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『さよならを教えて』 感想

2008-12-31 18:09:13 | エロゲ感想@えむあい
『さよならを教えて』 (CRAFT WORK)
2001年に発売された伝説のレアソフト。値はamazonだと現在こんな感じ
私はジャンク品(箱ボロボロ、説明書なし)を買ったので15000円でした。
謳い文句は「恋愛ADV」でなく「ファナティックアドベンチャーノベル」。
この時点でよぎった不穏な予感を遥かに超えるアレっぷりが最高。


・シナリオ 85~95点
主人公はある女子高の教育実習生。…という前振りから始まるわけです、が…。
出会う女生徒は5人、これが攻略対象。そしてその他にこの学校の女教師が2人。
この狭い世界を彷徨う主人公、彼視点の描写があまりにも神経質で偏っており、
ユーザーは少しずつ「何かおかしいぞ」と懐疑心を抱かざるを得なくなっていきます。
更に日数を重ねるにつれ、主人公の心情どころか展開そのものが破綻し始める…。

根暗男性の多くが持っている「過剰な自意識」「女性不信」「対人恐怖」が
極度に表現されたテキスト、謎めいた台詞ばかり口にするヒロイン達、
そしていつまで経っても上がらない「夕暮れ」の緞帳。
文章がエロゲとは思えないほど巧みであり、隠喩も符号も完璧です。
いい悪い・好き嫌いを抜きにして、読み物としての出来が素晴らしいことは認めざるを得ません。

しかし、しかしとにかく主人公が本当に本物過ぎてついていけない。
全編シリアスなのに、奴の行動があまりにイカレポンチで笑うしかなくなってくる。
  
  全裸のまま教室を出たが、すぐに思い直して、睦月の席まで戻った。
  (中略)僕は肉茎にまとわりついた粘液を睦月の机に擦り付けてから、服を着て、教室を出た。

  (飼い猫が死んでしまった時の回想シーンより)
  凝視する僕の目の前で、小さな生命の炎が徐々に弱まっていく。
  猫が『死』に近づくにつれ、少しずつ痙攣が収まる。
  だが・・・反対に僕の気分は高揚していった。
  体験したことのない感覚・・・その時・・・僕の股間は、間違いなく勃起していた。

  (真実を指摘されて精神がいつも以上に乱れているシーン)
  僕は真っ白い廊下を走りながら用を足している。
  さて。便所だ便所に行こう。便所便所。
  順番だ。守るべき順序だ。順序が大切。
  (中略)出すものはすべて出してしまったので、便所ですることはなかった。
  けれど僕はいつもの個室に入り、いつものようにパンツを脱いで座った。
  僕は真っ白い便器を見つめている。
  僕は真っ白い便器を見つめている。
  僕は真っ白い便器を見つめている。
  僕は真っ白い便器を十分に見つめたので、便所を出ることにした。

お前…もう…頼むから……

ラストもあれはあれでいいと思います。
でも、睦月ルートではもう少し救いがあっても良かったのでは…
いや、でもこの方が「らしい」かな…


・グラフィック 40~50点
なかなか評価が難しいところ。
この作品ならこの画風しかあり得ないだろうな、と。
単なる美少女絵師にはこの雰囲気は出せないでしょう。

ただやはり枚数が足りない。特に立ち絵に変化がないのが不満です。
「効果的であるか否か」で見れば最高レベルですね。エロもグロも非常に巧い。
後半、脈絡も意味もなくヒロインが全裸で現れる演出も異常すぎてよかったですね。
関係ないけど…睦月、シスプリの可憐に見える…。


・システム 20~30点
主人公の怨念を感じるほどプレイしづらいです。
人見てんてーが「俺の心を覗くなあああ!!!」って邪魔してるようにすら思えてきます。
2001年の、それもやや傷有の中古品をプレイしてる私がいけないんですが、
それでもこれはなあ…。
とにかくまー止まる止まる。音声もよく飛びます。CG少ないのに重いしね。

プロローグを観終わるまでフルウィンドウを強制されるのも困ります。
あのグロOPを全画面で見せ付けられるってどうよ。それともこれ、試されてるのか。
ただし、演出が地味に素晴らしいので少し加点。
主人公が聞きたくないことを話し出すとCVがブレ出すとか、
チャイム音にどんどん罅が入り出すとか。
スタッフ全員で一生懸命に主人公のマジキチぶりを演出しようという気概を感じました。


・音声 75~85点
CVは文句なし、最高レベルでした。みんな巧いな、しかし…。特にとなえさんが最高。
萌えを意識していない分、演技力の確かさを感じられるキャスティングでした。

サントラがほしくなるほどBGMも良かった。あんまり演出には関わってこないのが残念ですが、
まあこれ感動物じゃないし、他に減点対象になるところがありません。

OP&EDの『さよならを教えて』も神曲だと思います。歌詞がよく出来てます。
「昼と夜の間で時間(とき)が止まる 終わりのない永遠の夕暮れ時」
全くその通りの作品だ…。誰もが知ってるでしょうが、夕暮れってのは逢魔が時、
境目、「狂気」を表す隠語なんですね。


総評
人様にお奨めできない神ゲー。
よく「○ateは文学」とか聞きますが、もしエロゲを文学作品だと喩えることが許されるならば、
この『さよならを教えて』がそれだ、と私は答えます。
明らかに美少女オタを「お前らはいつもこんな妄想してるんだろ」と
揶揄するようなエロシーンがあったり
実際は妄想なわけですからね。それがわかるとものすごくイタい)
と、ただただユーザーに快楽を提供しようとする姿勢は微塵も感じられないのがこの作品。

主人公のキャラクターそのものが、純文学の「コンプレックスを抱える主人公」に酷似しています。
なおかつ、ここまでの内容はエロゲでなければ許されない。
(というかもうエロゲでも許されない)
値段も含め、一人でプレイするのをお奨めするにはあんまりにも敷居が高すぎますね。
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