もう一つの 昭和・私の記憶

『 昭和・私の記憶 』 の、続編
吾生涯を物語る

友遠方より来たる

2021年06月01日 | ガハハ・・・1996~2006

「 やっと着いた  アア しんどかった 」
「 おお 鈴木さん 珍しいですね 」
「 鳥飼は ドナイ?」
「 あきまへん 水 おまへん・・のですワ 」
「 浅うて 釣り ならへんので  こっちへ移動して来たんですワ 」
「 大雨 来るまで当分の間 こっちで釣り させて貰いますワ 」
「 どうぞ ドウゾ 」

         通称 トリカイ

友 遠方より来たる
鳥飼大橋の袂 庭窪ワンドがホームグランドの鈴木さん
強い向かい風を押して はるばると 移動して来たのである
自転車で30分 かけての場所替え
それも これも 只々 ヘラを釣りたいが為のこと
「 ワシ等 キチガイやけどな 」・・と 親分が言う キチガイ
ここにも亦 一人存るのである

「 親分 何処で釣っとる?」
「 下(シモ) の ドンヅキに居ますワ 」
「 よっしゃ ちょっと冷やかして来まっさ 」
やっぱり ここへ来ると 誰しも親分が気になるのである
顔を見ないと済まないのである

「 ドナイ?」
「 オー 珍しい顔やないけ  生きとったんか?」
「 長いこと顔見んから 心配しとったんど」
「 おおきに おおきに 元気でおま 」
「 で あがっとるんか?」
「 あかん  ヘラ ニッチョ(日曜日)や 居らん 」
「 ジャコ 動かん のんや 」
「 動かんジャコ 釣るンが プロや、ガハハ・・」
相変らず の 親分の 名調子に
ここに来た
 と謂う 実感がするのである
!!
ヘラブナ が 親分のウキの前で 跳ねた
「 なんや 居る やんけ 」
「 ちゃんと居るで 言うて 挨拶しとるやんけ 」
「 ガハハ・・なんちゅうこと して呉れまんねん 」
「 ジャコ に なめられとんな 」
「 チェッ!」
「 ガハハ・・」
二人で大笑い している

目の前で ヘラ が 跳ねる
度々ある・・こと
それも 喰いの悪い時に限って
他人のこととて笑ってはおれまい
誰にも  経験があらう
・・
から


 鈴木さんと親分
鈴木さんの釣り場
左右からの風は防げるも・・一段下がって土手を背後にしているが
この程度では 強い北風は防げない
況や
親分の坐っている処
御覧のとおり・・である
ここは
少年野球の 大人達が こしらえた 水汲み場
彼等は  ここに 動力ポンプを置いて 河の水を汲み上げ グランド整備に 水を撒くのである 
ネットが剥き出しに成っているのは 川渕の葦を伐採したから

釣り場に非ず・・なのである
だから
真冬の風のある日は誰も這入らない・・し
而も
少年野球の騒音
それはもう 落着かないのである
こんな条件の悪い釣り場に わざわざ這入るは
親分なればこそ・・であらう
「 名人は釣り場を選ばんのじゃ ガハハ・・」
・・と
さすが
親分である

次回 カモ釣って どないすんねん に 続く
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親分と巡礼した二代目

2021年06月01日 | ガハハ・・・1996~2006

新人の山崎さん
「 この前は えらい目にあいました 」
「 最後は本流の向う岸 赤川鉄橋の下でやりましてん 」
・・と
そう ボヤク
親分に
釣り場という釣り場を
一日中  引きずり回されたのである
吾々の間で 此を 巡礼 と 言う

「 最初はホソで釣ってたんですワ
  そしたら おっさん 「 あかん!場所替えや 」
  「 ええとこあるで 」・・言うて 3番に連れて行かれたんですワ 」
「 3番で ちょっとだけ しただけで
 「 あかん サンカク 行こう 」・・て また場所替えですワ 」
・・と 山崎さん
もう ボヤク ぼやく

サンカクには私が居た
いつもの如く
姿は見えねど 親分の大きい声が聞えてくる
「 お、来た、来た 」
「 どない?」
「 今日は喰いが悪いですよ 」
親分
私の顔見て 気が変わった
「 そやろ ワシ等 場所替えや  14番へ行く 」
・・と 言って
素通りして行く
後ろに 新人の山崎さんが くっ付いている
「 どこもアカンらしいですよ ここで腰据えたらどうですか 」
・・との 私の忠告にも
「 今日は 釣りは諦めました  最後まで(親分に)付いて回りますわ 」
・・と すっかり 諦めの境地に達している
お気の毒に・・・
親分の知っている城北ワンド群の釣り場を巡っているのである
私も同じ経験がある
これも 新人が親分から授かる洗礼
一人前の釣り人と成る 試練と 諦める他は無いのである
  
また アホが
一人ふえた
いつもの様に 上(カミ) のドンヅキで 親分と並んで釣りをしていた
そこへ
吾々の傍にある (ツル状)浮草に 若い親子連れが竿を出したのである
親子二人並んで コンクリートの斜面に座っている
「 お父さん・・釣ってよ 」
私は 微笑ましい光景としてその様子を見ていた
ホソ ならではの光景である
その釣り場は親分も好んで入る一等場所  その日に限って空いていたのである
ジャストタイミング
初めて ホソ へ釣りに来て 偶々 座ったのである
偶々 に
運命 とは 縁(エニシ) とは こういうものなのであろう
初めての釣りで 偶々 横に座り 偶々 ヘラブナ が 釣れた
釣りを終えて嬉しそうに帰っていく親子
帰宅して あの子は母親に何と喜びを伝えたのであろうか

次の休日 彼は 復来た
今度は
独り
次の週も 復やって来た
そして、3枚、4枚・・・・来る度に枚数が増えていく
へらぶな釣りは 熱意 それに辛抱我慢 と 皆は言う
如何なる事にも謂えることであるが
秀でる には 持って生まれた センス が必要なのである
彼には その センス が有った様である
「 おいおい  復 来よったでー 」
「 あれは  病み付きに成るなぁ 」
・・
と 親分
相棒の橋元さんと会話がはずむ
「 また  アホ が一人 増えよった 」
「 ワシ等 アホを通り越して キチガイ やけどな 」
「 ガハハ・・ 」
彼をサカナにして  親分 頗る機嫌が良い
「 あの場所  空けといたろなぁ・・」
・・と
親分 新しい仲間の誕生と 彼を喜んで迎えたのである
彼・・山崎さん
親分から 釣り道具一式の提供を受けて 本格的なヘラブナ釣を始めたのである
私と同じ様に

尤も
彼は上達が速かったので 親分からの巣立ちも早かった
親分の横で 「 ポンポン 」 上げる
さすがの親分も
「腕あげたなァ 焦るやんけ」
 ・・と

親分の本音である

次回 友遠方より来たる に 続く
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