もう一つの 昭和・私の記憶

『 昭和・私の記憶 』 の、続編
吾生涯を物語る

ガハハ・・・ 至福の瞬間 (とき)

2021年06月06日 | ガハハ・・・1996~2006

『 ガハハ・・・ 』
親分が
ヘラブナを釣り上げた際に発する
至福の笑い声である


目次
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序・そもそも
「 釣りをしたい 」
小学校4年生・10才の息子が云った
息子はカナヅチ
心配で心配で とても 一人で川に遣ることは出来ない
幼い頃より 釣りが好きだった私
それならと
息子と一緒に 私も行くことにしたのである

物語の始まり・親分との出遭い
そんな私の様子
遠目で観ていたのが 斯の 『変なオッサン』 であった
ゴールデンウィーク
「 (斜面) 直下に坐って しんどいやろ
 本気で 釣り するんなら  道具一式やるデ
 どないや? (本気で) するか?」
・・と 声をかけて呉れたのである
大人 ( おとな )
常連の心構え といい 名人技 といい
それはもう 感動であった
素晴らしいものを見せて貰った私
名人の 心意気を肝に銘じ
アイの日の釣り  止めることにしたのである
親分の真骨頂
「 後から来て 何スンネン 」
「 後から来たもんに  イカレとるやないか 」
「 タマタマや 」
「 あんたも 頑張らんかいな 」
「 腕は エエんやけど (今日は) 魚がワルい
   チェッ !!」
・・親分の口から
昭和30年代のギャクが飛出し
皆で もう大笑い
はくれんヤ はくれんヤ
「 はくれん ヤ 」
彼の大きな声が 14番中に轟く
竿は大きく しなっている
確かに 大物には間違いない
周りの
皆が注目して観ている
昨日は何枚
「 昨日 (土曜日) は 良かったでェ 」
「 ほんまかいや  で 何枚釣った ? 」
「 8枚ヤ 」
「 ホウ 8枚も あげたんかい 」
「 おう・・・ヘラが6枚 マブが2枚 後、鯉が3本に ニゴイ 一匹  ワタコ (わたか) が・・・」
「 フーン  そりゃ良かったなァ」
「 38.5 (cm) の オオスケ が 2枚上ったでェ 」
「 あと 36 が 3枚・・テノヒラが・・枚・・」
傘がない
あくる日
「 そやろ、火傷したやろ 」
「 あかん  云うたったのに  あんた聞かんのやから 」
「 自業自得や 」
・・
と 親分
「 ハナチャン この傘ヤルワ 」
・・

使い古しではあるが
釣り用傘ワンセットをプレゼントして呉れたのである
雨がふる・・のに
「 雨が降るのに ようやる 」
「 アホ ちゃうか 」
・・
と 散歩のギャラリー
すると
親分 いつも 名調子で応える
「 この雨ん中  わざわざ 釣りを見に来る アホも居(オ) る 」
「 どっちが アホやねん 」
「 わしら アホ とちゃうで 」
「  キチガイじゃ ガハハ・・」
盆も正月もあるかい
せっかくの夏休み
誰がじっとして居られるものか
15日とあらば
一等場所を自由自在に選べるのである
「 そんな  絶好なるこの機会を逃してなるものか 」
・・と 考える輩(ヤカラ)も存る
暑さでひっくりかえった親分
「おはよう」
「なにしてんねん」
なにしてんねん とは なにゆうてんねん
あんたを 待っていたのであろうが

どっちもドッチ・理窟はつけても
「 オッサン の 河か ! 」
・・と なまいき に
少年達
親分の ウキ に めがけ  石を投げ始めた
退屈の鬱憤をここで発散させているのである
どっちも ドッチ・ルール守らんかい
「 誰しも釣り したいやろ 」
「 他の釣り場みたいに 此処で釣りしたらあかんとは 云うとらへんのんや 」
「 (釣り場の台が) 空いとるんや 使こうたらええ 」
(但し)
「  此処には 此処のルールちゅうもんが あるんや 」
「 愉しゅう 釣り したいやろ 」
「 そやったら ルール守らんかい 」
「 それだけの事や 」
花よりダンゴ
「 倉さん マトモやったなあ 」
「 オウ 」
「 エエモン 拝ましてもろたな 」
「 オウ 」
「 あれ見たら ヘラの顔  もう見んでもエエナ」
「 ウン ヘラの顔  もう見んでもエエ 」
「 ガハハ・・ 」
二人の声が弾んでいる
サイナラ鯉さん
♪ さいなら  こいさん 
 しばしのわかれ  ああ・・ ♪
私が鯉を釣る度に口遊むこの歌
唄わば
赤川鉄橋を一人ゴチ 喋りもって 
帰って行った親分の姿
・・・想い出す
ガハハ・・・
「 ガハハ・・ 」
親分の至福の声が聞えてくる
親分 上(カミ)・ドンヅキで一人  『 ポンポン 』 釣り上げている
親分に腕自慢したギャラリー
「 なんや お前
   他人(ヒト) の 釣り見て 文句ばっかり云いやがって
   ワシは 25年 この釣り しとるんじゃ 」
「 能書き たれとらんと 竿もって来い
   竿持つて来て ワシの横で釣って見せてみい 」
風に乗って来ずとも 充分聞える親分の大きな声である
「 ワシに 喧嘩 売りに ここへ来たんか
   喧嘩なら いつでも 買うたるぞー 」
・・と 烈火の如く 怒りだしたのである
何お― !!
「 何枚 あがった?」
その詞を待っていた親分
いかにも 自慢げに 鼻高高に 而も威勢よく
「 4枚や 」
「 そんで あんたワ?」
「 8枚や 」
親分の顔から笑顔が退(ノ) いた
「 ホウ ( それだけあげたら ) エエヤンケー 」
上と下・・必ずしも 喰い が一致しない
「 今日は 下(シモ) の方が 良かったんやなァ 」
「 フッ  嘘や 噓や 」
「 ほんまは 3枚や 」
「 なんや ホラ かいな 」
「 そうや ホラ や 」
「 あんたの真似 したんや 」
ここで 皆が ドッと大爆笑
往生際のわるいヤツ
まもなく5時になります
5時になりますと  公園のゲートは締まります
お車の方はお急ぎ下さい・・・
夕方4時半になると 
こうして
公園のスピーカーから アナウンスが流れる

竿より 長いタマ
「 このタマに餌入れて 待っとったら ヘラ すくえるで 」
「 竿 いらんで 」・・と 皮肉った
すると 親分
「 そやな、竿いらんな 」
「 竿より長いタマ 持ってどないすんねん 」
「 ガハハ・・」
なんやオッサン 他人の釣った分 勘定するんかい
「 今日は何枚 あげた?」
・・と 私の問いかけに
「 マブ(まぶな) が 2枚  アイ(あいべら=まぶな×へらぶな) が 2枚 」
「 へら(へらぶな) が 4枚 」
「 クラさんに替わってやったのが 1枚 」
「 9枚や 」
これに
隣の釣り人・藤さん
驚いた
「何やオッサン! 」
「他人(ヒト)の釣った分も 勘定するんかい 」
コイさんには もう懲り懲り
帰宅して娘に 70㎝ の大きな鯉を 如何に釣りあげたかを 自慢すると
「 70 ㎝ の大きさって どのくらいナン?」
「 おとうさんの 足の長さ と おなじくらいャ 」
「 フーン ・・じゃぁ たいしたことないヤン」
・・だと
クリスマスプレゼント
クリスマスイブ
吾家族は シャンパンで乾杯した
翌朝
気の抜けた残りもんの シャンパンを見て
「 (エサを溶く) 水の代りに使用したら・・ 」
・・そう 閃いた
氷が張った日の物語
朝 目が覚めたら 氷 張っとんねん
釣りに来るもん 誰もおるかい
ガハハ・・


中入り
究極の暇つぶし

かっこう を つけて
言うと
人生そのものが
暇つぶし
なのかも知れない・・なあ

ナンヤ自慢しに来たんかいな
ウップルーッ
しばれるねえ
冬は寒いから 釣れないんだよね
ナニッ 釣れたァ?
大根かえせ
淀川・城北ワンドの百姓(?)さん
「 わし等が 一生懸命に作った野菜  泥棒して持って行きよる 」
・・と 彼等は そう嘆いているそうな
そして
「 悪い奴等が居る! わしの大根返せ!」
・・と 息巻いている
のだ そうな

お池にはまって さあたいへん
ドッボーン
・・と
大きな音がしたであろう・・が 私には聞えなかった
頭は水の中
落ちたのだ
親分と巡礼した二代目
「 また  アホ が一人 増えよった 」
「 ワシ等 アホを通り越して キチガイ やけどな 」
「 ガハハ・・ 」
彼をサカナにして  親分 頗る機嫌が良い
「 あの場所  空けといたろなぁ・・」
・・と
親分 新しい仲間の誕生と 彼を喜んで迎えたのである
友遠方より来たる
「 ドナイ?」
「 オー 珍しい顔やないけ  生きとったんか?」
「 長いこと顔見んから 心配しとったんど」
「 おおきに おおきに 元気でおま 」
「 で あがっとるんか?」
「 あかん  ヘラ ニッチョ(日曜日)や 居らん 」
「 ジャコ 動かん のんや 」
「 動かんジャコ 釣るンが プロや、ガハハ・・」
カモ釣って どないすんねん
「 かわいそうな事をした 」
・・と 悔やんでいた私に
隣で  一部始終を 見ていた親分
「 カモ釣って どないすんねん」
「 ガハハ・・」
・・だと
ヘラ一枚に命かけて どないすんねん
合わせて シマッタ
釣ったは 嬉しい・・・さりとて 雷も恐い
釣り上げるには竿を立てねばならぬ
どうすりゃいいのさ・・思案橋
竿を横に傾けて引っ張るも
やはり タマに納める瞬間は どうしても竿を立てねばならない
「 立てねばならぬ 妙心殿 」
勝利の女神は意地悪
「 ホソでの顔なじみが たまには並んで釣りをしたいネ 」
「 やろうよ ハナチャン 」
「 良いですね やりましょう 」
・・と 二つ返事
my スタイル
『 何枚釣った 』
・・かと 言うよりも
如何に半日を 機嫌よく過せたか
こちらを 大切にして 釣りを楽しんでいる
そういう人も存るのである
ミミズもカエルも みなごめん
「 チリ紙は いっつも持っとくんやで 」
「 イツ・ドコデ 使うか判からんからな 」

師匠である親分の訓えである
暑いのに ようやるわ
これから
釣りを終えた私は  家に帰ってシャワーを浴びる
昼食をとって  冷房の効いた涼しい部屋で暫らく昼寝をするのである
へらぶなを釣る夢を見ながら・・
方や 親分
私と入れ替わりに 釣りを始めるのである
選りにも選って 真夏の炎天下
・・・
「暑いのに ようやるワ」
へぇーっ
偶々 通りかかった散歩の人  私の後ろで立止った
気まぐれに 私の釣りを見ている
「 アタッタ!」
反射的に 手がうごく
「 ノッタ 」
型の良い 尺上があがった
「 今、アタリ 有った?」
「 有りましたよ 」
「 微妙なアタリ なんやなぁ  ここからやと 判らんかったわ 」
「 ヘラ(のアタリ) は そんなんかいな 」
「 ヘェーッ 」
ひとはだ 脱いだのは親分
親分
鎌を口に咥え、さっそうと 泳いで行く
それは 鬼平犯科帳・鬼平こと 長谷川平蔵の捕物劇中に視る
颯爽と 十手を口に咥え刀を抜く 名シーンの如く
なんと恰好が良かったことであらうか
天狗の鼻 高々に
昼食を済ませると
眠気がきて  ウトウト
決って 釣りの夢を見る
その シーンは ウキ に アタリ
 !! 
夢の中で アタリ に合わせている
その手の動きで目が覚めるのである
最終回 宴の後
親分
どこでどうしているのやら・・
今や
「 ガハハ・・ 」
聞くことは無い
♪ どこへいったのよー
戻ってきてよ ネエあんたー ♪
アンコール・なめとったら アカンド

ホラは吹く 
大声で お喋りである
騒がしい  喧しい
挙句に大声で以て歌まで唄う
柄は悪いし 口は悪い  だれかれと見境なく 喧嘩はする
もう 支離滅裂なオッサンである
『 吾は ヘラブナ釣り師 』 と プライドだけ人一倍 高いから 始末に悪い
周りの者からしたら それはもう 困ったものなのである
なれど 憎めない愛嬌があり
何と言っても 面倒見の良い親分肌である
是も彼も 親分の為人(ヒトトナリ)               
悪い事も
良い事も
全部ひっくるめて  これぞ親分
それでいい
私は
こういう 変なオッサン
大好きである

斯の物語は
倅と共に釣りを始めた1995年から 親分が退場する2006年までの11年間の想い出を
現在進行形の物語として描いたもの
フト 想い出した時に 想うが侭に 作文 したのである
従って  何年の 何月の 何日の 出来事 かは 順序だってはいない
それは  さほど 大切でないのである

すべて  1996年~2006年 の 所謂・『 あの頃 』 の事・・それで良いと考えた

私の生涯に於て
斯の 『 親分 』・・との 出逢いは 全く稀有なケース
倅が 「 釣りをしたい 」・・と 言い出さなければ 無かったのであるから
一期一会の
人と人との出逢い
人生に於て これは 當に 『 宝 』
『 縁(エニシ) 』・・とは
異なもの味なもの
・・である
コメント

アンコール・なめとったら アカンド

2021年06月06日 | ガハハ・・・1996~2006

よせばいいのに
11月の末
そろそろ 葦原側に冬用の釣り場を開拓せねばと
私と風呂迫さんとで
ホソ・上(カミ)の ドンヅキ近くの場所を選んで
枯れた葦を刈り取って 二人分の釣り場をこしらえたのである
「 親分にも入ってもらおう 」・・そう想った

次の土曜日
親分は まだかと  ホソ・上で待つも親分 いっこうに来ない
何処で釣りをするにしても
必ず 一度は顔は見せるのに  今日に限って姿を見せないのだ
おかしいな・・と 想い  ホソ・下を覗くと
親分
一等場所の釣り場に唯一人 腰を据えているではないか
普段は一等場所を敬遠する親分である
クリーク越しに 私の顔を見るや
「 おはよう 偶々あいとったんや  今日は此処や 」
「 おはようさん 」
「 一緒に這入ろう想て カミに 釣り場作りましたんで 」
「 ほんまかいや  そりゃ ごくろうさん ごくろうさん 」
「 今度 入らして貰うわ 」
「 あんたも  此処(親分の隣り)で やりなはれ 」
・・との 親分の誘いに乗り
私は  隣りに腰を据えたのである
 
下の一等場所
コンクリートの斜面にへばりついた浮草が大きくせり出して、
ヘラには恰好の隠れ場所になっている

寒い冬場は、この浮草の下に居付くヘラを釣るのである
大きい浮草の為河巾は狭く、竿はせいぜい12尺~15尺
早いもん勝がルールのホソ
従って滅多に有り付けない、人気のある釣り場であった

私は 親分と同じく 15尺の竿 を出した
なにせ 普段なら 入りたくとも 入れない 人気の一等場所
「 イザ 釣らん 」・・と 意気込んだ
ところが
しばらくしたものの  釣果がない
偶にアタリ はあるが  釣り上げるまでには至らないのである
時合が来ないまま  昼時になった
「 腹へったな 」
「 今日は弁当持って来てないんで これで帰りますワ 」
そう言って 納竿しようとすると
「 なんや 帰るんかいな 」
・・と 親分 つまらなさそうに言う
「 カバンあけて見ィ (中に)パンがあるから  それ食べてエエデ 」
「 遠慮せんでエエデ 」
・・
と 親分
親分の
カバンにはパンが 3つ入っていた
私は 数からしてそれらは てっきりおやつだと想った
私は袋入りのフレンチトーストの食パン一つを取り出して食べたのである
「 それだけでは、たらんやろ 」
「 わしは エエネン  さっきようけ食べたから  もう一つ食べてもエエデ 」
私は
遠慮はしたものの
親分 一人になるのが嫌で (私を)帰らせたくないもんで そう言うとるんやな
・・と そう判断した
それなら 」・・と  もう一つ貰った
そして  そのまま腰を据えて釣りを続けたのである

しばらくすると アタリ が 出る様になった
「 やっと 時合がきたで 」・・と 親分
ところが
然し アタリはあっても 釣れない
ノッタ かと想うと スレ バラシ てしまう
「 チェッ またか 喰いが浅いんじゃ 」・・と 親分がボヤく
親分 もう 3枚も バラしている
フラストレーションが そうとう溜まっている様子である
そんな時  私が先に一枚上げた
「 先にあげて どないすんねん 」・・と 親分のいつもの口調
ここんとこまでは 御機嫌麗し・・であった

 14番の中井さん
そこへ
14番での釣りを終えて帰宅する 陣笠の中井さんが 河を挟んで向う正面に自転車を停めた
「 どないや?」
「 あかん、スレばっかりや  ボーズや 」
「 そうかいな  今日はきびしかったからな 14番も全然あかんかったで 」
「 ハナチャン、あがったんか?」
「 1枚あがりましたワ 」
「 ホー あげたんなら優秀やで 」
ここで
よせばいいのに
私は
ここが違う・・とばかりに
左腕を掲げ右手の指を差したのである

晩秋の日暮れは早い
アタリ も途絶え
以後 釣果も無く  フラストレーション溜まった侭に 納竿となった
私は
ホソ・上の 開拓した釣り場に親分を案内した
「 明日 此処で 並んで釣ろう 」
・・そう約束して この日は別れたのである

分の素顔
明くる日(日曜日)
昨日のパンのお返しの昼食も ちゃんと用意して 風呂迫さんと共に親分を待っていた
彼は新しい釣り場での釣りを見たいと ギャラリーとして私の側に付いたのだ
日曜日とあって 既に大勢の釣り人が腰を据えている
すぐ側の浮草の一等場所には  的場さんも 長老と共に竿を出していた
そこへ
いつものとおり  にぎやかな声が聞こえてきた
「 オッ 来た来た 」
いつものとおり  釣り人に挨拶しもってやって来る
私はてっきり この釣り場に来るものだと想っていた
然し 世の中と親分
私の想い通りには ゆかぬ
赤川鉄橋を越えてホソ・上(カミ)の中間辺りで 自転車を停めて喋りだした
「 あんた、昨日 下(シモ)の 一等場所入ったんやてな 」
「 どないやった? 何枚あがった?」
「 どないもこないもあるかい 昨日はえらい目におおた 」
「 ハナダのアホ  わしの昼飯 みな喰いやがんねん 」
「 腹へって 釣りになるかい 」
「 昼飯持って来てへんゆうから わしのカバン中にパンあるから それ食うてもエエ ゆうたんや 」
「 後で 喰おう想うて カバンあけたら なーんもあらへん 」
「 みな 喰いやあがんねん 」
「 なんぼ やる・・ゆうても 普通は遠慮するもんやで・・ナア 」
「 くそっぱら立って くそっぱら立って 昨日は寝られへんかったわ 」
「 もう あんな奴の顔 見とうもないわ 」
・・と まあ
もう 堰を切ったかの如く
云うわ 言うわ
姿 見えねど声髙し
その大声は ホソ 一帯に轟きわたったのだ
なんとまあ
それはもう
悪口雑言の数々・・言いたい放題
よくもまあ
これだけ人の悪口を言えるものである
「 ワシ等 おらん時はあんな風に言われとるんか 」
・・
と 的場さん
横で風呂迫さんも 笑っている

ハハーン 昨日の あれやな
私はピン ときた
よせばいいのに 私は
ここが違う・・とばかりに
左腕を掲げ右手の指を指した
親分
此れが気に入らなかったのだ 
そして  我慢が ならなかった
『 吾はへらぶな師 』 と 豪語する親分
彼のそのプライドを傷つけたのだ
悔しゅうて 口惜しゅうて この欝憤 どうして呉れよう
『 江戸の仇を長崎で 』
・・と ばかりに
そのウサを はらしているのである
「 ワシを 誰やと 想う とんねん 」
「 なめとったら あかんど 」
これぞ
まさしく
親分の真骨頂
・・なのである

・・と
ここまで
親分のこと  散々 物語って来た
「 オイ ええかげんに せんかい 」
・・と
親分の 声が聞えて来そうである
名残は尽きない けれど この辺りが 潮時
親分の素顔の素

トドの詰り に 物語って
『 ガハハ・・ 』
これで
お終い

竿納め
 
私の師匠・親分
ホラは吹く 
大声で お喋りである
騒がしい  喧しい
挙句に大声で以て歌まで唄う
柄は悪いし 口は悪い  だれかれと見境なく 喧嘩はする
もう 支離滅裂なオッサンである
『 吾は ヘラブナ釣り師 』 と プライドだけ人一倍 高いから 始末に悪い
周りの者からしたら それはもう 困ったものなのである
なれど 憎めない愛嬌があり
何と言っても 面倒見の良い親分肌である
是も彼も 親分の為人(ヒトトナリ)               
悪い事も
良い事も
全部ひっくるめて  これぞ親分
それでいい
私は
こういう 変なオッサン
大好きである



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最終回 宴の後

2021年06月06日 | ガハハ・・・1996~2006


コップ一杯 飲む酒も 
なぜか淋しい 今日の酒
外は冷たい 雨が降る
飲めば飲むほど 哀しくなるわ  涙流れる グラスの中に
悪い私を 叱ってあんた
どこへ行ったのよ
戻ってきてよ  ネェあんたー  ♪
・・・
的場さんの18番である 千昌夫の 「 あんた 」
皆が思わず 聞き惚れてしまう程 上手い
 飲み会

年に1度
釣り人仲間と 「 飲み会 」 を おこなっている
宴たけなわ 酔いも まわった頃
決って 始まる  カラオケ の ひと時  これに又 酔うのである
然し  意外にも ゲコ の 親分
折角の飲み会  一度も参加したことが無い

「 先生の 唄 皆に 聴かしたらな あかんな 」
「 (ワシは) NHKの 『 のど自慢 』 に 出たこともあるんやでー 」
「 ワシは 唄 うまいでェ  ガハハ・・」
・・と そう豪語したる親分
「 オッサンから  「 ヤル 」 云うて  自分の唄 吹き込んだ カセット 貰うたことある 」
「 なんや あんたもかい  俺もや 」
「 いらん言うのに もう 無理やりヤ・・なあ 」
・・と 是 語り種である
ところが 然し
私は親分の 『 のど自慢 』
一度も聞いたことが無いのである
残念・・・で ならない

想わば  斯の仲間
誰もが 親分を通じて
一人 一人 知り合った者ばかり
以来
『 釣り場は 皆が遊びに来る場所である
そこでは社会的地位も 職業も 年齢も 一切抜きである
皆 等しく 釣り人として付き合っている
それが 気楽で善いではないか
そういうものでなくては ならないと想う
遊ぶ時 他人に気を使わない だから楽しいのだと想う 』
・・と
釣り仲間 として 親しく付き合ってきたのである

仲間一同会しての競技会 
然し 
環境の変化は 競技会 ~ 飲み会 に替えた

宴の後
私の釣り場である ホソ
嘗て 此処には
ヘラブナ は 五万匹 存た
私にとっては それは 當に 『 楽園 』 そのものであったのだ
然し
時代は進化する
その過程の中  淀川の生態系も変化してゆく
2003年を境に
外来種である ブラックバス や ブルーギル が 淀川・城北ワンドを 席巻するようになった
彼等は 小魚である ジャミ を喰い尽くす
そして さらに
いつの間にやら 居つくようになった 川鵜
彼等は ジャミは おろか こともあらうに 成魚の フナ まで 喰い尽くす
 ←クリック
生態系が変るのは なにも水中だけでとは限らない
河川敷の葦原を伐採して 畑を耕作する者  野球場を造る者 ゴルフ場を造る者
等々・・不心得な輩(ヤカラ) が 葦原を侵食してゆく
而して
5万と存た ヘラブナ は その姿を消したのである
淀川の環境が大きく変わってしまった
これも 自然の成行というものなのであらう
     
滔々と 川は流るる
2013年9月16日の淀川大洪水
私の記憶からすると 1964年
以来のことである
斯の洪水
ワンド群に しつこいほど溜まった 菱藻 オオカナダ藻 ・・等々 ( 生態系を崩す外来種 )
みんな 流してくれた
自然の力は凄まじいものである
然し
凡て 『  ゴワサンで願いまして 』・・・とは いかないのである
ブラックバス、ブルーギル、川鵜、・・等々による被害により壊された淀川の生態系
直には 戻らないのである

あれだけいた、ジャミ、鯉、鮒
・・・今は
どれ程いるのやら
ホソ には もう へらぶな が いない
『 楽園 』 は もう 無い
・・・のである
一度 失われた生態系が甦るのに 25年の歳月が かかると言う
吾々の 環境も変わった
誰もが 歳をとったのである
もう 間に合わない・・・
あれだけ 通い詰めた親分も
姿を見せなくなった
そして
親分の退場と共に  私も 竿を 置いた
皆は
今なお
ヘラブナ を 釣っている
しかし
ヘラブナ が 存なくなった今
仲間の釣り人 が 一同に集うことは もはや無い
私も カムバック
することは 無いのである

親分
どこでどうしているのやら・・
今や
「 ガハハ・・ 」
聞くことは無い

♪ どこへいったのよー
戻ってきてよ ネエあんたー ♪




次回 アンコール・なめとったら アカンド に 続く
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天狗の鼻 高々に

2021年06月06日 | ガハハ・・・1996~2006

へらぶな釣り は オモシロイ 

私は 全ての休日に 『 心の洗濯 』 と称して 釣り に出かけた
それはもう 『 釣り三昧 』 の日々であった
それを
へらぶな釣りを始めて2年目の春から 3年間 続けたのである
「 ハナチャン、皆勤賞 ヤナ 」
・・と 皆にそう言われるほどに
赤川鉄橋から  ホソ を見ると
そこには必ずや 私の姿があったと 言う

未だ へらぶな釣りを 知らなかった頃
朝から晩まで ずっと座ったまま
雨降らば 傘 をさし
盆も正月もなく
釣りをしている姿を見て
「 あれはもう 病気やで 」
・・と
そんな釣り人を軽蔑していた私
『 明日は我が身 』
・・とは

よく言ったものである

 赤川鉄橋から観た 「ホソ ・上」 釣り人は私では無い

釣った へらぶな 5万匹
早朝5時半 ホソ に着くと
あっちも・こっちも  ヘラ の姿が見える
夜明直後は こうして浮いているのであらう
夏場の酸欠かとは思うが・・詳しくは分らない

一番乗りの私
いつものとおりである
昨晩 「 あれやこれや・・」 と 構想攻略を練って どこのポイントに入るかは決めている
1番乗り なら 1番ポイント
其処に他の釣り人が既に入っていたら 2番ポイント・・と 言う具合だ
とは言っても
あっちも・こっちも
ヘラ の姿を見ると やっぱり迷ってしまう
いつも そうである
然し 結局 構想どおりである
今日も ホソ・上 の 1番ポイント に入る
仕度も慣れたもの
15分で終える  随分と手際も良く成った
餌は
ばらけ が 段差バラケ
喰わせ  が わたグル と マッシュ1:1 の ブレンド
セット での  トコ釣り である
仕度の
間に  浮いていた ヘラ の姿は消えている

さあ 
釣り仕度は整った
「 今日も挨拶に来てや 」・・と 声をかけながら
台に腰をかけ  缶コーヒーをゆっくりと 飲み干すのである
果たして今日は どうであろうか?
逸る気持を抑えながら 腰かけた姿勢を正して
感動の第一投目
この瞬間の なんと心地良いことか
それは私だけの想いでないはず 釣り人 共通の想いだと思う
「 居る オル 」
一投目の雰囲気で判るのである
自分の間合いで餌を投ち替える  3投目でアタリが出る
「 あたったでー 」
胸がドキドキしている
「 ホソ 」 の ヘラブナ とは すっかり 馴染みになって 今や友達である
一節 沈んだ ウキ を合わせる
「 のった!」
キュンキュンと糸を鳴らして 竿をしならせる
・・・
オオスケ が来た

尺上 30cm以上の魚を オオスケと呼ぶ・・親分の造語である

「 1週間ぶり デス 」 と  挨拶に訪れた友達・オオスケ
「 おおきに おおきに  復来てや 」
・・と 丁重に口に餌を含ませ  リリース するのである
1枚 釣上げたところで一服
「 今日も調子が良い 」
もう
「 たまらんなァ 」
 ・
6時頃から 釣り始めて 5時間
11枚~20枚 釣り上げる
目標の数 15枚以上を釣り上げると
「 今日は このくらいに しといたら 」
・・と そう云って
11時半頃 竿納め して帰宅の途に就く
そして 帰宅途中
仲間の釣り人と 雑談しもって 午前の部の釣りを終えるのである

我家までは 5、6分 のところ
昼食を取りに一旦帰宅するのである
「 荷物、預かるヨ 」
・・と 皆は親切に言って呉れるが
家でゆっくりしてから  夕方に復来て 釣りを行うのである
昼食を済ませると
眠気がきて  ウトウト
決って 釣りの夢を見る
その シーンは ウキ に アタリ
 !! 

夢の中で アタリ に合わせている
その手の動きで目が覚めるのである

物語はこの位置

夕方は
独りで愉しみたい早朝釣り とは 趣向を変えて ホソ・下 に入る
下(シモ) は大勢が釣りをしている
仲間の釣り人と並んでの釣りをしたいが為である

「 ここ入らせて貰っても宜しいでしょうか?」
「 どうぞ、どうぞ 」
・・と 言って呉れた親分の横に座った
「 今日は、ドナイ?」
「 今日はエエデ」
・・と いつもの口調の親分
「 11枚あげたで 」
ウキ が 動いている
アタリ もある
ホラ でなく  本当に調子がよさそうである
「 ノッタでー 」
・・と 親分
「調子、宜しいなぁ」
「 ガハハ・・」
いつもの如く 嬉しそうに笑いながら 尺タマ で すくっている
!!
釣り始めて直ぐ
私にも アタリ が 来たのである
「 オッ! もう アタリ 来たんかいな 」
「 後から来て ポンポン 上げんといてやァ 」
・・親分 頗る上機嫌で話しかけてくる
ところが
親分の心配したとおりの  その ポンポン が 私に来た
釣れる 釣れる
そして
はやくも 入れ喰い に 成ったのである
すると
それまで アタリ のあった親分に アタリ が 無くなってしまった
偶に アタっても のらない
・・・ 」
親分の会話も無くなった
釣上げた私に親分
「 あんた、もう帰り!」 

この頃 どこの釣り場へ行っても どの時間帯に座っても釣れたのである
いつでも どこでも、釣れたのであるからして
「 ハナチャン 腕上げたナァ 」
・・と 師匠である親分に言わしめて
自分でも腕を上げたと思っていた
竿頭に成って
親分から 「 今日は天狗になってもエエデ 」
・・と そう言われて得意に成っていたのである
天狗に成っていたと思う

しかし それは
単に ツキ が巡っていただけのことであった
ツキ は いつかは落ちる
此れ  誰しもが経験することで
なにも名人に成った訳では無かったのである
皆は それを知っていた
でも
その勘違いこそが
私にとっての
ヘラブナ釣り の全て
・・であった
・・そんな気がする

次回 最終回 宴の後 に 続く

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