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ウーバー、中国のライバル企業になぜ負けたのか

2016年08月04日 07時20分07秒 | 海外情報
米ウーバー・テクノロジーズは中国で数十億ドルを投資し、世界最大の配車市場を制覇しようと意気込んでいた。しかし、その取り組みは実を結ばなかった。

 中国進出から約3年、ウーバーは中国事業を現地の同業大手、滴滴出行に売却することで合意した。ウーバーは滴滴よりも1年も早く中国で個人向け相乗りサービスを開始したものの、滴滴はウーバーよりも一枚上手だった。滴滴は現地に合った機能を加え、有力投資家を確保し、規制当局やマスコミの懐にうまく入り込んだ。ウーバーとウーバーチャイナの外部株主は統合後の企業の株式20%を保有する。滴滴とウーバーチャイナの評価額は合わせて360億ドル(約3兆6900億円)となる。

 米国のインターネット企業は長年、巨大な人口と拡大する富裕層という中国の魅力を十分生かすことができずにいる。中国政府の厳しい免許制度や検閲に事業を阻害された企業もある。グーグルは2010年に中国ベースの検索エンジンの閉鎖に追い込まれたほか、フェイスブックやツイッターは実質的にアクセスが禁じられている。

 豊富な資金を抱え、中国消費者の嗜好(しこう)に迅速に対応できる現地競合に敗れた企業もある。アマゾン・ドット・コムと競売サイト運営大手イーベイはいずれも、中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)との競争に勝つことができなかった。

 滴滴の初期の投資家である阿米巴資本(アメーバ・キャピタル)のマネージングパートナー、趙鴻氏は「これまでのところ、中国で成功した外国のネット企業はない」と指摘する。

規制に苦しむ外国企業

 国産メーカーを優遇する政策をはじめ、中国のさまざまな規制上の障害に苦しんでいる企業もある。例えば、アップルとマイクロソフトは中国政府による「安全な」国産機器の使用推進策を受け、同国での売り上げが冷え込んでいる。

 米国商工会議所(ACC)の大中華圏担当エクゼクティブディレクター、ジェレミー・ウォーターマン氏は「環境は厳しさを増している」とし、「5年または10年前よりも競争力のある中国企業が増えているのは間違いない。しかし、中国企業を優遇するために政府が影響力を行使し、その度合いが増していることも確かだ」と指摘する。

 中国は多くの企業にとって極めて重要な市場となっている。ゼネラル・モーターズ(GM)は、数十年前に中国で結んだ提携をテコに世界最大の小型自動車市場で有数のプレーヤーとなった。同社の中国事業の年間営業利益は約20億ドルに上り、2016~20年にかけて新車開発に1000億元(約1兆5400億円)を投じる計画だ。中国事業は米国事業よりも採算性は低いが、GMの自動車販売の約3分の1を占める。2016年は自動車市場全体で不安定さが解消されつつあり、GMの位置づけは高まっている。

 しかし、在中米国商工会議所(ACCC)が1月に公表した調査によると、2015年に黒字を計上した米企業はわずか64%と、ここ5年で最低の水準となっている。また、約3分の1の企業が中国への投資拡大は計画していないと答えた。この割合は2008~09年の世界的な金融危機のときよりも高い。

 ウーバーのトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)が中国事業からの撤退を決断する直前、中国で配車サービスに関する新たな規制が発表された。新規制が発表されたのは先週だが、約2年前から作業が進められており、業界の企業には事前に周知されていた。

 新たな指針は配車サービス事業を正式に合法化するものだが、ユーザー基盤が最も大きい企業、つまり滴滴に有利な内容になっている。滴滴にはアップルのほか、中国ネット企業大手のアリババや騰訊控股(テンセントホールディングス)も出資している。

 新規制は採算割れでの配車サービス運営を禁じ、し烈な割引競争に終止符を打つものだが、規模で劣るウーバーチャイナにとって滴滴に価格で対抗するのが難しくなる。

 また、運転手に対する監督強化など間接費の増加を招く措置も新たに要求されるが、ユーザー基盤が大きいほど乗車1回当たりのコストが安くなる公算が大きい。

 滴滴とウーバーがそれぞれ示している各社の中国市場シェアは食い違っているが、ほとんどの外部調査で滴滴がウーバーを大幅に上回っている。中国の調査会社、易観国際(アナリシス・インターナショナル)によると、滴滴のサービスを5月に実際に利用したユーザー数は4210万人だったのに対し、ウーバーチャイナは1010万人だ。

 滴滴は、中国ではウーバーのサービスとブランドを別々に維持する方針を明らかにしている。滴滴打車と快的打車が2015年に合併して滴滴出行が誕生した際も同様の約束がなされたが、より規模の小さい快的のサービスは後に無用のものとして扱われることになった。

 カラニック氏は1日に発表した文書で中国進出に当たり難題に直面したことを認め、「われわれは若い米国企業として中国に進出したが、その国では大半の米ネット企業が参入に失敗していた」と述べた。ウーバーは中国事業の現地化に腐心。ウーバーチャイナを中国企業として設立し、現地幹部に大きな主導権を与えた。

 滴滴は2012年、中国のタクシー運転手が乗客を見つけるのを支援するアプリとしてスタートした。利益は出なかったが、忠実なユーザーを獲得するのには役立った。2014年にウーバーのような相乗りサービスを立ち上げたときには、1億人を超える登録ユーザーを獲得していた。

ウーバーが滴滴買収目指した時期も

 滴滴の程維CEOは2015年のインタビューで、カラニック氏が2014年7月に何とかして中国を制覇したいと述べ、買収を持ちかけてきたことを明らかにした。しかし、程氏は申し出を断り、「私たちがあなた方を上回る日が来るだろう」と宣言したという。

 ウーバーの広報担当者は、当時会合が行われたことは認めたが、ウーバー幹部はそれに関する記憶は異なると述べた。

 滴滴の中国配車市場ナンバーワン企業としてのステータスは、現地政府とマスコミ双方の関係においても役立った。

 ウーバーチャイナは、中国のメッセージアプリ最大手、微信(ウィーチャット)のウーバーのアカウントがたびたび閉鎖され、一般消費者へのサービスの売り込みが妨害されていることに気づいた。ウィーチャットの親会社は滴滴の投資家であるテンセントだ。この件について、テンセントはコメントを差し控えた。

 ウーバーと同じように中国の現地ライバル企業に事業を売却した大手欧米企業は他にもある。

 小売り世界最大手の米ウォルマート・ストアーズは、買い物形態のネット通販への急速な移行で中国での事業拡大に苦戦し、6月に方針を転換。中国で自社の通販サイトを継続することを断念し、中国の電子商取引大手、京東商城(JDドット・コム)に売却することで合意した。それと引き換えにウォルーマートは京東商城の株式5%を取得した。
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