高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

8月20日、24日 青春の残照

2005-08-27 | 千駄ヶ谷日記
20日 青山を歩く。明日は撮影があり、もうほぼ大丈夫なんだけど、もしかしたら、とんでもない発見があるかもしれない、みたいな気持ちにかられて、その気持ちを収めるためもあって、めぼしいところをのぞいて歩く。
先端の店はもうすっかり秋だ。
クラクラっとしそうな眩しさに包まれた灼熱の歩道から店内に入ると、そこに新しい秋がある。
こういう瞬間、いつもながら心が動く。
「LOVELESS」という店で、私の秋を見つけた。
赤いタータンチェックのシャツジャケット。背中に小さいスカル(ガイコツ)がある。黒っぽいチェックの厚手のニットの裾にゴールドの鋲が並ぶ。
うーん、この上等なパンクの味付け、私にとっては究極ですよ。

ギャルソンを眺め、イッセイに寄る。
一階では50代ぐらいのご夫婦であろうカップルが秋の服を選んでいる。男性が何着かジャケットを試着するのを椅子に腰を下ろした女性がじっと眺めている。この方々は、季節のごく初めにさっさとそのシーズンの服を選んでしまうのだろう。
地下では、外人のカップルで同じ光景があった。海外から来ているファッション関係者かも知れない。
ここで、明日の撮影用に別バージョンとなりそうなジャケットを見つけて購入。

ズッカの二階にあるカフェで昼食。
アシスタントの悠子ちゃんと窓際に席につきメニューを広げる。
悠子ちゃんの向こうにサロンのような部屋が見える。そこでブティックの店員さんたちがランチを取っている。
私はそのシーンから目が放せない。高い天井、広いガラスを通して入ってくる光りが20代であろう若い男女の姿をやわらかく輝かせている。
ご本人達は無心だが、そこにあるのは青春の光り。
私も嘗てああいうテイストの服を着て、無心に生きていた、、、
こうして街を移動していると、なんということもない光景に心を奪われることがある。

いつだったが、街を歩いているふたりの老女の姿に映画「八月の鯨」のシーンを連想した。
それは80代になった自分を見つめることでもあった。
今はこうして20代の自分を眺めている。
なんだかそれは小磯良平の絵を眺めているような、そんな感じだった。

24日
代官山で「KIMONO the ART」というパーティがあった。
もと博報堂にいらした丸山さんがプロデュースした催しで、大盛会だった。
山口小夜子さん、スタイリストの前田みのるさんとおしゃべりする。
パリ在住のイラストレイター、マリィ・カイユの振袖を着た野宮真貴さんのライブがはじまる。
彼女が歌い始めたとたん、たちまちみんながデジカメやケイタイをかざしはじめたけど、私は呆然と見つめるのみ。
大胆なヘア、メイク、スワロスキーがちりばめられた振袖、、、あー、いまやデジカメは必須用品だったわ。それで、一枚ポラをもらって帰ったけど、ホントはこれよりも100倍可愛かった。