【転載開始】津波第二波が「ドル暴落」を生み出すリスク
植草一秀の『知られざる真実』http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-86c5.html
米国の2009会計年度(2008年10月~2009年9月)の財政赤字が激増する。米国議会予算局(CBO)は1月7日、米国の2009会計年度の財政赤字が1.2兆ドル=約110兆円に達する見通しを発表した。オバマ米国次期大統領は1月6日、記者団に対して米国の財政赤字が仮に景気が回復しても、数年間は1兆ドル規模の水準で推移する見通しを示した。
米国の08会計年度の財政赤字は4548億ドルで、09会計年度は一気に2倍以上に拡大する。09会計年度の財政赤字のGDP比は8.3%に達し、過去最悪を更新する。
CBOが7日に発表した財政赤字見通しは、オバマ次期米大統領が準備中の景気対策を反映していない。実際の赤字額はさらに膨らむ。
オバマ次期大統領は2年間で7750億ドル(約72兆円)規模の景気対策を策定しており、09年度の財政赤字は1.5-1.6兆ドル(約150兆円)に達することになる。
問 題はこの赤字をどのようにファイナンスするかだ。米国は2007年に7300億ドルの経常収支赤字を計上している。米国国内の個人、法人、政府を合算して 7300億ドルの赤字を計上していることを意味する。09年度は財政部門の赤字が4500億ドルから一気に1.5兆ドルに拡大する。
その大半を海外からの資本流入に頼らなければならないだろう。FRBが不足する財政赤字をマネーの供給でファイナンスするなら、過剰なドル供給はドルの信認を揺るがすことになる。
二つの大きな問題が浮上する。
第一は、政府部門の巨大な資金調達が米国の長期金利を急激に引き上げるリスクを発生させること。
第二は、米国の巨大な財政赤字の発生がドルの先行き下落期待を急激に高めること。
米国の10年国債利回りは昨年6月に5.3%の水準にあった。原油価格が1バレル=147ドルに達する過程で、FRBによる金利引き上げ観測が強まったためだ。
ところが、その後、原油価格が急落し、金融危機深刻化を背景にFRBが大幅利下げに動き、同時に景気悪化が加速したため、米国10年国債利回りは2.0%にまで低下した。
為替レートは2000年から2008年央まで、米ドルが日本円以外の主要通貨に対して暴落していたため、昨年央以降、米ドルは日本円以外の主要通貨に対して反動の上昇を示した。
しかし、今後、米ドルの信認が低下し、米国に対する資本流入が縮小すると、米国ではドル安進行の下で長期金利上昇が発生する可能性がある。景気後退下の長期金利上昇は米国経済にさらに下方圧力を加えることになるため、米国株価はさらに下落圧力を受けることになる。
これが「ドル暴落シナリオ」であり、米国金融市場は株安・債券安・通貨安の「トリプル安」に直面することになる。
日本は小泉竹中政治の巨大な「負の遺産」の処理に苦闘することになる。竹中平蔵氏が金融相に就任して以降、日本政府は巨額のドル買い為替介入を実施して、現在、日本の外貨準備残高は1兆ドルに達している。
ドルの下落は日本の外貨準備の時価評価の減少を意味する。1ドル=95円時点で、すでに外貨準備の為替差損は24兆円に達したことが明らかにされている。財政が逼迫しているなかで、24兆円の損失が日本国民に対するどれだけの背任行為であるか。計り知れないものがある。
2005年から2008年にかけてのドル堅調時に、日本政府はドル資産残高を大幅に圧縮しておくべきだった。為替損失を計上せずに、外貨準備残高を20億ドル程度に圧縮することは十分に可能だった。
→③に続く