数学のヒント

初等数学の復習と脳の活性化

数学ガール、という本

2012-06-25 23:45:14 | 日記
「数学」と「女子」、すわアンチテーゼの融合かと胸がときめいたが、それこそが実は出版社の思う壺であり、見事に嵌まって食いついてしまった。
作者の結城浩さん(1963-)は本職はプログラマということになるのだろうか。
あまりに才能が溢れ出ているみたいで、小説らしき中で数学の教科書みたいに解説を展開している。
小説と数学と女子を融合させた本邦初の著作ということで作者と出版社は悦に入っているのであろうが、見るからに鼻持ちならない作品である。
数学とガールを結びつけたタイトル・・・最低。
ミルカさん、テトラちゃんという名前・・・最低。
自分がモテなかったことの反動で対話型小説が生まれた・・・異議なし。
紙の無駄使いとしかいいようのないつまらない冗長な会話・・・異議なし。
ちりばめられた数式のかずかずとその解説・・・秀逸。

才能が溢れ出ているようで、実は数式の解説にしか魅力を感じなかった。
数学バカなればこその著作と思えば力作であり納得できた。
(世の中に数学で身を立てる女性多々あるも、数学は男子というはやはり男子の本懐である。)

だまし絵のトリック、不可能立体を可能にする、という本

2012-06-24 15:42:17 | 日記
杉原厚吉さん(1948-)は数理工学専攻とのことだが、一方で切れるエンジニアといえようか。
コンピュータグラフィックスに精通した立体認識の権威といったところか。
かなりのユーモア人とお見受けする。
よくもまあ、文章や紙切れ上の立体図形説明はたいへんだろうに、それを成し遂げる
その根気強さには敬服の至り。
わたしも立体図形は嫌いじゃない。三面図から立体を想像する、これは機械工学者の基本でもあるし。
逆に鳥瞰図から三面図に落とし込む、これもまた基本。
だけど、ペーパーで不可能立体の面白さを理解するのは相当な根気が要る。
この著作は是非コンピュータグラフィックスなどで切れ目なくビジュアル化して世の中にお披露目してほしいものだ。
それとこのような学問分野がエンジニアリングの世界でどのように活用されているのか知りたいものだ。

数学教科書の自学自習を手助けする時期が到来

2012-06-22 00:33:48 | 日記
ブログで数学のヒントを書き綴っても日本の数学力の底上げにはならない。
数学力の底上げには受験を活用するのが一番の近道である。
まあ中学受験はある意味特殊だが、高校受験、大学受験は教科書のマスターが合格の近道だし、教科書の中には数学への興味を惹くヒントが結構隠されている。
そこから容易に他の教科にも良い影響が及ぶ、という一石二鳥の効果もある。

そこで老骨に鞭打って若い人たちの教科書学習を手助けしようと思う。
よい大学に入りたいが、教科書が理解できず従って進学塾に行きたくとも行けない人が対象。
中心は高校生、次に中学生、そして小学生も。
いわゆる補習塾であるが教材は不要。
できればマンツーマンがベスト。
教科書という素晴らしい教材があり、学校から与えられた問題集がある。
学校における中間テストや期末テストの問題だって極上の教材になる。
これで十分すぎるくらいである。
1コマ50分、教科書の理解の程度に応じて週に1回あるいは月に1回など柔軟に変更ができる。
この手助けの最終目標は教科書のマスター。
それはとりもなおさず進学塾についていける状態になったことを示す。

幸い講師は定年退職して時間が有り余っている。
可能な限りたくさんの人々に、希望の大学へ入るための第一関門をくぐらせてあげたいものだ。

夏期講習の予約受付が始まっている

2012-06-21 23:56:12 | 日記
新聞のチラシ広告を見ていると大手の進学塾では夏期講習の受付を開始している。
早くしないと大事な夏休みの間にお子さんは大きく水をあけられてしまいますよ、と急かされている印象である。
なんとか過熱させて我が進学塾に引き込もうとしているかのようである。

一般にいえることだが、進学塾はそれに多少でも耐えられる生徒が行くべきところであって、授業についていけない生徒は進学塾には行くべきではない。

ただでさえ分厚い教科書を理解しなければならないのにそれが出来ていない。
出来ていないのに新たな塾の教材で受験準備を始める。
すると二兎を追うもの一兎をも得ずということになってしまう。

世の中に教科書を軽視する風潮があるのは残念なことだ。
受験産業の業者からみれば塾の教材の良し悪しは塾の優位性を示す重要な尺度といえる。

教材を批判するつもりはない。
業者が用意した教材の趣旨を受験生が理解してあげれば、その教材は入試合格に関して助けとなろう。
しかし、教材は教科書の内容を十分に理解したものにだけ与えられるべきである。
塾の教材がなくとも教科書を何度も読み返し、教科書にある例題や問題を正確に理解し解答できるようになれば、それだけで並の大学に入る一番の関門はくぐったとみてよい。
さあ、夏期講習はやめて教科書の自学自習に時間を割こうではないか。

開成中学校入試問題(算数)を解く

2012-06-20 01:13:02 | 日記
2012年の算数入試問題をサピックスが全面広告で新聞に掲載したのは2月4日のこと。
全面広告になるくらいだから有名中学入学試験産業は余程商売になるのだろうか。

無駄話はさておき、その中からC1算数の問題4を解いてみた。
まずいえることは、題意を理解すること。ここで文章読解能力が問われる。
一般に良問の日本語は理詰めで誤解のないようになっているので
慎重に問題を読む、理解できるまで何回でも読むことが大切といえる。
これができれば解答の半分はできたと思っていい。
次に自分の言葉なり数式で問題を目に見える形で分解していく。
つまり書いてみる。書いて目に触れるようにして次のステップを思い描く。
近年よくいわれるようになった「見える化」の作業である。
そしてイマジネーションを働かせ解法を見つける。
あとは計算するだけなので、ここで初めて計算能力が問われる。

そうしてみると
①文章読解
②見える化
③イマジネーション
④計算
この4つのステップが算数の問題を解くには大切だ、ということ。

問題4では最終的には等差数列の和を求めるのだが
有名中学の入試問題は怪しからん、高校生の数学を小学生に強要している、
という意見もあるかもしれない。
ところがこの問題では高校数学Bにある公式を知らなくても解けるようになっている。
開成中学の先生の苦心の末の成果といえる。

塵劫記(じんこうき) 初版本、という本

2012-06-16 00:12:55 | 日記
吉田光由(1598-1672)著
吉田は江戸時代初期の和算の先生で74歳まで生きた。
当時の民衆向け数学本のレベルの高さを示す書である。
一十百千万という初歩の数え方から
九九はもちろん
割り算の九九というソロバンに縁がない私にとっては苦痛のページ、
そして年貢の取立てに関わる田んぼの単位、米の売買に関わる数学、
利息など商売に関わる数学、工事を進めるための数学などが記載され
興味は尽きない。
関孝和とは世界が異なるが、民衆向けの立派な数学の教科書である。
そして農民も商人も物づくりの人々も、しっかりとこれらの数学の関連するところはマスターしていたわけだ。
400年前にタイムスリップしたかのようで、江戸の人々が苦心して解読していった様子を想像できるのが楽しい。
研成社、佐藤健一訳・校注、本体2,300円

花まる学習会の高濱さんに学ぶ

2012-06-15 01:12:51 | 日記
今週の夕方、どこかのチャンネルで花まる何とか、という埼玉の低学年の学習塾を紹介していた。
学習会といって学習塾と言わないのだけれど、まあ筋金入りの学習塾といったところ。
そこの塾長さんが高濱正伸さん(1959-)という方。埼玉では名の知れた方らしい。
突然彼が大きな声を出して、以心伝心、と叫ぶ。すると子供さんが続いて、以心伝心、とこれも大きな声で叫ぶ。
久々に唱和する姿を見て感動。大きな声を出すことの効果、それも小さい時だからこその効果。
塾長さんはわかってらっしゃる。
それと魚釣りの場面。空間の効果なのだそうな。算数や国語が平面な机上の世界であって、これでは空間のよさがわからない。
魚釣りは空間の世界で、多くの発見があるのだそうな。戸外で慣れないことをさせることの効果。
嬉々として魚釣りを楽しむ子供たちに感動。
塾長さんはわかってらっしゃる。

至れり尽くせりの学習塾で、これならお母様方も安心でしょう。
それでは、もし私に適齢期の子がいたらこの学習塾に入れるだろうか、と考えてみた。
考えて考えて考え抜くまでもないが、結論。
千葉県にあったとしても十中八九この学習塾に入れることはあるまい。
こんな内容の塾なら塾の世話にならず親が対応できるし。
対応できない親がいるから塾長さんが苦心惨憺たどり着いた世界なのだと思う。
滑稽な感じもするし、教祖様的色合いも感じられる。
それでもこの地域にはニーズがあるのだと思う。
塾長さん頑張れ、というか頑張ってきた塾長さん、これからも頑張って。向上心ある子供たちのために。
でも親が塾長さんのような考えを少しでももっていればこんな塾は要らないのに。
いずれにしても興味深い紹介番組でした。

教養部時代の数学の思い出

2012-06-14 04:29:59 | 日記
大学生になって教養課程の数学を受講するようになった。
高校の初等数学(=受験数学)とはひと味もふた味も違った。
先生がなんといってもカッコよかった。
当時の役職だと「講師」、
理学部数学科の先生で大学院を出て間もない、新進気鋭といった感じだった。
いつも黒い革のジャケット、背は低いが背筋をピッと伸ばして背中を向けて板書する姿。
文字がまた凄い。緻密な頭脳を思わせた。

(写真は当時の試験問題。先生がガリ版でお作りになった。)

やや色白で黒ぶちのめがねだったか。口元がきりりとして理路整然、明快に何のよどみもなく
講義を進める。
進路に選択肢の多くなってきたこの時代、
これで数学の点数がよければ違った道に進んでいたかもしれないが。
その先生の名前が思い出せない。田中の数学だったか。
いずれにしても数学とは凄い、そして数学とは苦痛であると思わせてくれた先生であった。

高木貞治 解析概論 改訂第三版

2012-06-13 00:13:41 | 日記
高木貞治(1875-1960) 解析概論 改訂第三版が実家で見つかった。



就職してからは狭いアパート暮らしで手狭になるので学生時代に使っていた書籍の大半を実家に預けていた。
購入当時が思い出される。
大学生になりたてのころ、教養部での数学に高等数学の深遠なる部分を垣間見て
どうしてもこの書がほしくなった。
理系の学生らしさを見せたくてこの書を殺風景な四畳半の部屋に飾った。
バイブルとして。
しかし多くの学生がそうであるように、この書に没頭し使いこなせることは
できなかった。
いま目の前にして思う。購入して40有余年の歳月。カネも体力もなくなり、
記憶力も心もとないがヒマだけはある。
コツコツと紐解いてみたい、と。
(岩波書店、解析概論 改訂第三版、1600円)

朝日新聞の花まる先生公開授業に感動

2012-06-12 00:07:30 | 日記
6月10日の
朝日新聞に興味を引く記事が載っていた。
小学校の先生が小学6年生の算数の授業風景を解説した記事である。
売らんかな、の単行本よりよほど感動する記事であった。
この先生は好きにさせようとか面白くさせようという考えの持ち主ではないようだ。
苦手意識をもつ子供たちに楽しく授業を受けさせようと腐心している様子がみえる。
記事はこうだ。
先生が問題を出す。
生徒がさまざまな解答を先生に返す。
先生はそれを受けて生徒にヒントを出す。
そして生徒が少しずつ解にたどり着く。
すると生徒からこういう問題はどうかという発展的提案がある。
ひとつの問題から無限の楽しみを引き出しているようだ。
このキャッチボールこそが先生のねらいなのではないだろうか。
そして算数の授業で世の中のあまたの先生が悩んでいるとすれば、算数の授業に対するひとつの方向性を見い出しているのかもしれない。

それこそ昨日のブログで書いた「こんな授業を受けたかった!」そのものであった。
記事に添えられた授業風景の写真と小学生が取組んだ問題の解説を転載させていただこう。


(撮影は松本敏之さん)


(これが小学生を惹きつけた問題)

ちなみに、その素晴らしい授業をされた先生は渋谷区立鳩森小学校の平林千恵先生(1966-)とのこと。