前のムーンストーンの記事で「カリ長石(オーソクレース主体)のムーンストーンが真正」と書いたけれど、間違いというわけではないけれど、どうも、「ラブラドライト・ムーンストーン」や「ペリステライト・ムーンストーン」も、なかなかのもののようで。つか、今売られているものはむしろそちらが主体らしい、とのことで。
パーフェクト・ストーンさんでけっこうお安く売っていた、「ピンクシラームーンストーン(ラブラドライト)」。スリランカ産。ちょっと写真が汚いので小さめに。
ピンクがレアとの売りだったけど、青や緑などいろいろな色が揺らめく。見ていて飽きない、実に素晴らしい石です。光源を動かしていくと、オーロラのような光のドラマが生まれる。動画はこちら。またツィッターをYouTube代わりにしています。(言われる前に言ったなw)
これは夕星庵さんのカットルース、「アンデシン・ラブラドライト」。
これもまた、オレンジと青が揺らめく。カットされているので、ちょっと本来の石の光が分かりにくくなっているけれど、その分ピカピカの輝きがあって美しい。写真ではうまく出ないけど。動画はまたまたこちら。
* * *
さて、以上2点はラブラドライト。カットルースの方はアンデシン・ラブラドライトとある。ネットではアンデシン・ラブラドライトの名前で同じような姿のものがけっこう出ている。
ラブラドライトというと、普通は、不透明で、表面にいろいろな色のシラーが出るものを思い描く。まあ、ホワイト・ラブラドライトといって、白い半透明のもので、七色の光が出る「レインボームーンストーン」もあるけれど。
でも、上の2点は透明。ラブラドライトで透明なものなのか、アンデシン・ラブラドライトには透明なものが多いのか。
うむむ。
って、改めて調べ直してみると、長石の中の斜長石には、ナトリウム長石である「アルバイト(曹長石)」とカルシウム長石である「アノーサイト(灰長石)」がある。そしてその間の微妙なパーセンテージの石(固溶体)は、鉱物名としては廃止された、とウィキペディアにはある。は?
つまり、オリゴクレース、アンデシン、ラブラドライト、バイタウナイト、という「鉱物名」は存在しない。んだって。おりゃりゃ。売ってるじゃん。おまけにアンデシンとラブラドライトは見た目にかなり違うじゃん。
はい、またあの厄介な長石スケール。今度は図じゃない形で。
■アルカリ長石(カリ長石)(alkali feldspar)グループ
オーソクレース(orthoclase、正長石)KAlSi3O8
(マイクロクリン(微斜長石)は同質異形)
サニディン(sanidine、玻璃長石)(K,Na)AlSi3O8
アノーソクレース(anorthoclase、曹微斜長石)(Na,K)AlSi3O8
■斜長石(plagioclase、プラジオクレース)グループ
アルバイト(albite、曹長石)NaAlSi3O8
*ペリステライト(peristerite)?
*オリゴクレース(oligoclase、灰曹長石)Ab90-70An10-30(注)
*アンデシン(andesine、中性長石)Ab70-50An30-50
*ラブラドライト(labradorite、曹灰長石)Ab50-30An50-70
*バイタウナイト(bytownite、亜灰長石)Ab30-10An70-90
アノーサイト(anorthite、灰長石)CaAl2Si2O8
(注)Ab はアルバイト、An はアノーサイトで、数字はその比率を表す。って、単純に Na とCa の比率とは違うのだろうか。わかりません。
なお、オーソクレースとサニディンは正方晶系、それ以外は三斜晶系。
何か釈然としない。ナトリウム長石とカルシウム長石があるのはいい。けれどその間のまじゃり石は、名前がなくて、ただ「斜長石」になるらしい。
そりゃおかしくね? 普通はまじゃり具合によって、どちらかに属させるものだろうに、カテゴリーを1個吹っ飛ばして、グループ名に属させる、って変じゃね? 小麦粉だけならうどん、蕎麦粉だけなら蕎麦、まじゃっているものはどちらとも呼ばず、麺類と呼ぶ。そんなんあり?
まあいいか。正式鉱物名と商品名とは乖離がある。そう割り切ってしまえばいい。
エンスタタイトだって、ハイパースシーンやブロンザイトという名前は廃止されてエンスタタイトに含めることになったけれど、どちらも売ってる。姿も明らかに違う。
しかしですね、こんな微妙な成分比率なんて、いちいち分けていられないでしょうに。これはナトリウムが70~50%だからアンデシン、50~30だからラブラドライト、なんてやってられない。石の個体差だってあるだろうし。
実際、普通の鑑定だって、「長石(フェルスパー)」としか出ない。カリ長石か斜長石かすら判定されない。詳細な比率なんて特別な分析をしないと無理。らしい。
ということは、オリゴクレースかアンデシンかラブラドライトかバイタウナイトかは、実は正確にはわからない。いかにもアンデシンですというアンデシンはあるし、いかにもラブラドライトですというラブラドライトはあるけれど、そういう典型からはずれたものは、はっきり言えない。ということ?
透明ないし半透明で青ないし白の揺れる光を見せるのは、ムーンストーンであって、それがオーソクレースか、ラブラドライトか、アンデシンか、アンデシンとラブラドライトの混合か、なんて、実はわからない。ということ?
ムーンストーンに関して、カリ長石が正統で、ラブラドライトやアンデシン・ラブラドライトは傍系、などとこだわった言い方をしたあちきがあほだったということ?
ううむ。まあそれならそれでいいか。
[追記]こちらには「ペリステライト、ムーンストーン、ラブラドーライトの3種類の鑑別は(略)屈折率、比重、その他、基本的な手法で鑑別することは可能です。EDS(蛍光X線分析装置)を用いて化学組成を分析することが、より正確な鑑別につながります」とありました。
* * *
で、(まだいちゃもんあるのかよ) この透明ラブラドライトのきらきらは、何と呼ぶのか。ラブラドレッセンス? アデュラレッセンス?
これまた、定義不明。ある種の仕組みで発生するある現象のことをそう呼ぶのではなくて、カリ長石のものならアデュラレッセンス、ラブラドライトないし斜長石のものならラブラドレッセンスというふうに、石の名前によるのか。
とするなら、このラブラドライトの「ムーンストーン」効果は、ラブラドレッセンスと呼ぶのか。不透明ラブラドライトの表面で輝くあの輝きと、この透明ラブラドライトのゆらゆらは、同じラブラドレッセンス?
何かそれも釈然としないなあ。
確かに青のみじゃないから、アデュラレッセンスとは違うかもしれないけど……
まあ、仕組み的には、ラブラドレッセンスなのかもしれない。複数の色が出るからね。
上記の石の場合、透明度が高いので、光が石の底部まで到達して、そこにある異種長石間の層が複数色の輝きを生み、それが反射して石の表面に揺れる光を作っている、ということなのかもしれない。
ただねえ、どうもそういう単純なものではないような感じもあるんですよねえ。動画を見てもらえばその複雑さがわかるかもしれない。透明な石のいろいろな所に層があって、そこで複雑に屈折・反射した光がオーロラのような輝きを作っている。ような気がする。
ちょっと特殊なものなのではないかなあ。
[追記]上記の記事には、ムーンストーン=シラー、ラブラドライト=ラブラドレッセンス、ペリステライト=ペリステリズムとなっています。
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まあいいか。
透明・半透明の長石で、青ないし白の光が出れば、それはムーンストーン。複数の色が出るなら、レインボームーンストーン。それでいっか。(ごちゃごちゃに付き合わせておいて最後に投げるなw)
まあとにかく、美しいんです。
石が透明なので、内部で反射した光が、石の表面で光るのではなく、宙に浮いて揺れているように見える。カボッションカットによるレンズ効果もあるのでしょう。
そしてその青がまたきれい。
正直、えらく魅入られましてねえ。
アイオライトやアキシナイトやコーネルピンの「方向変色」もお気に入りなのですけど、それに勝るとも劣らない魅力がある。
オパールと同じ反射干渉光なのでしょうけれど、どうも全然違う。何が違うのかうまく言えませんけど、あちきはこちらのほうが好きです。
と、妙に熱く語ってしまいました。
で、もうひとつ、ペリステライト版ムーンストーンがあるので、それはまた別に。
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