高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

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8月6日 梅干・梅ジュース

2005-08-15 | 千駄ヶ谷日記
朝5時から、梅干作りの最終作業をする。
梅を壺から出して、並べる。梅酢も壺ごと日光にあてる。使わなくなった重石やふたを洗って干す。家の周りを掃いて、水を打つ。ベランダの植物に水をやる。一日に何度かこの梅たちを直射日光の下でひっくり返す。小さいざるは、自家製の干し椎茸。
梅ジュースは好評で、今年のは甘くなくさっぱりしてて、我ながらうまくできたとおもう。
このお天気、それだけじゃもったいない。またまた家中の布団を干し洗濯に精を出す。
と、ここまでは、去年のこの時期の私とまったく同じ一日だった。

一日中の農婦活動ののち、お風呂で汗を流して、お隣の星川さんと東中野のポレポレ坐へ。

8時より「チベットチベット」を観る。
在日3世の金森太郎(金昇龍)さんが、ビデオカメラを回しながら世界中を放浪しつつ捉えたチベット問題。ダライラマに何度も手紙を書き、10日間の同伴撮影、インタビューを許された。
どうやってこれだけの素材を無事日本に持ち帰れたのか、と思う貴重な映像がいっぱいだが、たった一人の青春の旅行者が旅のなかで、意識が変わって行く様がにじみ出てくる。素晴らしい映画だ。

上映の後、3回にわたって、トークショーがあり、最初は金森さんと、宮台真司さん(社会学者)、2回目は森達也さん(映画監督・作家)と。
そのなかで、私を驚かせたのは、金森さんの今どきの若者らしいボケッとした感じだった。
映画が素晴らしかったゆえに、その世間知らず的なボケ振りがかっこよく思えた。それぞれのゲストの話はとても面白く、金森さんをけなすでもなく、
たてるでもなく、話は進む。本人とゲスト、明らかに言語体系の違う人たちが話すおもしろさに私はひきこまれていった。

ゆったりとした休憩時間を経て、第3回目のトークは、田口ランディさん、
本橋誠一さんで、司会が今泉清保さん。
この中で、金森さんは、相変わらずのいまどきペースで「僕は本を読んだことがない。新潮文庫の百冊だって、まあ、そのうちの20冊ぐらいは読んだかなー」などといい、これからも本は読まないようなことをほのめかす。
そこで、ランディさんの、キビシイ一撃。
「あんたねえ、本を20冊しか読んだことがないって、自慢するな。それはもうそれで終わりってことよ。あんたがそれだけのことでいいんだったらそこに留まっていればいいよ。本を読むこと、世界を広げること、それは大事な事です。(私はそのことに、命かけてんだから、みたいなことも言ったような気がする)」
私は前2回の対談の快楽に、ざぶっと水をかけられて、(多分彼といっしょにと言いたいが)恐縮した。
それにしても、この映画のためにこのセッティングをして、ゲストを呼んで人々を集めたはランデイさんなのだ。
ランデイさんは熱い人だとつくづく思った。

朝4時になり、友人と私は、始発を待たずタクシーで帰った。
触発された精神活動の高揚はここまで。5時の終了までもうちょっとだったけど、昨日の昼間の労働生活の疲れに打ち負かされる時が来たわけでした。

写真 (撮影・飯島悠子) この写真、去年の今頃のもの。 風景は今年も変わらないけど、今年はこの庭の大家さんがいない。庭は少し荒れ、ノラ猫親子にのっとられた。