老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

前科者 涌井 学 小学館文庫

2022-01-01 15:53:55 | 読む 聞く 見る
1761 隣に人がいるだけで 幸せ



殺人をした加害者も
殺された被害者も
同じ人間なんだ、と叫ぶ
保護司 阿川佳代

記憶に新しい
大阪ビル放火で25人が尊い命を失った
放火殺人した加害者は
同じ人間なんだ、と思うことは
どうしてもできない

人を殺める
許されるべき罪ではないが
様々な動機や予期せぬ運命に翻弄され
罪を犯してしまう

殺人を犯した工藤誠には
「迎えてくれる家」がなかった。
「悩みを打ち明ける相手もいなかった。悩みを打ち明ける相手もいなかった。
一人でずっと苦しみ続けてきた。耐えて、耐えて、ある日耐え切れなくなって、
その途端に犯罪者になった。」(148ページ)

刑期を終え社会に復帰しても
前科者は何処にも居場所がなく、生きづらい。
佳代は工藤誠に話しかける。

「人は、人といっしょにいないと生きられないからです。
人と人でつながるのが人間だからです。・・・人といる時だけ、
ああ、私は生きている。生きていいんだって思えたんです」(206ページ)

老人の世界においても同じことが言える。
子ども夫婦と同居されても
疎まれたり嫌がられている老人は
居場所がない。

他者(家族)の手を借りなければ生きていけなくなったとき
「自分がなぜ生きているのか悩み続け」(208ページ)
自分の生きる理由みつけられなくて」(208ページ)
生きることをあきらめてしまう。

最期のとき
隣に誰かいて 手を握ってくれるだけで
幸せな気持ちで逝くことができます
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