皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

世の中と塩あんびんは甘くない

2022-03-27 19:26:49 | 食べることは生きること

埼玉銘菓といえば十万石饅頭。謂れは版画家棟方志功の食べた感想で「行田銘菓にしておくにはうまい、うますぎる」とのことばから。
一方、埼玉県名発祥の地、さきたま村の銘菓すなわち、「さきたま銘菓」といえば金沢製菓の「塩あんびん」。
なかなか買いに行く機会は少ないが、地元のお付き合いからいただくことが多い。
私たち世代にとってこの塩あんびんとはまさしく世代間ギャップをもっとも感じる銘菓ではないだろうか。
実は金沢製菓さんは、皿尾の久伊豆神社にとっても祭事に奉納する鏡餅や赤飯等神撰を注文する先の老舗店舗。他にも秩父屋さんなどもつくっていらっしゃるが、私にとって塩あんびんといったら金沢製菓。

塩あんびんとは砂糖を使わずに塩で味付けた大福のこと。小さい頃甘いと思って食べた大福がしょっぱかったせいで、幼い頃はみな嫌う。
しかも餅米の大福だから翌日にはかたくなってしまう。砂糖をつけて食べるのが一般的であるが、子供心に、「はじめから甘くすればいいのに」と思ったものだ。
なぜ塩あんびんは甘くないのか
単純に昔は砂糖が貴重で、使える量が少なく砂糖の代わりに塩で味付けたから
塩と比べ砂糖は贅沢品だったのだ。今でも上白、グラ、ザラメ、三温など原料としては高騰している。
しかも昔は砂糖の取引自体が商社中心の専売制で自由な取引ができるようになったのは戦後のことだ。
いまでもその名残で商社と取引する主要問屋は特約店制度で、取引自体購入から支払いまで10日の期限しか猶予がない。売り手の殿様商売が続いているのだ。それだけ砂糖が物不足のもとでは贅沢品として目をつけられていたのだろう。
大人になってようやく塩あんびんを美味しく食べられるようになった。贅沢に砂糖やシロップをつけて。
甘くなくとも大福餅が食べたかった時代。そういうときがあったことを私たちは忘れてはならない。
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早朝賑わうラーメン店にて

2022-01-12 22:09:50 | 食べることは生きること

羽生から加須北部を走り抜け、埼玉大橋を渡って下総へと続く三国橋を渡る手前の道の途中、早朝六時から営業するラーメン店がある。

うまいラーメンショップ北川辺店。栃木県小山市まで通う途中、毎朝この店の前を通りながら、いつかは朝食にラーメンを食べてみたいと思っていた。アメリカ大リーグで活躍したイチロー氏は朝カレーを食べることで知られているが、麺類特にラーメンであっても早朝仕事前後に食べたいと思う人は多いだろう。コロナ禍で飲食店の営業時間短縮が求められることもあるが、早朝の飲食店についてはそうはならないだろう。個人で利用する店は、業種よりも営業時間にタイムマーチャンダイジングして営業すると流行る時代。

注文は前料金の自販機の利用。こうすることで、単価は下がるが、圧倒的に接客のオペレーション(作業)負荷が下げられる。早朝六時半に入店したが、カウンター席には三名のお客さんがすでに座り、テーブル席も半分は埋まっていた。
 常連の早朝利用からか、「麺少な目で」と声がかかると「50円お返し」といって返金していた。オペレーションは機械化によって効率をあげても、人と人とのやり取りまではすべてなくす必要はないし、できることはやろうとすればできる。聞いているこちらが気持ちよくなるやり取りだった。

さっぱりした塩ラーメンはそれでいてコクがあり、時間にか変わらず心も満たしてくれる味だった。
何より感心したのは、座ったカウンターのきれいに磨きあげられた清潔感。古くなったラーメン店にありがちなの油っぽさが全く感じられない空間だった。整理整頓清掃清潔。よく仕事で使われる言葉で4Sと呼ばれる四つの要素。
整理整頓することで仕事の効率が上がり、清掃し清潔を保つことで仕事の質が上がるという。
上質の仕事は上質な味を生む。舌と腹だけでなく心を満たしてくれる通勤途中の極上のラーメンだった。
(令和三年 松の内 6日入店)
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キヌヒカリの里

2021-10-16 00:20:17 | 食べることは生きること

十月も半ばを過ぎ、稲の刈り入れが進んでいる。台風の襲来もなく、順調のようだ。もちろん実際の農家にすれば出来映え、価格等気を揉みながら最後の脱穀出荷まで苦労を重ねていることと思う。我が家も四半世紀前まで兼業であっても稲作農家であって、収穫の喜びと苦労を味わって来た。残念ながら機械の維持継続断念を理由に廃業し、耕作委託をしながら農地を管理している。

委託先農家に作付してもらっている銘柄はキヌヒカリ。埼玉特有の米だ。あまりスーパーなどでは出回っていない。昭和の晩年より埼玉では多くの田んぼで作付が行われた品種だ。

平成28年度の統計によれば、全国作付面積では第七位となっている(作付比率2.5%)
米の銘柄は数多く存在し、年々交配も進み、新たな品種も生まれているが、圧倒的に多いのはやはりコシヒカリで作付比率36%.。続いてひとめぼれで9.6%.ヒノヒカリ、あきたこまちと続いて上位4銘柄で作付面積の6割以上を占めている。

昭和63年(1988)に農林290号キヌヒカリと命名され、もともとは関東地方で栽培されるために交配された北陸の品種で、一番の特徴は倒伏しないよう、稲の草丈が短いことだという。味はコシヒカリに近いが甘味や粘りが弱く、さっぱりしている。現在では主に近畿地方で栽培が盛んであり(兵庫・滋賀)、関東では埼玉が産地として知られる。北埼玉の米所では北川辺のコシヒカリが有名だが、行田地区ではキヌヒカリが多く作られる。県の推奨米として「彩のかがやき」の栽培も進んだが、当地ではキヌヒカリの方が人気があるようだ。北関東特有の空っ風に耐えられるよう、丈が短い品種を選んだというところに非常に当時の人たちの思いを感じる。収穫時に倒れてしまった稲を刈り入れるのは大変な思いをするのだろう。

令和大嘗祭に於いては京都南丹市のキヌヒカリが神撰として選ばれている。
絹のようなひかり輝く米
甘味や粘りは控えめで、他の食材との調和がとりやすく、いずれのおかずとも相性が良い米。
北埼玉の歴史や暮らす人たちの人柄が滲むようなキヌヒカリ。こうした銘柄が収穫されることを神の恵みとして感謝し、当社の神嘗祭に奉納している。
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梅シロップ作り

2021-06-03 23:45:00 | 食べることは生きること
 ここ数年、梅を自宅で漬けています。梅酒ではなくシロップにしています。

 自家製の梅があまりとれませんでしたので、今年は全量スーパーで青梅を購入しました。Y社です。


価格や品質にあまり差はありませんが、氷砂糖の価格は特売がかかり競合を下回っていました。売り手からすれば価格を『潜る』なんて表現しますね。


芽をしっかり取り除きます。細かい仕事が得意のようです。但し気が乗ればの話です。普段はズボラそのものです。


氷砂糖と梅の比重は一対一。カビ防止にリンゴ酢を加えています。


青梅は大小ふた瓶漬けました。完熟梅はもう暫く熟すのを待ちます。
斎庭の神勅の如く、日本人は何かを育てるのを好みます。味や価格ではなく、自分が育てて食す。ただ腹が満たされるだけではなく、育てる喜びを味わう。梅にはそんな魅力が溢れています。
#梅
#斎庭の神勅







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麦茶の効能

2021-03-30 19:52:51 | 食べることは生きること

 毎日の生活の中で食べるものと飲むものそれぞれ習慣化しているものがあります。

ここ15年飲み続けているもの。麦茶です。ペットボトルではなく煮だしでいれるティーパックのものを飲んでいます。ペットボトルは便利ですが、購入する際に重さがあり荷物としてわずらわしさもあり買ったことがほとんどありません。ここ数年買い物袋の有料化がすすめられ、不便しながら環境問題への懸念を背景にビニールゴミの削減が否応なしに進められる一方、再利用化の大義名分のもとペットボトル製品につての規制はありません。利便性に加え商品化している大手メーカーの力が大きいためでしょうか。

多くの方は夏場の飲料として冷やして飲むことが多いと思いますが、我が家では年間を通じて、冷蔵庫に常備し厳冬期には温めて飲んでいます。一般的に知られている効能として、血流をよくし、体温を下げる効果があるといわれています。カフェインが含まれていないため、就寝前や乳幼児が飲むことに適しているそうです。もちろん緑茶も飲みますが、緑茶は来客用に置いています。

原料は六条大麦。二条大麦と六条大麦があるそうですが、胞子の中に種子が二列入っているか、六列入っているかの違いのようです。(当然二列である二条大麦のほうが大粒で六条の方が小粒。ただし収穫量は六条の方が圧倒的に多い)

 飲料としての歴史は平安期にまで遡ります。貴族が飲用したとされ、戦国武将にも愛されたといいます。

江戸期に入り天保期には「麦湯店」も存在したと記されています。麦湯の女として少女が数文で売ったとされます。大麦の収穫期が初夏であり採れたての新麦を炒るのが香ばしく好まれたといいます。現在でもその傾向が顕著です。

昭和30年代に入り冷蔵庫の普及によって冷やして飲む習慣が生まれ昭和40年代以降、麦湯から麦茶へと呼び方が定着したそうです。子供のころは砂糖を入れて飲んだ記憶があります。

 医学的見地からすると、バクテリアの定着を予防する効果があり、とりわけ虫歯や歯周病菌を予防する効果があるそうです。就寝前に飲むことが私も多いです。

 嗜好品であるコーヒー、茶の飲用を禁じられているモルモン教徒は戒律に抵触しない麦茶を飲用することがあるといいます。

 健康のために何かを摂取することもいいですが、習慣化した飲料が健康に良いと知るのは、また違った喜びがあるものです。

 

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