貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

イエロー・サファイアあるいはゴールデン・サファイア

2022-08-14 10:56:44 | 単品

ずっと、サファイアというのは青だと思っていた。赤いのはルビー。
でもネットを見ていると、いろいろな色のサファイアがある。へえ。
コランダム(酸化アルミニウム)のうち、赤いのはルビーで、後のは全部サファイアと呼ぶらしい。初めて聞いた時は「は?」と思いましたね。だったら青いのはサファイアにして、別の色のはまた別の名前にしたらいいだろうに、と。まあそんなことするとトルマリンやガーネットみたいに「名前大杉」になるか。
緑、紫、黄色、ピンク、さらにはバイカラーつまり二色入りなんてのもある。アイスクリームの世界みたい。「ブルーベリー何たらにチョコミント何たらのダブルコーン」なんてよく食べるよなあと呆れていましたね。(何の話だ)

で、過日、ミネラルクエストさんで石を見ていたら、サファイアのミニミニルースセットの中に、妙な色のものがある。で、お安かったのでぽちってみた。



黄色。きらきら。イエローがきらきら輝けばゴールデン。(まあな)
小さいけどゴージャスな輝き。はええ、と驚嘆したのでした。知りませんでしたねえ、黄色があるとは。

で、気に入ったので、別の日にミネクエさんで出ていたルースをぽちっ。
こちらもゴージャス。ただ、サファイアの特質なのか、角度によって少し緑っぽい色が浮かぶ。バイカラーサファイアの黄色圧倒版という見方もできる。

おまけにつけてくれたのが、同じイエローサファイアのミニルース。これがまたすごい。3ミリほど、くしゃみしたらおしまい、の小ささですけど、少しオレンジがかったイエローが、実に美しい。

しかも、下の二つは、表面に不思議な虹が出ている。表面の構造色なのか、あちきの老眼ではよくわかりません。

いいですねえ、イエロー・サファイア。

     *     *     *

ところがサファイアには厄介な問題がありまして。
「加熱処理」というもの。加熱するとブルーが鮮やかになるそうで、「最近は原産地でほとんど焼いてしまう」という話もある。
タンザナイトなんかもそうですけど、まあ、加熱というのは自然にそうなることもあるわけで、「変造」ということにはならない。それを承知で買って観賞するなら、別に問題ないでしょう。
ちょっと厄介なのが「拡散処理」と呼ばれているやつ。加熱する際に、別の元素を加えることで、色を大きく変えたりできる。これには二種類あって、
①表面拡散  クロムで青を鮮やかにするとか、チタンで「スター効果」を出すとかがあるらしい。削ると取れる。
②浸透  加熱する際、原子の小さいベリリウムを加え、内部まで浸透させることで黄色味を鮮やかにする。削っても取れない。
しかし②を普通「ベリリウム拡散処理」と言うみたいで、これちょっとおかしくないですかね。拡散というのは「すでに在るものを拡げ散らす」ことであって、外から入れるのなら「浸潤」「浸透」「含浸」と言うべきでしょう。アクアマリンなんかで「含浸処理」と書かれているものも時々ありますね。
パパラチア・サファイアという美しい「蓮の色」のサファイアがあって、人気で価格も高い。けれど、しばしばベリリウム浸潤でこの色を出しているものがあるらしい。
まあ「加熱拡散・浸潤」は人工変造の部類に入るかなあ。

で、上記のサファイアのルースは「ベリリウム拡散処理」とちゃんと注記してある。こちらも承知で購入したもの。たぶんミニミニルースのほうも同様でしょう。
承知の上でなのだから、問題ない。美しい。それでいい。それに天然コランダムにベリリウムが含まれることはあるので、まったくのでっち上げというわけでもない。あちきは別に宝石的な価値とか考えてないし、そもそも1000円くらいのものにそんなものあるわけもないし。
まあ、とんでもなく高いお値段で買った「パパラチア・サファイア」が、実は浸潤処理のものだった、というのはちょっと問題でしょうね。資産的価値を考えて宝石を買うなら、ちゃんとしたお店で鑑別書付きのものを買うしかない。

     *     *     *

ネットで「イエロー・サファイア」「ゴールデン・サファイア」を検索してみると、あまり品数はない。「天然」と謳ったものはものすごく高い。産出が少ないのでしょうね。加工で黄色味を出すにしても、無色透明のものが必要で、それもあまり多くはないのかもしれない。
お手頃値段のものはベリリウム浸潤処理でしょうけど、承知で味わうのなら、いいんじゃないでしょうかね。すごくきれいだし。

イエローないしゴールデンの天然石というのは、そんなにない。有名どころではイエローダイヤモンド、シトリン、ヘリオドール(ベリル)、スキャポライト、トパーズくらいかな。スフェーン、ジルコンなんかも時々あるようですけど。ちなみにシトリンも加熱処理のものが多いとか。

黄色の透明石ならシトリンでいいじゃないか、と言われるかもしれないけど、やっぱりコランダムはちょっと違う。例の「屈折率・分散度・複屈折」というやつ。

・屈折率
  コランダム 1.760~1.772
  ベリル 1.577~1.583
  水晶 1.544~1.553
  スキャポライト 1.538~1.541

・分散度
  コランダム 0.018
  ベリル 0.014
  水晶 0.013
  スキャポライト 水晶より若干高い

人間の目はこういう微細な違いを見分けるようで、サファイアが人気なのはやはり屈折率・分散度が高いからではないでしょうか。新米のあちきが見ても、何となくきらきらがすごい。ような気がする。(頼りないなあw)
さらに、コランダムは光学的異方性、つまり方向変色もある。バイカラーサファイアのゆらゆら揺れる色は素晴らしいものです。

ということなのだから、いっそのこと、「ベリリウム浸潤処理」のイエロー・サファイアを、「ゴールデン・コランダム」とか別の名前で大々的に売り出したらよろしかろう、と。美しいから、人気が出ると思うのですけどね。(君は石屋か?)

まあしかし(まだ続くのかよ) よくこんな小さなものをカットするものですねえ。どうやったらこんなことできるのだろうと、いつも不思議に思う。あちきなんか逆立ちしても無理ぽ。
こういうきれいなものを安価に楽しめるのだから、石の世界はいいですねえ。


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