貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

幌満の橄欖岩:ダナイト

2023-06-26 21:51:14 | 国産鉱物

ダナイト、ダン橄欖岩。何かださいね。アメリカのちゃらちゃらした兄ちゃんが出てきそう。ハルツベルクだと変人のドイツ系ユダヤ人が出てきそうだし、橄欖岩の名前、もう少しどうにかならなかったんかねえ。(こらこら)

これも幌満の橄欖岩。ヤフオクで同じ出品者から。
ダナイトは90%が橄欖石、輝石などは10%以下のもの。よりペリドットに近い。
と期待していたのだけど、あんまり変わらん。



ダナイト、レルゾライト、ハルツバージャイトを並べて、どれがどーれだっ? とやられても、答えられない自信はある。これが前に出したほかの2人ね。



レルゾ君(左)が濃い色の単斜輝石結晶が多いことは、まあわかるかな。
ダン君は確かに薄緑の大き目の結晶がたくさんある感じ。まあでもね。
裏側には単斜輝石の濃色結晶があるし。

隕石のセイムチャンだかなんだかみたいに、透き通ったペリドット結晶がごろごろしているのかと思っていたけど、そういうことはなさそう。岩石中では無理なのか?

     *     *     *

と思っていたら、先日ツイッターに上がっていた動画を見て、頭の中で小さな地崩れが起こりまして。
玄武岩の上に澄んだペリドットのクラスターが乗っている。
「は? 逆じゃん」

ペリドットは橄欖岩の主要構成鉱物。橄欖岩というのはマントル。で、マントルが溶けてマグマになると玄武岩になる。
だから、海洋地殻では、橄欖岩の上に玄武岩が乗っている。
けど、これ玄武岩の上に橄欖石が乗ってる。だから「逆じゃん」と。

そもそも、ペリドットのクラスターなんて見たことなかったですね。
自形っぽい分離結晶はよく見るし、まあ一つ持ってる。



クラスターをネットで探してみると、あることはあるけど、えらく高い。
これどうやってできるんじゃい。
「はあ、純粋結晶というのは水成か?」

つまりですね、あちきは単純だから、ペリドット≒橄欖岩≒マントルとイメージしてしまっていたわけです。だから玄武岩の上に乗っかってはいけない、そんなものがあるものではない、と思った。
しかし、ペリドットは別の経路でも生成する。『岩石と宝石の大図鑑』によれば、
①橄欖岩中はもとより、玄武岩中でも多く産する。秋田県一の目潟では玄武岩中のノジュールとして産出する。
②さらに橄欖石結晶はマグマだまりの中を沈降し、分厚くたまることがある。
③玄武岩マグマが火山から噴出した際に橄欖石の塊が含まれることもある。
④苦土橄欖石は変成を受けた石灰岩や苦灰岩中に生成する。岩手県根市鉱山では苦灰石の接触変成帯で産出する。

おやおや。こやつ、いろんな所に顔を出す。神出鬼没、変幻自在ですな。
ということは、あちきらが鑑賞するペリドットの結晶やクラスターは、
マントルとは関係ない」ペリドットではないですか。
関係ないとは言い過ぎか。①~③では、マントル=橄欖岩から玄武岩が生成し、そこから「先祖返り」する形でペリドットができている。②の「マグマだまり」がどういうマグマなのかは不明ですけど、たぶん玄武岩マグマなのでしょう。
④はこれ、完全にマントルとは無関係。堆積岩 (Ca,Mg)CO3 にシリカ SiO4 熱水がぶつかって、MgSiO4 ができたということでしょう。

じゃあ、玄武岩の上に乗った橄欖石クラスターはどうやってできたのか。
ううむ、わからん。②で、
・玄武岩中の空洞に玄武岩マグマが流れ込み、そこで橄欖石結晶が沈殿
・残りの成分は安山岩マグマになって上昇、空隙は何かが埋めた
ということですかねえ。何か変か。

どうも、美しいペリドット結晶というのは、多くの場合、
「マントルとは関係ない、先祖返り橄欖石」
だと見たほうがいいのかもしれません。
しかし、シリカ熱水が他の岩石と反応するといろいろな石ができる中で、どうして純粋古形な橄欖石ができるのか。たまたま他の成分がなかったから?

ペリドットというやつ、なかなか謎ですねえ。


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