ものの芽の ひとつひとつに 春の神
正岡子規の俳句革新運動に参加し、近代俳句を大成させた高浜虚子の名句のひとつ。
待ちわびる早春の訪れを、枯れ枝の若芽の膨らみに見つけた喜びを、思わず『春の神』と称えたのは古来日本人に根付いた「アニミズム」的生命感覚によるものだという。そこから大和政権による神話の世界に「八百万神」という概念が確立し、長く続く日本の普遍的価値の基盤となったと言えるだろう。
春になって小さな草の芽が土の中から出てきたとき、そうした物の芽のひとつひとつにも春の神様がいる
ただそう表現したことの土台を多くの今の人たちが忘れてしまった、失ってしまったとも言える状況にあるかもしれない。
美しいことだけに目を奪われいないか。花が散ったらすべて忘れ去ってしまっていないか。
春の神は美しいだけでなく、霊的感性を宿したありとあらゆる自然とともにいるのだろう。