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★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

60年ほど前に発行されていた札幌市天文台報

2022-10-05 06:00:00 | 札幌市天文台
 きょうは10月5日(水)です。
 38年前の1984年(昭和59年)10月5日(金)は私にとって記念日のひとつです。札幌市天文台で私が更新を担当した2代目望遠鏡の初めての夜間公開日だったからです。

 この2代目望遠鏡は初代と同じ口径20cmF12屈折望遠鏡です。
 1958年(昭和33年)に設置された初代20cm屈折は色収差などの残存収差が多めに残っているアクロマートレンズでしたが、2代目は色収差などが少なく見え味が鮮明なアポクロマートレンズへとレベルアップされています。

 さて、ブログタイトルになった札幌市天文台報というのは、1960年(昭和35年)から札幌市天文台でほぼ毎年発行されていたB5版30ページほどの研究紀要的な冊子です。

 1960年3月に発行された第1号から1970年3月に発行された第10号までの台報を並べてみました。
 札幌市天文台の臨時職員として働いていた私が退職した1973年11月に、正職員の林耕輔さんから退職記念にと頂戴したものです。なぜか第6号が欠落しています。
 最終発行は第10号だと記憶していますが、いずれも非売品で関係者に配布されたようです。

 第1号の見開きページを接写しました。

 「20cm赤道儀完成直後  1958年7月5日午前3時」と印刷されています。
 北海道大博覧会の期日は7月5日から8月31日までなので、北海道大博覧会の開催日当日の明け方前に組立て調整が終わったという記録的な写真です。

 左端の「林」は、天文台技師として着任した北海道大学農学部出身の林耕輔さん。天文台開設から20年以上も1人で天文台を守ってきました。
 その隣りの「下保」は、北海道栗沢町出身で1935年(昭和10年)から東京天文台技手(当時)として活躍していた下保茂さん。日本人が発見した彗星としては2番目となるC/1936 O1 下保・コジク・リス彗星の第1発見者で、1936年(昭和11年)7月の発見です。
 望遠鏡架台の右側の「福島」は、1956年(昭和31年)に新たな名称で再発足した札幌天文同好会(注釈)の初代会長の福島久雄さん。北海道大学工学部名誉教授です。
 その隣の「同好会」は、札幌天文同好会の2代目会長の後藤栄雄さん。当時は札幌天文同好会の幹事で北海道電波管理局(当時)にお勤めでした。

 北海道大博覧会の開催当時は、設置スポンサーである雪印乳業のシンボルマーク看板が屋上に掲げられていました。
 北海道大博覧会が終了した直後の1958年9月1日に雪印乳業から札幌市に天文台が寄贈され、札幌市天文台が正式に発足。10月25日から一般公開が始まりました。それから26年後の1984年10月5日に2代目望遠鏡の夜間公開が始まったという訳です。


 2022年現在、天文台入り口に掲げられているプレートです。
 1958年の新設時と同様、1984年の望遠鏡更新費用も雪印乳業株式会社の寄附でまかなっています。
(2000年に発生した雪印集団食中毒事件の影響で、現在は雪印メグミルク株式会社となっています。寄付へのお礼の意味で、私は雪印メグミルクの牛乳を毎日飲んでいます。)

 なお、札幌市天文台が設置された詳しい経緯については、2011年9月に書いたブログ記事 【 札幌市天文台の発足 】に書いてあります。

◆注釈◆
 札幌天文同好会の創設は1956年(昭和31年)とされていますが、京都大学の山本一清先生(1889-1959、1918年に助教授、1926年に教授)が主催した天文同好会(後の東亜天文学会)の存在があり、「天文同好会北海道支部」の発会式が1924年(大正13年)10月4日(土)に行われたことが契機となっています。
 太平洋戦争などの影響で「天文同好会北海道支部」の活動は低調気味となりましたが、1956年(昭和31年)7月7日(土)に札幌天文同好会として再発足しています。

 山本一清先生の導きから始まった我が国アマチュア天文家の先人たちの流れの中に私がいることを感じながら、天文普及活動に邁進したいと思います。

★参考文献★
・札幌天文同好会初代会長の福島久雄さんが1985年ごろ北海道新聞に20回連載したコラム記事「星空と私」
・札幌天文同好会会報「プレアデス」第8号 1967年4月16日発行 札幌天文同好会創設の頃の記事を書かれた福島会長が「昭和31年7月7日の再発足‥‥」と書かれています。
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1978年の札幌市天文台

2022-08-23 06:00:00 | 札幌市天文台
 「広報さっぽろ」という札幌市の広報誌に、札幌市天文台の記事が40年ほど前に掲載されたことがありました。

 8月上旬に札幌市広報課を訪問し、記憶を元に1980年代前半の古い広報さっぽろを閲覧させてもらいましたが、記事がどうしても見当たりません。
 もう少し古い記事だったかなあと閲覧を続けると、1978年(昭和53年)9月号にその記事を見つけました。


 1958年から1984年まで活躍していた初代の口径20cmF12アクロマート屈折望遠鏡が写っています。
 左から2人目が当時の市長の板垣武四さんでその右側が札幌天文同好会2代目会長の後藤栄雄さんです。
 板垣札幌市長の左側の女の子と望遠鏡を覗いている女の子はいずれも後藤さんの娘さんです。

 画面左上に「青少年科学館 55年度完成」とあるのは、昭和55年度=1980年4月から1981年3月までのことですが、実際の科学館開館日は1981年10月4日でした。

 なお、広報課スタッフにブログ掲載の可否を尋ねると、クレジットを画像の隅に入れてくれればOKとのことでした。対応していただいた広報課のSさん、ありがとうございました。



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札幌市天文台ドームの外壁補修

2022-08-05 06:00:00 | 札幌市天文台
 キタラ(札幌コンサートホール)で開催される演奏会の招待券が演奏会当日の8月2日(火)に入手できることになり、キタラへ向かいました。

 8月2日14時ごろのことです。中島公園内のキタラへ歩いていく道は札幌市天文台の前を通ります。


 ドームに登っている人がいました。
 あれ? 確か毎週火曜日の午後は天文台がお休みのはず。誰だろう?


 声をかけると、天文台スタッフのUさんでした。
 少し雨漏りするので、ドーム外壁のコーキング作業を始めたそうです。材料は科学館側から支給されたとのこと。
 胴ベルト付きの安全帯でしっかりと安全確保をしています。

 「ブログ用に写真撮影いいですか?」と声をかけたところ、
 「いいですよー。作業しながらじゃあ撮影できないしねー。作業している記録が残るからいいねー。」

 キタラでの開演まで時間の余裕があります。脚立を保持したりコーキング剤の手渡しなどで少しばかりお手伝いしました。


 直径5mドームの中には、1984年に更新された2代目の口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡が設置されています。

 40年ほど前に私もドームの雨漏り補修をしたことがありましたが、安全帯を付けずに作業していました。(今から考えると危なかったなあ。若かったので安全面はあまり考えていませんでしたね。)

 15時過ぎに作業が終了。お互いに手に付いたコーキング剤をアルコールで拭き取り、私は演奏会を聴きに天文台を辞去し、招待券を譲ってくれたYさんご夫妻と一緒に演奏会を堪能しました。その様子は後日アップする予定です。

 4人いる天文台スタッフさんは全員パート職員さんとはいえ、それぞれの得意分野で頑張っています。
 雨漏りが止まりますように。
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札幌市天文台の年間利用者数を調べてみました

2022-08-01 06:00:00 | 札幌市天文台
  1958年(昭和33年)10月に市民向け天文台として設置された札幌市天文台は2022年10月に65年目を迎えます。

 この天文台は、私が中学生の頃から通った施設でもあり、高校時代には創部した天文同好会で夜間貸切観察会をさせてもらったこともあります。(1970年当時は事前申請すれば夜間貸切ができましたが、札幌市天文台管理規則が2010年3月に改正され、利用申請書の様式が削除されたままになっています)

 1980年から1984年まで、私はこの施設の管理運営委託の監督業務をしていました。1984年には口径20cm屈折望遠鏡の更新業務も担当、その更新後に科学館から別の職場へ異動となった思い出深い施設です。


 直径5mドーム内に口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡が設置されています。
 札幌市天文台は人口197万都市のほぼ中心部、繁華街ススキノのすぐ南側の中島公園内に位置し、夜空が明るいものの地下鉄駅から徒歩5分という、気軽に立ち寄れる公開天文台としては利用しやすい、国内では珍しい存在の市民天文台ではないでしょうか。
(他都市の公開天文台は交通の便が悪い場所に移転してしまうか、最初から交通の便が悪い場所に建設される例が多く、私の知っている限りでは、札幌市天文台はフラッと気軽に立ち寄れる数少ない天文台です。)

 日中は太陽・月・惑星・明るい1等星、夜間は月・惑星・二重星・星団などの観望や説明を行っています。
(コロナ禍のため、2022年8月現在、夜間公開への参加は科学館へ事前予約制となっています。早く元通りの自由見学ができるように祈っています。なお、昼間の公開時間帯はこれまで同様、申込不要で自由に見学が可能です。)

 1980年代に郊外への移転計画が立案されたものの、近隣住民からの強い要望で当時の板垣武四札幌市長が移転しないと決断した経緯もあり、市民から愛されている天文台といっていいと思います。
 板垣市長が天文台を見学した際、小学生(もしかしたら中学生)の女の子と対談し「移転しないでください」と要望された時の様子が写真入りで札幌市の広報誌に掲載されています。


 7月下旬に札幌市役所2階の行政情報課を訪問し、「札幌市統計書」を閲覧。天文台オープン後の各年度(4月〜翌年3月)の利用者数を調べてきました。
 過去の利用者数を平準化するため、5年平均値で示しました。


 望遠鏡だけの単独設備で、毎年2万人近い利用者がある公開天文台は珍しい存在ではないでしょうか。

 ハヤさんが着任してから、利用者数が3倍近く伸びていることがわかります。

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 彼は、フラッと立ち寄る利用者さんが入りやすいよう常に入り口のドアを開放し、天文台前の通路には「天文台公開中」という看板を掲げ、来客者が増える活動を地道に続けてきました。

 彼のドーム内での対応を何回も拝見させてもらったことがあります。
 来客者には常に笑顔で丁寧な対応、それも来客者のレベルに合わせた知的好奇心をくすぐる見事な対応でした。壁面に飾られている展示物も彼が企画し丁寧にコツコツと作ってきたものです。

 望遠鏡の対物レンズなどもギトギトに汚れたままになっていたのを2015年4月に着任早々、地道に清掃したことも私は知っています。
 彼の一生懸命さを見ていた私たちは清掃ボランティアをさせてもらいました。その様子は2015年6月13日のブログ記事 【 札幌市天文台の清掃 】をご覧ください。

 彼の素晴らしい対応は、長年天文普及活動を続けてきた私にとっても、見習い学ぶべきものでした。

 そのような素晴らしい対応ができる全国的にも稀有な人材であっても、嘱託職員の雇用期間満了の5年を経過したということで雇用を打ち切られてしまいました。
 客観的な人事評価も一切せずに雇用期間満了というだけの雇用打ち切り、私はとても残念に思いました。

 幸いなことに、新たに2022年4月から天文台業務に従事した3人のパート職員の一人が「彼の後継者になる」と言って頑張っているのが救いです。

 しかし、このパート職員という位置づけも最長5年だそうです。
 専門知識・望遠鏡導入技術・説明技能が必要な専門職的なスタッフであっても、まるで雇い止めを絵にかいたような対応に終始している札幌市生涯学習振興財団の対応が残念でなりません。
 公益財団法人だそうですが、公益財団法人の名が泣いていると私は感じます。

 現在、昼間の公開と夜間の公開の全ての業務を4人のパート職員さんがシフト勤務で担当されていますが、専門職のような人材が北海道の最低賃金に近い時間給与(1人当たり月額5万円ほど+交通費)で働き、雇用期間が不安定な状況で精一杯汗水流して市民のために働いていることを市民は知っているのでしょうか。

 なお、似たようなことを 【 2022年3月23日のブログ記事 】にも書きました。

 私にとって、暗い闇から札幌市天文台を蘇らせてくれたといっても過言ではない彼に感謝する意味で、このブログ記事を書かせていただきました。夜空は暗いほうがいいですけどね。(笑) (文責 平井諭 2022年8月1日 記)

【8月2日(火)8時:記事追加】
 2022年8月2日付け北海道新聞朝刊26面に7段組の大きな記事が掲載されました。
 見出しも大きく
無期雇用転換 トラブル相次ぐ
労働者 不更新条項に疑問
企業 見極め期間が必要

 ハヤさんの事例は、財団側で「見極めすらも全くしなかった機械的な対応」だったと私は思います。
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札幌市天文台20cm屈折の目盛環

2022-04-10 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台に設置されている望遠鏡は、1984年に更新された2代目の口径20cmアポクロマート屈折望遠鏡です。

 2022年4月1日からは、パート職員さん4人が天文台スタッフとして、交代で業務を担うことになりました。

 s220409
 4月9日(土)に札幌市天文台を訪問したところ、4月1日から新たに採用された3人のパート職員さんのうち、Yさんが担当されていました。
(画像のブログ掲載はYさんから承諾をいただいています)

 まだ不慣れで、努まるかどうか不安ですとYさんは語っていました。
 Yさんは採用が内定した3月から、ベテランスタッフの説明や天体導入の様子を何度も見学したそうで、ベテランスタッフの素晴らしい対応にとても感激しましたとのこと。
 笑顔と熱意と日々の鍛錬で乗り切ってくださいね。



 さて、この望遠鏡の赤道儀架台には立派な目盛環が付いています。スタッフの了解を得て撮影しました。

 まず、赤経の目盛環から。
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 極軸の南端に付いている赤経目盛環です。
 ルーペで拡大し目盛数値を読み取ります。最小目盛は時角の2分(角度の0.5度)です。

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 赤色の照明が付いています。夜間は点灯させ、ルーペで読み取ります。

 s220409
 最小目盛は時角の2分ですが、バーニヤ(副尺)を使うことで時角の10秒(角度の約0.04度)までの読み取りが可能になっています。
 指標は、時角2時51分00秒と読み取れます。上の時角目盛を読むか、下の赤経目盛を読むかで注意が必要です。



 次は、赤緯の目盛環です。
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 赤緯軸と鏡筒の間に配置された赤緯目盛環の最小目盛は角度の0.5度で、バーニヤを使い角度の3分(0.05度)まで読み取れます。赤経目盛環と同様に照明装置が付いています。
 目盛の数字が上下逆さまになっていますが、それには理由があります。

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 鏡筒が長く接眼部からだと赤緯目盛環の数値が小さすぎて読み取れないため、数値を読み取るための専用望遠鏡が接眼部付近に用意されています。

 この専用望遠鏡は倒立像なので、赤緯目盛環の数字を上下逆さまに印字しているという訳です。

 iP220409
 専用望遠鏡で見た赤緯目盛環です。
 指標は、赤緯11度15分と読み取れます。天の赤道近くの赤緯はプラス値とマイナス値を勘違いしやすいので注意が必要です。



 札幌市天文台の口径20cm屈折望遠鏡は自動導入機ではありません。

 しかし、この目盛環を上手に使うことで、昼間の金星は簡単に導入できますし、1等星も楽々導入し、お客様にお見せしています。
 なお、目盛環を上手に活用するには、それなりの学びと体験が必要です。



 最近の大型望遠鏡には目盛環が省かれていることが多いようです。
 自動導入が進んできたからという理由のようですが、導入機構が故障のため天体の導入ができない場合もあり、目盛環があれば緊急対応ができます。

 実際、他施設の自動導入大型望遠鏡が自動導入できなくなった際、紙に印刷した手作りの目盛環を巻き付け緊急時を凌いだという事例を見たことがあります。

 また、札幌市青少年科学館の2代目天文車は自動導入機ですが、オーバースペックにありがちな自動導入エラーが発生する場合が時々あります。

 目盛環があれば短時間で天体導入が可能なのですが、目盛環が付いていないので、スタッフが慣れないファインダーで導入せざるを得ない現状があります。
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