目覚めたら雨が降っていた。
布団の中でまどろみながら、聞くともなしに雨音に耳を傾ける。
優しい音だ。
この雨のおかげで庭に植えてあるゴテチャがひと回り大きく育っていく。
この雨のおかげで春が来る。
ひと雨ごとに温かさが増し、いつか、誰にも春が来る。
僕らはとことん淋しがり屋。
いつまでも、自分と同じ形の影を、ヒトに求め続けて彷徨い歩く。
求め続けたものを見つけたとしても、
自分と同じ形の影だけでは、満足できなくなるときが必ず来て
どうしようもなく一人勝手に傷つき、容赦なく相手を傷つける。
ひと雨ごとに温かさが増し、いつか、誰にも春が来る。
いつか、誰にも春が来るはずなのに
ひと恋しさは、心の中で冬を育てることもある。夜叉を育てることもある。
君知らで終りぬかかる悲しみもかかる涙もかかる寒さも 与謝野晶子