母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

さくら月

2022年04月02日 | 花(春)
はる祭りの夜陣痛に耐え
五番目の子供を産んだ母
昼からのどかに神楽が聞こえ
辺りの桜は満開に
遅い高原の春の夜
産婆は五番目には油断して
祝いの部屋で酒と馳走に囲まれ
はや中年の産婦を忘れ
酒と祭りに酔うありさま
これも桜の魔力なのか
辛かったお産の思い出を
桜見ながら話した母は
それでもあなたは可愛かった
と何度も言うのでした

一斉に春の花の咲く明るい卯月
みんなが憂さを忘れてさくらに酔う世界に何でかぴょんと
飛び出した日のことなど思い浮かべ
エンドウ豆の花と菜の花と
御神楽の単調な音色と亡き母の
ふっくら手の甲を思い浮かべる
さくら月
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1 コメント

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さくら月 (窪庭忠雄)
2022-04-12 01:59:38
心に残る詩ですね。
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