この広い世界を。

可愛い歳月。
思ったことの記録。

あの犬のこと。

2016-10-01 23:37:03 | ひとしずく。
ご近所にある犬がいました。

細い犬で、ご近所のくせにちっとも顔を覚えてくれず、
走っていたり荷物をガシャガシャ持っていたりいつもと様子が違うと吠えてくるような犬でした。

お散歩にもあまり連れていってはなさそうで、
彼のまわりはあまりいい環境ではありませんでした。

大雨の日も雪の日も痛いくらいの冬の日も冷たいコンクリの上にいました。

それでもずいぶんと長生きをしていていました。

去年の春ごろから一気に老いを見せ、
目ヤニがべったりで身体は曲がってヨタヨタと歩くようになりました。

その姿は力なく、あまりにみすぼらしく、
わたしは、この夏は越せないだろうなと思っていました。

ところが彼は去年の夏の猛暑を越したのです。

わたしはそこを通るたび、彼の姿を確認して、
声をかけるでもなく、一秒ほどただ彼と目を合わせていました。

夏は越したけどこの冬は越せないだろうな、そう思っていました。

ところが彼は冷たいコンクリの上で冬を越しました。

彼は元気になるわけでもなく、目ヤニだらけで、曲がった身体でそれでも生きていました。

相変わらずわたしは彼の姿を確認して、
声をかけるでもなく、目を合わせる作業を繰り返していただけでした。

美しいな、と思っていました。

その生命のたくましさを、とても美しく思っていました。

最期まで見ているよ、と思っていました。

この夏も越した彼は、数日前から昼夜問わず小さな声で鳴くようになり、
そして先日、二度と鳴かなくなりました。


チャッピー、あなたはとても綺麗で、とても美しかったです。





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2 コメント

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Unknown (104)
2016-10-06 03:23:18
最後は体が辛かったのでしょうか
悲しい声で鳴かれると、こちらが辛くなります
みんながみんな幸せではないでしょうが、最後を見てくれている人が一人でもいて、チャッピーは幸せだったのかな
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104さんへ。 (naho@管理人)
2016-10-07 23:39:22
コメントありがとうございます。

ほんとに、みんながみんな幸せじゃないし、わたしはただ見てるだけしかできなかったけど、
チャッピーの魂の強さを信じてみました。

天国でのびのび楽しくしてるといいな。
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