もう一つの 昭和・私の記憶

『 昭和・私の記憶 』 の、続編
吾生涯を物語る

ひとはだ 脱いだのは親分

2021年06月05日 | ガハハ・・・1996~2006

日没の早まる秋の夕暮
いつもの如く
城北ワンド群 ホソ~3番 を巡回しようと まず最初のホソを通りかかった
そこには
長身且つ 田宮二郎バリのイケメン・ウエゾラさん が 釣り場の手入れをしていた
彼は 普段から  ホソ・下 の 釣り場を手入れしている
河掃除 日除け 風除けの為の植樹
樹木の張り枝の伐採
まるで 管理人の如くである

「 ハナチャン  チョット手伝うて 」
「 浮草の塊を 下へ移動させるんや 」
ロープでくくった石を浮草の塊に引っ掛け 皆で引っぱって移動させると言うのだ
彼の呼掛けで
他の釣り人 も 加わった
3人で100m程 更に下側に移動させたのである
釣りたい・・との想い は 誰も同じなのである
これも 釣りたい一心 成るが故のこと
然し だからと言って
彼は 他の釣り場の だれかのような意地悪は言わない
此は ホソ であるからして
これで 冬場の釣り場が一つ増えた

夏場は斜面から葦原に向っての釣り
冬場は反転して
斜面足下の浮草に向っての釣りをするのである


親分の男気
ホソ ・上 私の指定席はいつも釣果が良かった
私の連れ 風呂迫さん
どうしても 釣果が欲しいと言う
だから  いつも
私の指定席を彼に優先させたが
それでも 彼は  想う様に釣果を出せないのだ

秋の夕暮
いつものとおり の 巡回途中
偶々 犬の散歩途中の彼と出遭った
彼は 釣り場の足下の浮草を 対岸の葦原のポイント側に移動させたいと言う
どうしても 釣りたいのだ
私は 自然の侭がいい・・と 常々 云って来た
然し 『 釣りたい 』・・と ひたすら こいねがう 『 連れ 』 でもある 風呂迫さん
彼の気持も 痛いほど分る
「 仕方ないか・・・ 」
私は 彼の希望を叶えて上げようと  ひとはだ 脱ぐ気になったのである
然し
とはいっても
二人では浮草の移動は適わない
そこに
偶々 通りかかったウエゾラさん 彼にも 手伝って貰うことにした
「 あなた 自然の侭がエエ・・そう言うてたんちがうの ? 」
・・と 彼がヒニクル

然し それが 連れの為に行う・・ことが分ると
「 うん エエヨ 」
・・と
快く 引受けて呉れたのである

そして もう一人
この日
唯一 ホソ・下 で釣りをしていた親分にも 声をかけた
「 オー エエデ 」
・・と
さすが親分である
 私の指定席
足下の浮草の塊を移動した

ウエゾラさんが
護岸コンクリートブロックの斜面にへばり付いている浮草の根を木杭を使って器用に剥がす
なかなか 堂にいったものだ
浮草は コンクリートブロック斜面からすっかり剥がれて 川面に浮かんだ
すると
「 ヨッシャー  後は ワシがやったろ 」
・・と
そう云って親分
何と パンツ一枚になって河の中へ入ったのである
そして
片手に浮草を引っ掛けたロープを持って 泳いで行く
水深1m足らずのホソ・上
普通ならば歩く・・・
親分
鎌を口に咥え、さっそうと 泳いで行く
それは 鬼平犯科帳・鬼平こと 長谷川平蔵の捕物劇中に視る
颯爽と 十手を口に咥え刀を抜く 名シーンの如く
なんと恰好が良かったことであらうか

私は向こう岸に周った
ウエゾラさんと風呂迫さんがこっちを見ている
ところが
偶々 この日は水位が高かった
然し 吾も
日本男児
怯んでなるものか
真夏ならいざ知れず
薄暗くなった秋の夕暮に 身体ごと浸かった親分の手前
靴が水に漬かるから・・ どうのこうの なぞと云ってはおれぬ
足首まで水に浸かって 河渕に立ったのである
そして 親分が運んだ浮草の塊の先を 河渕へ引き上げ 木杭をさして固定した
風呂迫さんが希望する釣り場に成ったのである
「 ようけ 釣ってやー 」
・・と 親分

私が 風呂迫さんの為に
ひとはだ脱ごうと 取りかかったこと
然し
その 私の為に
ひとはだ脱いだは 親分であった
「 そこまで やるか 」
・・と  感慨一入のウエゾラさん
「 恐れ入りました 」
・・と 親分の男気に もう脱帽
而して
「 ハナチャン  好かれているんやなあ 」
・・と
私の株も上がったのである・・から
もう
親分様々である


次回 天狗の鼻 高々に に 続く

目次 ガハハ・・・ 至福の瞬間 (とき) に 戻る

コメント

へぇーっ

2021年06月05日 | ガハハ・・・1996~2006

飽きるものか

こうして いつの間にか ギャラリーが後ろに立つ    ・・・上の指定席で釣る私

私は一人 ホソ ・上  に入っていた

そろそろ夕暮れ ジアイ が来る頃である
10m先
水面スレスレの
マチ針の頭程の大きさの ウキの一節を注視している
瞬きもせずに・・・


のんびり 散歩するには もってこいの季節である
夕暮には もう少し時間がある
偶々 通りかかった散歩の人  私の後ろで立止った
気まぐれに 私の釣りを見ている
「 アタッタ!」
反射的に 手がうごく
「 ノッタ 」
型の良い 尺上があがった
「 今、アタリ 有った?」
「 有りましたよ 」
「 微妙なアタリ なんやなぁ  ここからやと 判らんかったわ 」
「 ヘラ(のアタリ) は そんなんかいな 」
「 ヘェーッ 」

してやったり

私である

                                                                          冬場の釣りはきびしい・・7番の的場さん

ホソ・下
藤さん が釣りをしていた
「 どない?」
「 きびしいですわ 」
「 今日は 竿持って来てないんですか?」
「 今日は オフ ですわ 」
今日はギャラリーの私
暫らく フジさんの真後ろに立って 彼の釣りを見せて貰う事にしたのである
冬場  喰いは悪い
なかなか アタリ が無い
偶に有っても 極極 小さいのである
・・
「!」
藤さん 釣上げる
私は そのアタリ が 見えなかった
よそ見をしていた訳ではない
同じ様に ウキ を注視していたのである
しかるに ウキ の動きが判らなかった
「 今  アタリ 有った?」
「 有りましたよ 極極 小さいのがね 」
「 すごいね  名人技やね」
「 いえいえ 釣っている者と 後ろで見ている者との 集中力の違いですわ 」

『 集中力 』
さもあらん
そのとおりである
そして
もう一つ
アタリ・・を 見取る タイミング
『 アワセ 』
釣り人 各々 独自・固有の間合い というものがあって
自分の間合いで以て ウキの動き を見ているのである
つまり
ウキ の  どの動きを どう見るかによって 当然 合わすタイミングも 違ってくるのである
さらに
「 今日のアタリ は こんなんやで 」
・・と 親分が いつも言っている  ヘラブナの 『 アタリ 』
・・その日の その場所に因って いつも 違うのである
だから 今日の アタリを合せるタイミングは ココ・・と その日の釣りから判断するのである
勿論 負け惜しみもある・・が
藤さんが アタリを合わせた際 ウキの動きが判らなかったのは
こう言う理由 も 有るのである
然し このこと 釣り人しか分らないこと
「 へぇーっ 」

次回 ひとはだ 脱いだのは親分 に 続く
目次 ガハハ・・・ 至福の瞬間 (とき) に 戻る

コメント

ミミズもカエルも みなごめん

2021年06月05日 | ガハハ・・・1996~2006

「 チリ紙は いっつも持っとくんやで 」
「 イツ・ドコデ 使うか判からんからな 」

師匠である親分の訓えである


早朝の5時半
釣り場へ一番乗り
いつものこと・・・気持ちの良いもの
であるが然し
チョクチョク 困ったことも起きる
大便・・・
釣りの日の朝、起きるなり食事を済ませ、トイレに入る
 然し
「想い通りに事が運ばないのが常」・・・であらう
無理矢理 ふんばっても、もうちょっとのところで出ない
と いって
「一番乗りせずんば・・・」
ノンビリしている訳にもいかず たいていは見切り発車する
私は、自転車で通う
荷台に荷物を積んで 竿袋をタスキに担いで 釣り場へ向って奔るのである
軀を動かすは 適度の運動
決って自転車をこいでいるうちにモヨオシてくるのである
それが未だ途半ばなら テニスコート傍の簡易トイレで用を足せば済む
然し 釣り場について準備が全部終わった時分にモヨオスときがあり
此れが、クセモノ・・なのである
他に釣り人居れば、荷物を頼んでトイレに駆け込むことも適おう
然し なんと言っても 一番乗り
こういう場合は 反って仇になる・・・・のである

釣り仲間の風呂迫さん
いつも決って午前6時半頃頃 ハスキー犬の散歩がてら私の釣りを覗きに来る
間に合えば 彼に留守番を頼めるのである
・・・・が

もう、我慢ならん・・と
夏のある日
いつものとおり
5時半頃釣り場・私の指定席に着いた
逸る気持ちも愉しいと、手際よく準備を終えた
台を跨いで竿を振った
「 イザ 釣らん 」
然し 今日はいつもと違った
やっぱり モヨオシてきたのである
尻が痛い
「 困ったな 我慢できるかな 」
釣り道具一式置いたまま簡易トイレまで行けやしない
さりとて かたづける訳にもゆくまい
もう一度セットなんかできるものか
時刻は6時頃
「 風呂迫さん・・未だ来んやろな 」
他の釣り人も未だ誰一人顔を出さない
「 尻が痛い 」
チャント坐って居られない
もう 限界・・・と

釣り場とサッカー場の間
夏場のこととて 雑草がうっそうと生い茂っている
人影を蔽いつくすには充分の背丈である
路にも 赤川鉄橋も人影は無い
「 ミミズも蛙も・・皆ゴメン 」 


次回 暑いのに ようやるわ に 続く
目次 ガハハ・・・ 至福の瞬間 (とき) に 戻る

コメント