最後の授業(11)
LA DERNIÈRE CLASSE
Récit d'un petit alsacien
——————————— 【11】—————————————
Pendant que je m'étonnais de*¹ tout cela, M. Hamel était
monté*² dans sa chaire*³, et de la même voix douce et grave
dont il m'avait reçu, il nous dit;
« Mes enfants, c'est la dernière fois que je vous fais la
classe. » L'ordre*⁴ est venu de Berlin*⁵ de*⁶ ne plus enseigner
que l'allemand dans les écoles de l'Alsace et de la
Lorraine ...»
——————————— (訳)—————————————
こうしたことを不思議に思っている間に、アメル先生は教壇に上って
いました.そしてさっき私を迎えた同じ優しい威厳のある声で、私た
ちに言いました;
「諸君、きょうこれが私がする最後の授業になります.ベルリンか
ら命令が来まして、アルザスとロレーヌの学校では、もはやドイツ語
しか教えてはいけないことになったのです...」
——————————— 《語句》—————————————
*1) m'étonnais de ~:(半過去1単) <s'étonner de ~ ~に驚く、不思議に思う.
s'étonner de ~:(事の異常など)に驚く、~を不思議がる
surprendre:不意に驚かされるような場合に用いる.
*2) était monté:(大過去)<monter (上る);過去の2つの動作の関係を、
「大過去」と「過去」を使って示しています.「私が不思議に思ってい
る(過去)」間に、気がついてみると「すでに先生が教壇に上っていた
(大過去)」
pendant que 以外にも、quand, loraque, après que などを使った場合に
も大過去が用いられたりします.
*3) chaire:(f) 教壇、講壇、教説壇
*4) ordre:(m) 命令、[l'ordre de + 不定詞 ~するようにとの命令]
Je lui ai donné l'ordre de partir immédiatement.
私は彼(女)にすぐに出かけるよう命じた.
J'ai l'ordre de rester ici. /
私はここにとどまるよう命じられている.
*5) Berlin: [発音:ベルラン] ドイツの首都、当時総統官邸があった場所.
*6) de:先行するordre に続く不定詞の導入辞、 est venu de Berlin に遮られ
分かりにくいが、l'ordre de ne plus enseigner que l'allemand. (もうドイ
ツ語しか教えてはいけないという命令)
分かりやすい語順にすると
L'ordre de ne plus enseigner que l'allemand est venu de Berlin
ですが、頭でっかちなので、先に「来た」と言ってから
命令の内容を伝えています.基本的に大事な要件は、印象
を残すため、なるべく文の終わりにもっていきます.
ここでは「ベルリンから来た」という情報は重要ではなく
「ドイツ語しか教えてはいけない」という情報が重要なので
うしろ回しにされています.後置文とか転位文とか、外置文
とか呼ばれ方は様々です.不定詞句だけではなく、本来主語側
につくべき前置詞句がしばしば定動詞を通り越して文末に来る
ことがあります.この日記では外置構文(extra position)とよび
ましょう.