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★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2025年7月に「はてなブログ」へ引越し予定。

札幌市天文台20cm屈折の目盛環

2022-04-10 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台に設置されている望遠鏡は、1984年に更新された2代目の口径20cmアポクロマート屈折望遠鏡です。

 2022年4月1日からは、パート職員さん4人が天文台スタッフとして、交代で業務を担うことになりました。

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 4月9日(土)に札幌市天文台を訪問したところ、4月1日から新たに採用された3人のパート職員さんのうち、Yさんが担当されていました。
(画像のブログ掲載はYさんから承諾をいただいています)

 まだ不慣れで、努まるかどうか不安ですとYさんは語っていました。
 Yさんは採用が内定した3月から、ベテランスタッフの説明や天体導入の様子を何度も見学したそうで、ベテランスタッフの素晴らしい対応にとても感激しましたとのこと。
 笑顔と熱意と日々の鍛錬で乗り切ってくださいね。



 さて、この望遠鏡の赤道儀架台には立派な目盛環が付いています。スタッフの了解を得て撮影しました。

 まず、赤経の目盛環から。
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 極軸の南端に付いている赤経目盛環です。
 ルーペで拡大し目盛数値を読み取ります。最小目盛は時角の2分(角度の0.5度)です。

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 赤色の照明が付いています。夜間は点灯させ、ルーペで読み取ります。

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 最小目盛は時角の2分ですが、バーニヤ(副尺)を使うことで時角の10秒(角度の約0.04度)までの読み取りが可能になっています。
 指標は、時角2時51分00秒と読み取れます。上の時角目盛を読むか、下の赤経目盛を読むかで注意が必要です。



 次は、赤緯の目盛環です。
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 赤緯軸と鏡筒の間に配置された赤緯目盛環の最小目盛は角度の0.5度で、バーニヤを使い角度の3分(0.05度)まで読み取れます。赤経目盛環と同様に照明装置が付いています。
 目盛の数字が上下逆さまになっていますが、それには理由があります。

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 鏡筒が長く接眼部からだと赤緯目盛環の数値が小さすぎて読み取れないため、数値を読み取るための専用望遠鏡が接眼部付近に用意されています。

 この専用望遠鏡は倒立像なので、赤緯目盛環の数字を上下逆さまに印字しているという訳です。

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 専用望遠鏡で見た赤緯目盛環です。
 指標は、赤緯11度15分と読み取れます。天の赤道近くの赤緯はプラス値とマイナス値を勘違いしやすいので注意が必要です。



 札幌市天文台の口径20cm屈折望遠鏡は自動導入機ではありません。

 しかし、この目盛環を上手に使うことで、昼間の金星は簡単に導入できますし、1等星も楽々導入し、お客様にお見せしています。
 なお、目盛環を上手に活用するには、それなりの学びと体験が必要です。



 最近の大型望遠鏡には目盛環が省かれていることが多いようです。
 自動導入が進んできたからという理由のようですが、導入機構が故障のため天体の導入ができない場合もあり、目盛環があれば緊急対応ができます。

 実際、他施設の自動導入大型望遠鏡が自動導入できなくなった際、紙に印刷した手作りの目盛環を巻き付け緊急時を凌いだという事例を見たことがあります。

 また、札幌市青少年科学館の2代目天文車は自動導入機ですが、オーバースペックにありがちな自動導入エラーが発生する場合が時々あります。

 目盛環があれば短時間で天体導入が可能なのですが、目盛環が付いていないので、スタッフが慣れないファインダーで導入せざるを得ない現状があります。

2022年3月13日に札幌市天文台を訪問

2022-03-23 06:00:00 | 札幌市天文台
 スタッフに確認したいことがあり、3月13日(日)に札幌市天文台を訪問してきました。

 私は、「天文普及事業を支える人的資源の危機的状況」 を黙って傍観できないと考え、今回はあえて苦言を呈する長文の記事を書きます。お許しください。



 現在、天文台の管理業務は札幌市青少年科学館が所管しています。
 科学館は1981年に開館し札幌市の直営管理でしたが、1999年から一部委託を経て2006年から指定管理者制度へ移行。

 2006年からは、公益財団法人の札幌市生涯学習振興財団が指定管理者になり、札幌市天文台を含め管理運営をしています。

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 2022年3月13日、天文台がオープンする10時ちょうどに到着すると、ドームのスリットが開けられ望遠鏡が太陽の方向を向いているのが見えました。
 屋根の上に雪が残っています。

 専任スタッフのヒロさんが玄関前を除雪していて、ご挨拶させてもらいました。
 昨日の夜間公開も担当して疲れませんかと尋ねたところ、昨日の夜間公開の担当はパート職員さんだったとのこと。

 ここに来たのは前回2021年10月なので5か月ぶりです。

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 口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡です。

 1984年10月の望遠鏡更新時から38年が経過。メンテナンスもしっかりされているようで、動きも軽やかで外観も綺麗に保たれていました。

 なお、 【 2011年9月16日のブログ記事 】にこの望遠鏡の更新時の様子を書いています。

 望遠鏡の更新業務を担当した私としては、元気で活躍している自分の子供を見ているようで嬉しくなります。

 さっそく、ヒロさんに太陽を見せてもらいました。
 一般の観客者に対する説明も丁寧でわかりやすく、ドーム内の壁に貼られている各種展示パネルも歴代スタッフの手作りによるもので好感が持てました。



★4月以降は専任スタッフが不在に★

 嘱託職員のヒロさんは2022年3月末で退職とのことです。
 本当はまだまだここで頑張りたかったと言っていましたが、規則による嘱託職員の雇用期間満了で延長されなかったとのこと。ヒロさんは天文普及業務経験が10年以上のベテランスタッフさんです。

 ヒロさんの前任者で天文台で一生懸命頑張ってきた元の専任スタッフであるハヤさんも、「観客数増加に多大の貢献をしたはずなのに、全く評価もされず5年間で退職を余儀なくされ悔しかった」 と、以前、私に語っていました。歴代専任スタッフの中でハヤさんはファンも多く最も適任者だと私も評価していただけに、貴重な人材を失う結果となり残念の一言です。まさに雇い止めの典型例です。

 2022年4月以降、専任スタッフが不在となるため、パート職員を科学館のホームページで募集していました。(募集は3月4日に締め切られたようです)
 パート職員の任期は6ヶ月。1回の延長が可能らしく、それでも最大12ヶ月です。実際の運用は半年勤務・半年休養の連続スタイルを取ることが多いようです。
 今回採用されたパート職員さん3人の任期は6ヶ月です。
(認識不足による間違った箇所を3月24日10時に消し線で示し、新たに26文字追加)

 4月1日からは4人のパート職員さんのシフト交代制。1人あたり月9日間の勤務で天文台の全業務を担うそうで、夜間公開も含めた全業務時間を4人で割ると1人の月額報酬は約5万円の計算になるようです。任期6ヶ月なので有給休暇はなく、病欠も金銭補償なし、労災保険があるだけとのこと。

 無期労働契約者である正職員よりも、高度な知識や技能を有する有期労働契約者が恒常的に業務を行なっている天文台の実態を見るとき、雇い止めを繰り返し、挙句の果てはパート職員で補充という形態に陥ったことは、生涯学習の支援窓口という本来の位置付けを自ら放棄しているようにも見えます。



★人材育成と確保を阻害する人事対応★

 私の体験上、 望遠鏡操作や天文知識が豊富な人であっても、本人の研修意欲と研修体制が整って初めて天文普及に向く人材が育成され確保できると思います。
(自分の天文知識をひけらかしたり、天体導入技能を自慢する人は天文普及事業に向いていないと思います。あくまでも相手の知的要求を短時間で把握し、それに沿った丁寧なわかりやすい説明と対応に向けた鍛錬を怠らない人材、そしてコミュニケーション能力が必要だと思います。前出のヒロさんとハヤさん共に実に得難い人材でした。)

 ここ10数年ほどで私が確認しただけでも、札幌市青少年科学館(札幌市天文台)で勤務していた優秀な人的財産が規則により嘱託職員ですら5年間の雇用期間満了というだけで機械的に辞めさせられ、他都市の天文関連施設で活躍している人を何人も知っています。

 言い方を変えれば、税金で札幌市民が育成しているとも言える人的財産が、どんどん失われている現状に、規則一辺倒で人材育成を全く考えていない雇止めを繰り返すだけの 「公益財団法人 札幌市生涯学習振興財団」 の姿勢に私は強い危機感を覚えます

 ここ数年、私の方から関係者に対し、人材の流失が続き現場が困っていて改善が必要ですという説明を繰り返してきましたが、今回の天文台のパート職員募集でも現れているように、事態は益々悪化していると感じます。
 なお、お断りしておきますが、パート職員さん自体が悪いと言っている訳ではなく、指定管理者の姿勢についての問題提起です。

 5年間の勤務を保証される嘱託職員の採用面接の際、「勤務期間は5年間なので、その後の勤務先を探しておくように」 と必ず説明していた面接担当者がいました。(その面接を担当した科学館管理職から私が直接聞いた話です。いずれも財団本部のほうが現場の状況を無視した雇い止めに固執しているらしく、科学館としてそのような説明をせざるを得なくとても困っているとのことでした。市役所より柔軟性が著しく欠けているとも語っていました。)

 天文台や科学館に指定管理者制度が導入された際の大きな目的のひとつは市直営では困難な 「専門性を有する人材の育成と配置」 だったはず。

 改正労働契約法にいう無期限転換ルールを頑なに阻止しようとする財団側の姿勢は、長期的人材活用戦略が欠けていると言ってもいいのではないでしょうか。


★職員のモチベーション低下★

 6年ほど前には、財団本部の強引とも思える人事異動で、内示の前日に天文の専門スタッフ(財団の正職員)が退職の意思を示し、他の天文施設へ転職してしまったという事例も起きました。(本人から退職前に私が相談を受けて知り得た実例です。)

 子供たちに夢を与える立場の天文係と展示係の職員さんを長年見ていると、最初の頃は意欲満々でも、勤務を続けるうちモチベーションがどんどん下がるような現状が傍目から感じ取れます。

 夜遅くまで一生懸命働いている札幌市青少年科学館の職員さんから笑顔がどんどん消えていく現状に、部外者の私はとても心配しています。(講師を頼まれ、私も時々夜遅くの事務室を拝見する機会がありました。)
 科学館の職員さんの在籍平均年数は恐らく4年以下でないでしょうか。(手元に資料がありませんが、ここ10数年の職員さんの顔ぶれを私が見て推計しました。職員さんの半数ほどは有期労働契約の職員さんで占められています。)



★より良い指定管理者制度とは★

 建物や展示物のようなハード資産には何億円もの予算を費やす反面、人的財産の育成予算ともいうべきソフト資産を削減するような札幌市教育委員会の施策にも、私は危機感を通り越し憤りすら感じてしまいます。

 なお、工事のため科学館は2022年8月22日から2024年3月末まで実に1年7か月間も科学館は休館となります。総事業費10億1600万円のうち、約8億円が展示物大規模リニューアル予算とのこと。(3月22日に札幌市教育委員会生涯学習推進課に電話聴取)

 私が見た中で指定管理者制度がうまく機能している仙台市天文台と比べると、札幌は最低の指定管理者と烙印を押されないよう人材活用方法を見直してみて欲しいと思います。

 札幌市役所の教育長経験者などの天下り先として指定席化している財団理事長さんの在籍期間は1年から2年と聞いています。短期間の在籍ではリーダーシップを発揮することも難しいでしょうが、是非ともリーダーシップを発揮し人材流失に歯止めをかけてほしいと強く願います。

 特に、元々の予算編成権がある札幌市教育委員会に対し、ハード面よりもソフト面に視点を移し、指定管理者への委託業務事項に人的財産確保という事項の追加を強く希望します。

 いつもに比べ過激な記事内容になってしまいましたが、現場の職員さんの悲痛な叫びを代弁するのが科学館を見守ってきた私の役割かなと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。(文責 平井諭 2022年3月23日記)

燃える秋

2021-10-29 06:00:00 | 札幌市天文台
 10月25日(月)、札幌市民の憩いの場所となっている中島公園を散策してきました。

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 秋の装いと紺碧の空が見事なコントラストでした。
 広い中島公園の敷地内には札幌市天文台もあります。

 都心に近い公園に設置された市民天文台としては、
 常磐公園の旭川市天文台(1950-2005)、西公園の仙台市天文台(1955-2007)などがありますが、すでに公園内から郊外へ移転しています。

 札幌市天文台は開設当初の1958年から場所を移してはいません。
 1980年代後半に札幌市天文台を郊外へ移設する計画も出されましたが、交通の便がいい現在地で存続してほしいとの市民の要望で、当時の市長の板垣武四さん(1916-1993)が移設しないことを決断したと聞いています。

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 パシフィックミュージックフェスティバル(PMF)の創設に力を注いだ世界的な指揮者、レナード・バーンスタインさん(1918~90)の銅像の先には札幌コンサートホールKitaraが見えています。

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 太陽の南中高度は低くなり、木々が長い影を作っていました。

 以上、3枚の画像はスマホで撮影しています。

天体望遠鏡博物館のガラクマさんと

2019-07-07 06:00:00 | 札幌市天文台
 香川県さぬき市に天体望遠鏡博物館という施設があります。

 この施設の管理運営をされているこの世界では知る人ぞ知る有名なガラクマさんと、7月6日(土)14時ごろ札幌市天文台で待ち合わせしました。

 札幌市天文台の初代20cm屈折望遠鏡のことなどを説明させてもらった後、地下鉄で札幌市青少年科学館まで移動。

 ガラクマさんとは初対面でしたが、初めて使った望遠鏡のことなどを話し込んでいるうちに、お互い望遠鏡少年だった頃の話で盛り上がり、あっという間に科学館に到着してしまいました。

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 科学館をご案内後、ガラクマさんから 「国産市販天体望遠鏡の黎明期に関する考察」 という資料を頂戴しました。

 独自調査に基づいた94ページの力作で、私にはとても興味深い内容です。

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 様々な資料の他に、ガラクマさんからいただいたお土産です。

 貴重な資料と本場のうどん、ありがとうございました。


 ガラクマさんと科学館でお別れした後は、18時から天文指導員の定例研修に出席しました。

札幌市天文台の還暦

2018-02-09 06:00:00 | 札幌市天文台
 2018年2月2日、札幌市天文台の非公式ファンブックを発行人のAさんから頂戴しました。

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 このファンブック、実は私も2年ほど前にAさんの取材を受けていて、昨年2017年に発行されたとのこと。

 札幌市天文台の関係者を精力的に取材し、Aさんの天文台への熱い想いが詰まったA5版40ページほどの冊子となっています。

 誤字脱字が少しあるのが残念で、改訂版を出す計画もあるのだとか。


 札幌市天文台が開設されたのは1958年(昭和33年)のことでした。
 開設時の経緯については【2011年9月1日の記事】に書いています。

 発行人のAさんも気づいておられましたが、2018年9月1日で札幌市天文台は60周年を迎えます。
 人間でいえば還暦ですね。