HAZAMAN'S WORLD WEBLOG

自分が描く絵のことや、日々の暮らしの中でふと気付いたことなど・・・・

今日は先輩の紹介です

2005年11月01日 | Weblog
まず最初に、いい加減な画像(傾いてます)でごめんなさい。
真四角のものを普通のカメラで撮るのは難しいです。なんせ、レンズの歪みがてきめん出てしまいますから。それで何とかきれいにと四苦八苦して、この有様です。

ところで、今回紹介する先輩というのは、先日結婚式がどうのこうのと書いた人とは別人です。ぼくが大学に入学した年の4回生で、未だに親しくしていただいている方です。

画像はその先輩の作品で、もう終わってしまったのですが、10月6日から30日まで、静岡県沼津市立庄司美術館(モンミュゼ)で開催された個展に出品されていた一枚です。

作家の名は嶋谷浩治さん。展覧会タイトルは「風景顔の旅」といいます。

学生の頃から、卒業してしばらくは抽象絵画を書いていた先輩です。それが最近のシリーズでは、とてもユーモラスなものたちが、画面でワイワイやっています。

確か学生のときに聞いた話ですが、画面に何か一つ形を描いたら、それが一人の人で、何かを話しているように思える。それが二つ形を描いたら、会話が始まって物語が生まれて来るんだ。そんな風に先輩は話していました。

そんな先輩は数年前から風景に拘りだし、最近のシリーズでも「もし風景に顔があったら、彼らはいったい何をを話すだろう」そんな思いで顔と風景が融合したような作品を描いていたようです。

考えてみたら、その発想というのはとてもファンタジー的なものではないか、そんな風に思うのです。それは単なる幼稚な空想という意味ではありません。
僕自身は、ファンタジーというものを、人間が自分とはいったい何者なのかということの根拠として持つ物語、神話のようなものになりうるのではないか、と思うのです。

先輩の仕事は、とても先輩らしい視点から、世界と自分のかかわりを丁寧に描いていったのではないか、そんな風に思うのです。
そして、さらにそんな風に思った理由は、画像にある(今年の新作だそうです)作品の説明でした。

「虎の体から言霊が生まれてそれを蛙が食べている。そうしたらまた虎がその蛙を食べるんだ。輪廻だよね。」

よくよく考えたら、あらゆる命あるものは、常に他の生命を食うことで生きていきます。そして生きてきたその生命も、またいつか他のものの生きる糧となっていく。先輩の話を聞いていて、ふとそんなことを思い出したのです。

ぼくたちの日常からは、そこまではっきりと、生命の激情的なやり取りの現場は見えてきません。けれど間違いなくそれは存在し、僕たちもその渦の中にいるわけです。

先輩の仕事は、先輩の穏やかさを反映しているのでしょう、とても穏やかに、またユーモラスにその姿を描いています。
なんせ虎はちっとも怖くないし、蛙だって思わずぷっと笑ってしまうような可笑しさをたたえています。言霊だって、そうと言われなければ、虎から生まれたおたまじゃくし(?)に見えてしまいます。それにまた笑いを誘うのが、虎の足元に踏みつけられながら、にょろっと出ている赤いミミズです。

そのどれもが決して苦しんでもいなければ悲しんでもいない。喜びをもって今の自分の姿を肯定しているように思うのです。言ってみれば、根元まで刈り込まれた庭の芝生が、痛いだの辛いだのと文句も言わず、また翌日からぐんぐん成長する姿に似ていませんか。

この先輩の個展を見て、ぼくはとてもすがすがしい気持ちで、やっぱり自分もどしどし描かなければと奮い立ちながら、ずいぶんと元気になって沼津を後にできました。

よく絵には「ほらとっても上手でしょ」とか「ここの描き方なんて最高でしょ」なんて空気がぷんぷん臭ってくる物があるのですが、今回はそんな臭いのまったくない作品で、今後どうやってこの先輩の物語を共有することができるんだろうか、と真剣に考えたくなるものでした。
その共有の方法の一つとして、こうしてブログに書いてもいるわけですが。ゆっくり消化していきたい、そんな風に思います。

嶋谷浩治さんの作品は沼津市立庄司美術館のホームページで見ることができます。
http://www.linkclub.or.jp/~moumusee/

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