー(ネパール語)と、
皆から感謝された。

テレビの放送で、本当に映してもらいたかった丸井戸。

きっと今日も、この井戸の周りで水を汲みに来ている女性達の笑い声がしているだろう

私は、やるだけの事はやったと自分自身に褒めたい。