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「SNSデート商法」で詐欺9億円超 最大の“カモ”は20代看護師たち

2013年06月15日 07時42分44秒 | ニュース
 デートを繰り返すことで恋愛感情を抱かせ、100万円の高額商品を購入させる。

 古めかしい響きがする「デート商法」で20代の若者に高額な投資ソフトを販売し、9億円以上を荒稼ぎしていたソフトウエア販売会社「WAO」(大阪市西区)社長、片和男容疑者(33)ら15人が大阪府警に詐欺容疑で逮捕された。だまし役はみんな美男美女。中には肉体関係まで結び、“カモ”を落とす者も。一方、被害者で目立ったのは20代の看護師という。身を粉にして患者をケアする看護師たちの心の隙間に入り込んだのは、「この投資ソフトで人生変わるよ。一緒にやろう」という“偽恋人”の虚飾にまみれた言葉だった。

 ■美男美女の詐欺集団

 詐欺グループは「WAO」を頂点に、傘下の「WISH」(大阪市西区)と「フェーズノート」(同市中央区)の2社が実動部隊として勧誘を行っていた。

 この2社で重要な役割を担っていたのが「アポインター」と呼ばれる勧誘役のイケメンと美女約20人だ。男女比はほぼ半々で、多くはキャバクラやホストクラブに勤務経験があったという。「今どきの派手な化粧やファッションで、話術にもたけていた」(捜査関係者)。

 アポインターの報酬は契約1件につき10万円だ。月4件の契約でボーナスが支給される仕組みだったため、アポインターたちは同時並行で何人もの相手とデートを重ね、それぞれの「恋人」を演じた。

 だまされた被害者は大阪など2府16県で約千人。被害総額は約9億6千万円に上った。アポインターはどうやって被害者を手玉にとったのか。

 ■マル秘詐欺マニュアル

 「はじめまして。プロフ(プロフィル)見たんですけど、素直な子かぁーって感じたんで、メッセしちゃいました☆」

 アポインターは何十人ものミクシィユーザーのメールに、交流を求めるメッセージを機械的に送り続けた。返信がくればしめたもの。こまめにメールのやりとりを続け、相手が自分に興味を持ってきたと感じたところで切り出す。

 「会って話してみたいなぁ」

 詐欺グループ内では、被害者と“デート”の約束を取り付けるこの最初の段階を「アポ」と呼んでいた。

 だましの手口はアポから始まり、全部で5段階。府警が押収した「詐欺マニュアル」から、その詳細が浮かび上がる。

 第2段階は、アポインターによる接客「デモ」。

 場面はメールでのやりとりからデートに切り替わる。カフェでお茶を飲みながら、最初は他愛もない会話で警戒心を解く。その後もデートを重ね、親密になってきたら心を癒やす優しい言葉をかけ、励まし、本当の恋人のように愛の言葉をささやきながら、ときには肉体関係も持った。

 本題に引きずり込むのはそれからだ。相手次第では、初めて会った日に切り出すこともある。

 ■不幸話→成功体験

 「いじめにあって自殺しようと思ったんだ」「親が病気で面倒を見ているの」

 相手に不幸な生い立ちを語って“人生のどん底”だった過去を演出。同情を誘ったところで仕掛けるのが、「そんな自分を救ってくれた人」の存在と、「その人に教えてもらった投資ソフト」での成功体験だ。

 「ソフトで月20万円くらい利益出てるかな。今ではアタシ自身の生活とか考え方が変わって、周りの人たちが『最近どうしたん?』って聞いてくるの」

 誰もがうらやむ右肩上がりの人生。話に聞き入る相手に、アポインターは軽い口調で問いかける。

 「こんなに実績が出るなら、あなたもやってみたいと思わない?」

 あとはソフトの効果を雄弁に語り、タイミングをみて1本100万円というソフトの価格を提示すればいい。社会人数年目で、貯金もそれほどない被害者には手がでない金額だが、アポインターはすかさず、「アタシもお金なかったから月々払いだよ。月2万5千円くらいかな」と不安を和らげる。さらに、「無駄に使ってた食費減らしたから別にしんどくはないよ。自分への先行投資みたいなものだね!」とたたみかける。

 いよいよ迎えるのが、売買契約の第3段階「サロンデモプッシュ&クロージング」。デート場所から、契約場所になっている大阪市内のビルの一室に移動すると、アポインターの「人生を変えてくれた人」が登場。ソフトのパンフレットを見せながら、「必ずもうかる」「商品数が限られている」とあおって、一気に契約に持ち込む。

 ■仕上げはクーリングオフ封じ

 契約が決まれば、商品購入代金を支払わせる第4段階の「キャッシング」。

 手持ちがない被害者は、審査が甘く、即金で借りられる消費者金融に連れて行った。

 「お金は私が(契約会社に)渡しとくね」。

 借りた現金はアポインターがその場で“没収”。このとき、「親に借金ばれたら面倒だよね~」と、後ろめたさを植え付け、周囲に相談しないよう仕向けることも忘れない。

 そして最後は契約解除が可能な「クーリングオフ期間」を乗り切るための対策、「アフター」で仕上げる。

 クーリングオフとは、契約書を受け取った日から一定期間(当該商法では8日間)は契約を無条件で解除できる制度。そこで片容疑者らは、「在庫がない」などといって、期間が過ぎるまで商品を発送しなかった。商品が届いた後にだまされたと気付いても、すでに“恋人”とは連絡がとれない。被害者は泣き寝入りせざるを得なかった。

 ■狙われた看護師

 独身、1人暮らし、有職者…。詐欺グループが目を付けたのは、消費者金融で金が借りやすく、親らに相談しにくい環境にある被害者だ。その中でも目立ったのが女性看護師だという。

 看護師の勤務形態は2交代制や3交代制。会社勤務のサラリーマンやOLとは違い、平日が休みのことが少なくない。捜査関係者は「1つでも多くの契約を取るために、平日の昼間でもデートできる職業を選んでいたのではないか」と推測する。実際、アポインターたちは看護師の集まるミクシィのコミュニティーに、積極的に「友達募集」と書き込み、交流を求めていた形跡があった。

 今回の事件に限らず、ネットでのコミュニケーションを悪用した悪徳商法の被害は、若者を中心に増加傾向にある。国民生活センターによると、ミクシィなどのSNSで勧誘され、投資ソフトなどの情報商材を買わされたという相談は平成21年度は346件だったが、24年度は36%増の472件に。9割は20代の若者だった。

 また、東京都が今年行った調査では、18~29歳の若者がデート商法などの悪徳商法被害にあったケースは全体の4%。勧誘された経験を持つ若者は38・3%に上っており、デート商法という古典的な手口もネットとの“合わせ技”で脈々と引き継がれている実態がうかがわれた。
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