はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
パーキンソン病にはグルタチオン点滴を
癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

パンドラの箱

2013年05月17日 | 昔話
昔の手紙類を小さなボストンバッグにしまって保管していました。
中学2年生から30歳くらいまでの頃の物です。
開けたことは無かったのですが、最近、押し入れの大掃除の際に邪魔になるので整理する気になりました。

ポケベルも携帯も無かった時代ですので、文通は比較的ポピュラーな文化でした。
もらった手紙を、ざっと読み返してみましたが、そういうこともあったのかと驚くくらいで、特に感動はありませんでした。
ところが、感動は、手紙とともに保存されていた、私自身が書いた手紙の下書きにありました。

ガールフレンドに宛てた手紙の内容は、すぐにでも舌を噛んで死にたくなるような恥ずかしいものでした。
必死に文学性を持たせようとあがきまくった文章は、”陳腐”の二文字で片付けられるレベルでした。

ただ、面白かったのは高校の同級生であった楢原元庸と宮崎信夫への手紙です。
それぞれと、数年間に渡り、数十通の手紙をやりとりしています。
これらの手紙は、まじめに、そして真剣に全力で書いていました。
印象としては、”完全に時間を止めている。”ということでしょうか。
立ち止まって、文学、孤独、恋愛論、詩、花鳥風月、JAZZ、煙草、酒などについて徹底的な分析を加え、自分の考え方を表明しています。
殆どは無駄かもしれませんが、それでも、すざましいエネルギーが費やされています。

振り返って、最近では時間を止めることなど全くありません。
AならばB、CならばDという風に自分の思考回路が固定されているからです。
時間は毎日、淀むこともなく流れ続け、一年があっという間に過ぎていきます。
そして、様々などうしようも無い問題に出会った時は、斜に構えて皮肉を述べることでやり過ごします。

ところで、残された下書きには次のような文章がしたためられていました。作者不詳の一文です。

”考え深い者はニヒリストまでは、皆、辿り着く。しかし、そこを越えるのは難しい。信じがたい程難しい。”

まるで数十年後の自分を予見したような文章です。(続く)