もう一つの 昭和・私の記憶

『 昭和・私の記憶 』 の、続編
吾生涯を物語る

勝利の女神は意地悪

2021年06月03日 | ガハハ・・・1996~2006

「 皆が集まって 釣りをしよう 」
・・と

口火を切ったは 田辺さん
その日の釣りを終えて 帰宅前のことである

「 ホソでの顔なじみが たまには並んで釣りをしたいネ 」
「 やろうよ ハナチャン 」
「 良いですね やりましょう 」
・・と 二つ返事

『 顔なじみ 』 と言っても 色々・・千差万別である

独りで釣るのが好きな人
釣ることよりも 連れと会話しながら釣りを楽しむ人
大きな声で 一人ゴチ 言いもって 釣りを楽しむ人
いろんな面々が
各々自分のペースで釣りを楽しんでいる
だから  一度に多くの釣り人が一同に会するは なかなか難しいのである
二人して 一考
惟いついたところが  釣り人の質(タチ)・・を つくこと
『 吾が一番 』
誰もが 己が腕を自慢したい・・
釣り人とは斯くの如きもの
そこで  『 競技形式 』 を 採ることにしたのである
これなら  めんどうぐさがらず集るに違いない・・と
但し  これは あくまで 『 親睦が目的 』 ・・と 確認しあって
田辺さんを発起人とし 皆に回覧すると  案の定  皆は賛同した
ホソで行う
腕自慢の会 『 ホソ腕会 』
かくして
行われることに成ったのである
・・競技範囲
『 ホソ腕会 』・・好評だった
一回 二回 三回・・と
回を重ねる毎に  参加人数も増えてくる

連れが連れを呼び 知らない参加者も増えた
だからと言って
「 参加したい 」
・・と 言う人 を 拒むわけにもゆくまい
しだいに
当初の目的と違って
競技会としての色彩いが 濃くなってゆく
とは雖も
『 和気あいあい 』 に 行われたのである

逃がした魚は大きい
第三回 ホソ腕会でのこと
幹事役の私は  3枚釣上げたところで
皆の釣り風景を撮影すべく釣り場を離れた

畑さん
せっかく釣上げた魚をフラシに入れる際 入れ損なって河へ逃がしてしまった
「 せっかくの魚  逃がしてどないすんネン 」
「 釣ったことにしといてエ 大きさは33cm・・やでー」
「 逃がした魚は大きい」
・・と 皆で大笑い
「 ハナチャン 余裕 やなあ 」
「 3枚釣って  もう優勝は決まり ヤナァ 」
「 イエイエ  優勝できるとは思っていませんから 」
「 どうです アタリありますか?」
「 アタリマセン 」・・と 田辺さん

撮影を終えて  自分の釣り場へ帰ってみると
ビックリ仰天
なんと  魚を入れていたフラシが 浮かんで漂っているではないか
しかも フラシの口が開いている
括りつけた ヒモが ほどけたのである

スワッ 大変
私の顔から血の気が引いた
魚はどうなった・・・
・・・一枚足らない
逃げられた・・・
「 他人の事笑らうとるから バチが当たったんや 」
・・そう 冷やかす 皆の顔が嬉しそうなこと

うららかなる春の半日は あっという間に過ぎる
制限 5時間の
終了時刻がきた
『 ボウズ 』・・くらって
「 居っても しょうがない 」・・と 一足早く 帰ったしまった者もいたが
各々がフラシを持って 赤川鉄橋下まで集ってきた
「 さあ 計測を 始めよう 」
全般的に釣果は良くなかった
計測の結果
最も多く釣上げて枚数は2枚
私と山崎さんの 2名だけであった
他は1枚が数名
同数であれば長寸の合計で決める・・が ルール
果して
私の釣上げた魚の長寸合計が僅かであるが 勝さっていた
ヒヤヒヤモンの優勝であった
「 あの 1枚 逃がしていなかったら  楽々 優勝であったのに・・ 」
やはり
逃した魚は大きい
・・様である

緊張の中 へらぶなを釣る・・という醍醐味を知った
釣ろうとして 中々 釣れるものではない
プレッシャーと焦り 優勝したいと言う 『 欲 』
それ等が アタリを合せる時 タイミングをずらす  餌をうち替えるタイミングをずらす
普段なら 釣れるものも  釣れなく成るのである


ここで ワイワイ言いもって計測した

風呂迫さんの長い一日
第13回 ホソ腕会でのこと
私の隣に坐った 風呂迫さん
開始早々 オオスケ を 釣上げた
一発長寸 ( 最長寸法 ) が 優勝・・今回のルール
メジャーテープ(非公式)で計測すると38センチのオオスケである
いきなり優勝候補である
3807110414rimg0012

 

 

 

 




「 これで 優勝は決まりやなァ 」

・・と 皆が冷やかす
然し それは 皆の本音でもあった
当人もそう想った
未だ 誰も釣上げていない
「 ハヨ、終わらんカナ・・ 」
・・と 風呂迫さん
彼の 気持ち 分らんでもない
とは 言っても  今 始まったばかり
終了まで 5時間 と タップリ あるのである

時間の経過と共に
あっちで
こっちで
一人
又 一人
と釣上げていく
「 40上(ガミ) 上がったでー 」
「 ホンマカイナ 」
「 上がったデー 」
「 (上がったけど)これは小さい 」
・・と 皆が 口々に言う
だんだん 賑やかになってきた
風呂迫さん  ソワソワ して  その一声一声に反応している
側にいて その様子が よく判る
彼はもう 気が気では無いのである
心配で心配で仕方がないのである
「 皆の様子 見に行く 」
・・じっとしておれず  とうとう  釣り場を離れて行ってしまった
心配なのは分るが そう簡単に 38センチオーバーを 釣れるものか

釣りの技量の差は無い
しかも竿の長さも決めて同じように釣っている
釣ったヘラの大小は 偶々の 運、不運
だから
いきなり釣上げた彼は 今日は 『 ツイテイル 』 のである
私は この日 ツキ が無かった
風呂迫さん 皆の様子を巡回して 帰って来た
未だ自分の魚が一番大きい・・と安堵して
「 ウロウロしていないで もう一匹 釣ったらどうですか 」
「 もっと大きいのが釣れるかもしれませんよ 」
「 そしたら 安心でしょう 」
釣り人・風呂迫さん ようやく釣り始めた
そして彼は 終了間際に 一匹 オオスケを釣上げたのである

終了の時刻が来た
皆がフラシを持って集まってくる
さあ 計測だ
誰も38㎝は上がっていないと言う
風呂迫さんが真っ先に フラシからヘラを取り出した
ところが
一番最初に釣上げた38㎝のオオスケ
5時間もフラシの中に入っていたものだから 尻尾(尾びれ)の端が千切れていたのだ
「 エーッ  シッポが 千切れとる 」
「 尻尾さえ 千切れとらんかったら  優勝やったのに 」
・・運が無い と 嘆いた風呂迫さん
しかし  やっぱり
この日の彼はツイていた
最初に釣った38㎝にはとどかなかったものの
終了間際に釣り上げたオオスケが僅か数ミリの差で この日の最長であったのだ
風呂迫さん 優勝したのである
因みに 尻尾の千切れたヘラは千切れてはいても 第3位長寸であった
「 アー  疲れた 」
・・と
しみじみ 呟いた
風呂迫さん

さもあらん
本当に長い一日
お疲れさん


                  風呂迫さん
競技会となると 誰もが 真剣である
緊張もする  必死になる
だから 誰も皆
5時間 釣り場から離れない 否 離れられないのである
オシッコ も 行けないのである
然し  そのワリには釣果が上がらない
普段の実力が出せないのである ・・そういうものである
そして 
それは もう 疲れた
半日で   2日分の釣りをしたほどに

次回 my スタイル に 続く
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