高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

10月28日 東京国際映画祭

2005-11-01 | 千駄ヶ谷日記
10時と10時20分に、アシスタントの悠子ちゃんが下見していた服を渋谷と青山で大急ぎでチェックして、11時前に六本木ヒルズへ。
東京国際映画祭にさそわれて、「ドジョウも魚である」という中国映画を観るためだ。

11時20分の上映時間までちょっとだけ時間があったので、バージン・シネマの前にあるロブションのコーヒーとクロワッサンを買って、お腹を整える。

映画の舞台は現在、オリンピック開催国などのため、北京の街中で行われている大規模な工事現場に集まった出稼ぎ農民たちの話。紫禁城を再建するための現場での砂埃と泥んこの毎日。そのなかに厳然と光る命の尊さと儚さ。
「人間てみんなこうやって生きているんだよね」と思わず自分に言い聞かせてしまう映画だった。
映画のあと、主演男優とのティーチインがあった。
映画の熱演とうって変わって、小声で静かな話しぶりが心に響く。
中国語を通訳のかたが日本語に直し、司会者が日本語と英語で解説する。3ヶ国語がうまくチェーンのように繋がって、まさに国際的。

そうそうこの空気、味わったことがある。
3年前、本橋成一監督の「アレクセイと泉」 で映画のスタッフ10人ぐらいとベルリン映画祭に行ったとき、上映4回目がうわさを呼んで集まった観客で超満員になった。
スタンディング・オベーションのあと、本橋監督を囲んでティーチインがあったのだった。
ベルリンでは最初、自分達で、会場のいちばんいい場所を探してポスターを貼って歩いた。
上映するごとに観客が増えて、4回目には立ち見がでるほどの大盛況となり、賞もふたつもらった。
小さなホテルでは、アジアの若い監督たちと仲良くなったけど、彼らの映画をみる時間がないまま、私たちはエコノミーのチケットで帰ってきた。
あの時の高揚感を思い出した。

映画をいっしょに観た俳優さんたちと「堀井」で新そばをいただいた。
先週まで北京にいたという男優さんは北京の風景があまりにもリアルで余計胸にきたという。
そんな興奮と感動を反芻しながら、そのあと夕方までひとり銀座、馬喰町、神田と生地捜しに歩く。
神田の出版社で別の打ち合わせをして、深夜生地見本をみつつさらに衣装制作の打ち合わせ。
いろんな緊張と興奮で、頭の中はパンパンだし、足は棒のようになった。
明日はゲルマニウム温浴(足湯)に行こうっと。

写真 (撮影・Yacco)「ドジョウも魚である」の会場で、主演男優のニー・ターホン。映画は何という賞か忘れたけど、賞をもらったそうで、よかった、よかった。