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HARIKYU'S CAMERA CLUB 「BLOG 」

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柳沢きみお「グッドガール」・「妻をめとらば」

2011年04月03日 | 柳沢きみお作品

<pink>柳沢きみお「グッドガール」・「妻をめとらば」</pink>

 柳沢きみお作品紹介の3回目、前回は成人系の「不倫モノ」を紹介しましたが、今回はオーソドックスな「恋愛モノ」から2作ご紹介しましょう。


 

① 「グッドガール」 (★★★☆☆)

 高校2年生の主人公「寺山修」くんの、「恋人探し」をモチーフにした、ほのぼの青春グラフティ。
一部シリアスな部分はあるものの、「翔んだカップル」のようなドロドロとした恋愛展開はありません。
脇役の「正助」、「賀毛」、「佐山」達も実にいい味を出しています。
過ぎ去りし高校時代の、「女の子への憧れ」といったものを、ちょっとホロ苦く思い出させてくれる良い作品だと思います。

 本作は柳沢氏の出身地である新潟県の「五泉市」や「村松町」あたりを舞台に描かれているので、今は無き「蒲原鉄道」なども登場します。
ちなみに私は「五泉市」の自動車学校で免許を取るために一ヶ月ほど「合宿」したので、ここは実になじみ深い土地。
ただ、どういうわけか五泉市では柳沢きみおの知名度はほとんどありませんでした。



 

② 「妻をめとらば」 (★★★★☆)

 主人公「八一」の足かけ10年に及ぶ結婚相手を求めての奮戦記ですが、なかなか考えさせられるセリフや展開も多く、柳沢氏全盛期の傑作でしょう。
「村雨」や「青山」たち「脇男」も、実に味のある良い仕事をしています。
今は亡き「古尾谷雅人」の主演でテレビドラマ化されたこともありました。

 「八一」の前を実に多くの女性が通り過ぎて行きますが誰一人として結ばれることなく、最後は・・・・・心臓麻痺??
個人的には「めぐみ」の登場から「広美」との再会、そしてその後の顛末あたりが本作最大のクライマックスだと思っています。

 閑話休題・・・・・
氏の作品の重要ファクターのひとつに、一人暮らしの男のもとへ突然「家出娘」が転がり込んでくるという設定があります。
彼女等は、時に1エピソードとして展開に花を添え、時にストーリー全体に絡んでくる重要キャラクターとしての役割を果たしています。
家出娘を囲うなどという、実際の生活では天文学数値的にあり得ない、ある種の男のロマンをここでは見事に疑似体験化させていて、もし「こんなことがあったら・・・・・。」という願望をチクチクくすぐってくる氏ならではの名プロットです。
何人かその「家出娘」をご紹介しましょう。


   

「瑠璃色ゼネレーション」の脇役で、目下離婚争議中の「井原」と夜の街で知り合った、中3生の少女売春娘「春江」。
「井原」の性格が気に入り、しばらく居候することに。
現代娘らしく、去り際も実にあっさりしていました。


  

「妻をめとらば」の主人公「八一」のもとに転がり込んできた、中3生の家出娘「広美」は、実は良家のお嬢さん。
両親の不仲に嫌気がさして、深夜家を飛び出していたところに「八一」が通りがかり・・・・・。

この6年後、「めぐみ」と婚約の決まった「八一」は渋谷の街中で大学3年となった「広美」とばったり再会します。
「めぐみ」との婚約問題と「広美」の愛との狭間に苦しむ「八一」と、その後の顛末は本作最大のクライマックスでしょう。
ネタバレになるといけないので、ここは是非コミックを読んで下さい。


  

 「俺にはオレの唄がある」の主人公、「瀬上」の財布を抜き取ろうとした少女「初美」。
身体を迫ってくる義父より逃れての家出だった。
柳沢氏の家出娘の中ではかなり暗い影を落としている娘だが、これで中学2年生というからかなり成熟している。
やがて「瀬上」と「初美」は♂♀するが、その後どうなったかは話が未完のままなので不明。


 

 「寝物語」の「吉村」が一時世話をすることになった名前不詳の17才の家出娘。
かなりノー天気で陽気な性格で肉体もオープン。
「吉村」の生活をさんざん掻き乱して疾風の如く去っていきますが、彼女の去った後、「吉村」には一抹の寂しさが・・・・・。


 次回は「俺にはオレの唄がある」、「青き炎」、「短編集」あたりをご紹介しようかと思っています。

柳沢きみお「瑠璃色ゼネレーション」・「愛人」・「寝物語」

2011年04月03日 | 柳沢きみお作品

<pink>柳沢きみお「瑠璃色ゼネレーション」・「愛人」・「寝物語」</pink>


前回に引き続き、柳沢きみお氏の作品、今回は成年向け作品より3作ほど紹介してみようかと思います。
柳沢氏の「中年男性」の悲哀や不倫、生き様といったものをを描いた作品には傑作が多く、特にこの80年代に描かれた3作はその代表作といって良いでしょう。
3作とも「大人のドラマ」を見事に描ききっています。


 

① 「瑠璃色ゼネレーション」 (★★★★☆)

 30代の倦怠期夫婦、「深町 良」と「さえこ」、それぞれの「不倫」を描いたストーリーで、特に「良」と「横田」とのメインストーリー以外に、脇役である「井原」と数々の女性が織りなすサイドストーリーにも味があります。
結果的に「良」は、本編終了後の単行本書き下ろし部分で「子はかすがい」ということになって元の鞘に収まりますが、ラスト部分の「この頃よく横田を想い出す。もう一人の俺が現れることを恐れながらもどこかで待っている・・・・・。」というくだりは凄く説得力がありました。




   

 この頃の氏のタッチは少年漫画から成年漫画への過渡期で、ギャグ漫画時代の稚拙さがやや残ってはいますが、後の完成期のタッチより私は好きですね。
特に女性キャラには稚拙さの中に不思議な魅力を感じます。
主人公の不倫相手の「横田」は、どことなく「翔んだカップル」の「絵里」と似たイメージがありまして、何となくメーテル似の「杉村」、そして「絵里」、と並んで、私のお気に入りキャラクターの一人です。
共通点は3人とも「直情的」で理性にとらわれない行動をするということでしょうか。
どうしても理屈や理性に縛られてしまう自分にとっては、この3人は憧れの女性なのです。


 

② 「愛人」 (★★★★☆)

 本作はそれぞれに妻子ある中年男性の「不倫」を描く3部構成になっており、1部では「木村」が愛人バンクの女子大生「真理」と既婚の後輩社員である「友子」、2部では「久保」が部下の妻である「今日子」と、、3部では「本城」がテレクラで知り合った女子高生「果歩」とそれぞれよこしまな愛に溺れ墜ちていく顛末を描いたストーリーで、結果的には「木村」は元の鞘に戻り、「久保」は墜ちるところまで墜ち、「本城」は新しい生活を見つけていくといった結末になっています。


 漫画という仮想非現実空間ですが、「瑠璃色ゼネレーション」にしても、「愛人」にしても、「浮気」や「不倫」といった現実の暮らしの中では容易には起こり難いファクターをスリリングに疑似体験でき、また人の生き様というものを考えさせてくれる傑作だと思います。  


 

③ 「寝物語」 (★★★★☆)

 男の幸福とは何か、ということを一般会社員の「広枝」、銀行マンである「深沢」、フリー作家の「吉村」といった3人の中年男が探し求めるストーリーで、展開を時にシリアス、時にコミカルに描いたバランスの良い作品で、完成度が高い傑作です。
常に暗い影を落として作品を終わる氏の作品にしては珍しく、「広枝」と「深沢」はハッピーエンド、「吉村」はコミカルな中の現状変わらず、といった何とはない明るさの中に終わっています。
また、第6巻の中盤以降はこの3人以外の人物のサイドラブエピソードになっていて、これまた楽しい展開です。


 

 次回は「グッドガール」、「妻をめとらば」、「俺には俺の歌がある」あたりをご紹介してみようかと思っています。

柳沢きみお「翔んだカップル」

2011年04月03日 | 柳沢きみお作品

柳沢きみお「翔んだカップル」


首都圏の輪番停電の日、特に夜間停電の際には何もできず・・・・・、ということで、20年も前に読みまくった「柳沢きみお」の作品をローソクの灯の下、再び引っぱり出して読んでみましたが、懐かしさも手伝ってつい夢中になってしまいました。
そこで、氏の作品を2~3回に分けて、いくつかご紹介してみましょう。


 

① 「翔んだカップル」 (★★★★☆)

 昭和53年から「週間少年マガジン」に連載されていた氏の代表作で、「翔んだ・・・・・」というのは当時の流行語にもなった。
私が大学生の頃にヒットした作品だが、当時の学生の愛読書はというと「プレイボーイ」に「平凡パンチ」、それに「POPEYE」、「東スメvだったから、リアルタイムの連載時は、その絵の稚拙さと同時に、「今さら高校生のラブコメなんて読めるか!!」というスタンスから全然見向きもしなかった作品である。
それが30才を過ぎてからひょんな事で読み出し、意図に反して夢中になってしまった作品でもある。


    

 本作は少年誌にドロドロとした「恋愛」を持ち込んだ初めての作品で、序盤の頃の「勇介」と「圭」の奇妙な同居生活に「緒田キャプテン」が押しかけてくるあたりは完全なコメディだが、「杉村秋美」がストレートに勇介に接近してくるあたりからは俄然面白くなり、スケ番「絵里」との同居や「中山」の自殺、「杉村」との肉体関係、陸上部の「島田キャプテン」の自殺あたりの息を呑む展開は最高!といって良い。

 上の画像の左端のページ、「杉村」の「今夜はとまっていって。・・・・・そして私をだいて。」などというセリフは当時の少年誌の読者にとっては(当時の少年誌の読者は中・高生が中心である。)まったくセンセーショナルなものだったろう。
全体を通じて、この付近のストーリーが「翔んだカップル」全編のクライマックスでもある。
絵の稚拙さはともかく、ストーリー漫画家「柳沢きみお」として面目躍如の作品だと思う。

 反面、「勇介」と「圭」の関係は終始はっきりしないまま、最終回でもウヤムヤに終わってしまった。
「尻切れトンボ」が氏の作品の最大の欠点なのだが、この作品でも例に漏れていないのが残念だ。


 

 こちらは新装丁本のコミックス。
「続・翔んだカップル」の書き下ろし刊行と同時に発刊されたもので、旧講談社コミックスの方は全15巻だが、こちらでは13巻にまとまっている。


② 「新・翔んだカップル」 (★★★☆☆)

 大学生になった「勇介」と「圭」を描いたストーリーで、ついに「勇介」と「圭」が結ばれる場面もある。
その後、「勇介」に片思いしてしまう女子高生ができたり、「圭」と上級生の「藤木」がデキそうになってしまったりと、多少のドラマ性は持たせているが、それほどパッとする展開ではない。
ボクシングに反対する「圭」に対し、ラストでは「勇介」が青年海外協力隊に出向く決心をした、というところで、これまた「勇介」と「圭」の関係は曖昧なままに終わっている。


 

③ 「続・翔んだカップル」 (★★☆☆☆)

 プロボクサーになった「勇介」と令嬢「寺島瞳」との生活を中心に描いているが、あまりボクシングは好きではないのでストーリーにものめりこめなかった。
本編中で「勇介」と「圭」は一度離別、30才目前の「勇介」と「圭」が町中で再会したところで終わっている。

 近年、50代になった「勇介」と「圭」、「杉村」を描いた「翔んだカップル21」 という作品が発表されているようだが、私はまだ読んだことはない。
ここでは「勇介」と「杉村」が再婚しているらしいが、機会があれば読んでみたいものだ。


 

 次回は氏の青年向け作品、「瑠璃色ゼネレーション」、「愛人」、「寝物語」をご紹介しようかと思っています。