高校生の時、リスニングを練習するためにラジカセを部屋においていたのだが、時々、頭を掻いてフケを落としてお茶を飲みながらラジオを聞いていた。いつもNHKの第一と第二だけでは良くない気がしたので文化放送でやっていたラノベの朗読を聞こうと思ってダイアルを合わせたことがあったが、妨害電波が強くてほとんど聞こえなかった。東京都内にいたときも混じってきていたので相当強力な電波であったのだろうと思われる。
流れてくる音声がどうやらハングルのようなので、おそらくは周波数帯が近い韓国KBSの放送局なのだと思うが国際的な取り決めがあってコールサインも決めてあるはずなのに混信していたのはどうしてだろうと今になって思う。そのころ、姉からブラックワイドニュースという深夜番組を紹介されなぜか乱数放送にも興味を示していたので、ハングルの数字の読み上げを紙に書いて待っていたことがあったがついに聞こえてはこなかった。
しばらくの間、混信するような電波を流すのは北朝鮮ではないかと思っていたが、最近になってネット上のに韓国KBSの混信の話題が載っていたので考えを少し直した。
NHKラジオの第一と第二の間には関東圏ではピョンヤン放送があって、時々混信していた。かなり長い間、乱数放送という放送も行っていたのだが、いつの間にか「ピーガー」という信号に換わっていて、それは無線FAXの信号だと思われるのだが内容は明らかではない。乱数放送というのは数字をただ読み上げるだけの放送で、乱数表を持っていない人にはまったく無意味な放送である。銀行の認証にも用いられていて三菱東京UFJダイレクトのカード裏には乱数表が載っているが、それが私が一般生活で目にする唯一の乱数表である。この乱数放送というのは軍人やスパイなどの秘密通信に用いられることがある通信の一つで、一般公衆向け電波を用いているので誰に向けて放送されたかが部外者ではほとんどわからない。また、内部であっても、所属や個人によって異なった乱数表が配布されているので放送を聞いても決められた放送以外はわからない仕組みになっている。
この乱数放送の解読に用いられる乱数がサイコロを振って導き出された真の乱数であるかどうかが時折解読の鍵になっていて、一昔前のパチスロのように円周率や底のような無限に続く循環小数ではないことが証明された乱数としての性質を持つ小数の一部を切り出して疑似乱数として使用する場合が昔はかなり多く、恐らく計算機の能力から考えてみると最近まで短い桁でとどまっていたであろうと思われる。タイムをハッシュシードとして疑似乱数を生み出すようになったのは結構最近である。時間にしても30年分の1秒ごとの時間をシードにした128bitの疑似乱数というのは今では総当たりが可能な程度でしかないので、もしかしたら普通の共通鍵暗号もそれで作られた乱数を元に鍵にしたら危ないかもしれない。
乱数を用いて暗号化するストリーム暗号というのがあるがこれは共通鍵を用いて送り手と受け手で共通鍵からSHA-1のようなハッシュ関数でハッシュを作り出しそのハッシュで暗号文に対してXORで暗号化し、同じハッシュでXORして復号する。そして、以前使ったハッシュをまたハッシュ関数でハッシュ化していくという事を繰り返す方法である。携帯電話のGSM方式に使われている A5/1, A5/2 や、RC4がその方式を採用している。この方式は計算速度が速く、現代の共通鍵暗号といえばこのようなストリーム暗号とAESやDESのようなブロック暗号を殆どは示している。
そういった、現代的な暗号からすると乱数放送は相当な時代遅れになっていると思われるが、いまだに放送は行われているようである。理由は定かでないが実際に聞くことができるので多分使われているのだろうと思われる。
私にとって、乱数放送は円周率の下3桁以降を読み上げるよりもはるかに価値が少ない邪魔な放送であるわけだが、それを解読しようとする暗号マニアは後を絶たないらしく、録音されたCDも発売されている。聞きたい人は試しに聞いて、無意味さと無力感にを味わってみると良いかもしれない。