患者の情報がダダ漏れに…?
「マイナンバーカード」を持つことは、法律上は「任意」ですが、将来的に健康保険証が廃止され「マイナ保険証」に一本化されるので、実質的には全員が持たなくてはいけない「強制」となっているという話は、前回『8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」』で書きました。
しかも政府は、2023年3月末までには「ほぼ全国民がマイナンバーカードを取得する」という目標を掲げ、「マイナポイント」をばら巻いてきました。言葉では「取得する」としていますが、現実には「取得させる」と言った方が適切かも知れません。
しかも、そのために使われた税金は、これまでに約3兆円。国民1人あたり3万円、4人家族なら12万円ですから、ポイントを2万円分もらったからといってまったく喜べません。
ただ、こんな税金の大盤振る舞いをしたにもかかわらず、いまだに「マイナンバーカード」を作っていない人が4人に1人もいるのが現実です。
これは、なぜなのでしょうか?
図は、デジタル庁が「マイナンバーカード」を取得していない人に対して、その理由を聞いたものです。カードを取得しない最も大きな理由は「情報流出が怖いから」で、「申請方法が面倒だから」「メリットを感じないから」がこれに続きます。
カード未取得の人を対象に行った他のアンケート結果を見ても、ほぼ毎回この3つが主な持たない理由で、中でも最も多いのが「情報流出が怖いから」でした。
「情報流出が怖いから」と感じる背景には、2つ側面があると考えられます。
1つは、政府の情報管理に対する不安感。そしてもう1つは、預けた情報が、どう使われるかわからないという不信感です。
政府の情報管理に対する不安感は、2007年に5000万件もの年金情報が持ち主不明になっていると発覚した「年金記録問題」で決定的になっています。当時首相だった故安倍晋三氏は、事件発覚後に「最後のお一人に至るまですべての記録をチェックする」と断言しましたが、調査を途中で打ち切り、総理を辞めてからは一言もこの話には触れず、いまだ2000万件の年金が持ち主不明のままになっています。
しかも、年金に限らずそこかしこで政府の情報はダダ漏れ。徹底的な情報管理がなされなくてはならない河野太郎大臣のお膝元のデジタル庁が運用する企業向けサービス「GビズID」でさえ、2022年に個人情報漏れを起こしている始末です。
これでは、大切な個人情報を政府に預けるのが怖いと思うのは当然でしょう。
日弁連も異議を唱えた
さらに、預けた情報がどう使われるかわからないという不信感は、特に「マイナンバーカード」や「マイナ保険証」では顕著になっています。
加えて3月7日の閣議では、国民の不安感を煽るような決定が行われました。それまで法律で社会保障・税・災害対策の三分野に限定されていたマイナンバーの利用範囲を、国家資格の手続きや自動車に関する登録など法律の規定に「準ずる事務」まで広げると閣議決定し、政府の解釈次第でマイナンバーの利用範囲が拡大できる道筋を開いたのです。
これに対して日本弁護士連合会(日弁連)が、「利用分野・事務を拡大すれば、より広範な個人情報が番号にひも付けられた上、漏れなく・他人の情報と紛れることなく名寄せされデータマッチング(プロファイリング)されてしまう危険性が高まる」として、マイナンバー利用促進の法改正の再検討を求める会長声明を出しました。
さらに日弁連は、「法改正に対する事前のプライバシー影響評価(PIA)手続すら行わないまま、利便性や効率性のみを追求して法改正を急げば、2021年5月に成立したいわゆるデジタル改革関連法で「自己情報コントロール権」の保障が実現されていないことともあいまって、プライバシー保障上の危険性が極めて高まるものといわなければならない」と、その危険性を指摘しています。
声を上げなければ「同意」
同日の閣議では、もう1つ、私たちにとって恐ろしいことが決められました。
日本年金機構が年金受給者に、年金の振込先を「マイナンバーカード」に登録するかどうかを確認する文書を郵送で送り、登録したくない人は「不同意」というところにチェックして送り返さなければ、自動的に「同意」したということになり、「マイナンバーカード」に自分の年金受け取り口座が紐付けられてしまうのです。
現在、「マイナンバーカード」を持っている人でも、その約3割は、預貯金口座への紐付けを行なっていません。政府は、「紐付ければ、7500円分のポイントをあげます」と大々的に宣伝しましたが、自分の銀行口座を国に知られたくないという人が多いのでしょう。特に日本の高齢者は、各世代の中で一番お金持ちですから、自分の口座を他人には教えたくないと考えているようです。
ところが、高齢で老眼だったり認知症を患っていたりすると、書類を隅々まで読まないことも珍しくありません。そうなれば、勝手に口座を「マイナンバーカード」に紐付けられてしまうのです。一般的に契約とは、双方の合意のもとに成り立つものなので、拒否しないなら合意と見なすなどというのは、詐欺にも等しいでしょう。
しかも今後は、児童手当、生活保護などへと対象を広げ、NOと言わない人、気づかない人の預貯金口座は、次々と「マイナンバーカード」に紐付けていく方針なのです。
これに対しても日弁連は前出の声明内で、「公金受取口座とマイナンバー(カード)のひも付け登録には、名義人の積極的な同意を求めるべきであり、名義人が知らないうちにひも付けされてしまうような方法をとるべきではない」と抗議しています。
このように、知らぬ間に自分の情報と紐付いているかもしれないのが、「マイナンバーカード」の怖いところ。さらにそうやって紐付いた個人情報が、期せずして外部に流出してしまうことも考えられます。
引き続き後編記事『あなたの「マイナ保険証」から個人情報が漏れていく…これから起こりうる「ヤバすぎる事態」』では、マイナンバーに関する情報漏えいリスクの可能性について検討しましょう。
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