埼玉銘菓といえば十万石饅頭。謂れは版画家棟方志功の食べた感想で「行田銘菓にしておくにはうまい、うますぎる」とのことばから。
一方、埼玉県名発祥の地、さきたま村の銘菓すなわち、「さきたま銘菓」といえば金沢製菓の「塩あんびん」。
なかなか買いに行く機会は少ないが、地元のお付き合いからいただくことが多い。
私たち世代にとってこの塩あんびんとはまさしく世代間ギャップをもっとも感じる銘菓ではないだろうか。
実は金沢製菓さんは、皿尾の久伊豆神社にとっても祭事に奉納する鏡餅や赤飯等神撰を注文する先の老舗店舗。他にも秩父屋さんなどもつくっていらっしゃるが、私にとって塩あんびんといったら金沢製菓。
塩あんびんとは砂糖を使わずに塩で味付けた大福のこと。小さい頃甘いと思って食べた大福がしょっぱかったせいで、幼い頃はみな嫌う。
しかも餅米の大福だから翌日にはかたくなってしまう。砂糖をつけて食べるのが一般的であるが、子供心に、「はじめから甘くすればいいのに」と思ったものだ。
なぜ塩あんびんは甘くないのか
単純に昔は砂糖が貴重で、使える量が少なく砂糖の代わりに塩で味付けたから
塩と比べ砂糖は贅沢品だったのだ。今でも上白、グラ、ザラメ、三温など原料としては高騰している。
しかも昔は砂糖の取引自体が商社中心の専売制で自由な取引ができるようになったのは戦後のことだ。
いまでもその名残で商社と取引する主要問屋は特約店制度で、取引自体購入から支払いまで10日の期限しか猶予がない。売り手の殿様商売が続いているのだ。それだけ砂糖が物不足のもとでは贅沢品として目をつけられていたのだろう。
大人になってようやく塩あんびんを美味しく食べられるようになった。贅沢に砂糖やシロップをつけて。
甘くなくとも大福餅が食べたかった時代。そういうときがあったことを私たちは忘れてはならない。