昨日の夕飯は孫の好きなハンバーグにしたのだが、ミンチをこねながら思い出したことがあった。
小学6年の時友達んちに遊びに行ったら、その子の母親が映画館で切符もぎりをしているから
行ってみよう、ということになった。
当時は映画全盛時代であるから、田舎にも映画館は幾つもあった。
けれども子供の出入りは禁止されていて、学校から許可された映画しか観に行ってはいけなかった。
それを「行こう」と言うのだ。冒険である。大人の映画ってどんなんだろうと、怖いながらもワクワクした。
友だちのお母さんのお陰でスムースに入った。映画はもう終わりがけだった。
見目麗しい若い夫婦(女は可愛いエプロンなんか付けている)がちょっと口喧嘩している。
が、直ぐに仲直りしたかと思うと、「あ‘‘ーっ!」と台所に走って行き、
「ハンバーグが焦げちゃった!!」と煙の出たフライパン見て首をすくめるのだ。
モダンな台所だった。我が家はまだカマドで煮炊きしていたから驚いた。
そして何より『ハンバーグ』って何だろう?と思ったのだった。
それから大人になり、ハンバーグと言うものを初めて口にする日が来て、
感動したかといえばそんな記憶はまるっきり無い。
ただ、20歳過ぎて自分で初めて作ったハンバーグが、
長靴で踏み固めたように不細工な失敗作だったことはよーく覚えている。