貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

愛と美の女神の石

2021-11-07 10:50:09 | 単品

バナジナイト。こだわって書けばヴァナディナイト。うざいですね。
和名は褐鉛鉱、バナジン鉛鉱。Pb5(VO4)3Cl。バナジン酸鉱物。
割合いろんなお店で見る。五反田で赤がきれいなものがえらく安くあったので買った。ミニ標本という感じ。

少し暗めの赤で、結晶面がピカピカしていて美しい。世にはもっと美しい群晶標本がたくさんある。そのうち買いたい……無理かな。

しかし、バナジウム? バナジン酸塩?
なんかバナジウム天然水なんてのもあったような。

バナジウムという元素は、
《1830年、スウェーデンのニルス・ガブリエル・セフストレームが「バナジウム」と名付けた。非常に美しいさまざまな色に着色することから、スカンジナビア神話の愛と美の女神バナジス(Vanadis)にちなんで命名された。》
とウィキ先生にはある。
ヴァナディースは、北欧神話に登場するヴァン(光り輝く者)神族の女神のことで、フレイヤとも言うらしい。しかし、様々な色に染まるから愛と美の女神? なんか意味深だな。(変な想像はやめとけ)
いずれにせよバナジナイトは「愛と美の女神の石」ということになる。ほれ、パワーストーン業界はもっと宣伝しなきゃ。

バナジウムは、合金、触媒、着色料、電子素材などに広く使われいるとのこと。
ゴルフの「チタンヘッド」は、チタンにバナジウムを2~6パーセント混ぜたもの。伝説的なダマスカス鋼からも微量のバナジウムが確認されている。
バナジウム自体は「青みがかった銀白色」だけれど、着色料としてはおそろしく有能らしい。《バナジウムは酸化数による色彩の変化が多様であるため、高温に耐える着色剤として利用される。バナジウムの示す色としては、五酸化バナジウムや塩化バナジウム(III)が鮮やかなオレンジから赤を示すほか、おおむね2価が紫、3価が緑、4価が青であり、5価で無色となる。》
イオンというのは、こんなに多色性を持つものなのか。唖然。

そういえば、カバンサイトという石、あれ構成成分の Ca・V(an)・Si(カルシウム・バナジウム・ケイ素)で名前を作ったものでした。あれは鮮やかな青。バナジウムでも全然違いますね。同質異形でやはり青のペンタゴナイトなんていうのもあります。カルシウムとバナジウムの間で電荷移動があって発色しているのでしょうか。
これは東京サイエンスさんのお安いミニ標本。派手な青どす。

グロシュラーガーネットのツァボライトも、バナジウムによる発色だとか。これは緑。

バナジウムの健康効果は……不明。海藻や貝に含まれている(ただし猛毒のベニテングダケにも高濃度で含まれているとのこと)。まあこういうものは相性というのがありますからね。

バナジナイトについては、「褐鉛鉱は、既存の鉱物の化学変質のみで生成する珍しい鉱物であり、そのため二次鉱物として知られる」。「通常の色は、明赤色から橙赤色であるが、茶色、赤茶色、灰色、黄色、無色のものも存在する。その際立った色から、鉱物収集家の間では人気がある」。赤だけじゃないんだ。2価の紫、3価の緑、4価の青なんてのはないのかな。

このバナジナイト、強い光を当てると妖しい赤に輝きます。燃えるマグマのようで、少し恐いくらい。



愛と美の女神は、けっこう恐ろしいのかもしれない。

モリブデンもそうですけど、普段は見かけない重要な元素を、こうやって間近に見られるというのは、とても楽しいことではないでしょうか。
ほんとにこの世界はいろんなものからできているんだなあ。(素朴な感動だね)


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